20 親方の成果
中間テストが終わった日───
「うわぁー、ムズすぎー」
机に突っ伏して言うのは蓮である。
「でも、教えてもらったところは全部出てたよね?」
そう言って、蓮の前の席に座ったのは冴である。
「いやぁ、そうなんだけど、どっちかと言うと、料理とお菓子と星羅や唯の格好ばっかり頭に残っててー」
「全くアンタは……。でも、分かるわ。確かにあれは美味しかったわ」
「でしょう?」
頭を上げて、仲間を得たとばかりに笑顔になる蓮。
「でも、それとこれは別よ」
すげなく告げる冴。
そこに、静が通り過ぎようとしたので、蓮が腕を取って引き留めた。
「どうかしましたか?」
「あ、いや、お礼を言っておこうって思って」
「そうね。実際、わたしは全部の教科でいい点取れたと思うし」
「うちも英語以外はいつも以上だよ。だから、ありがとね」
「ふっ。どういたしまして」
「それにしても、静はああいう格好しないと思ってたよ」
「わたしも」
蓮と冴が意外とばかりに言うが、返ってきた言葉は予想外だった。
「寧ろ、率先して着てますがね」
「えっ!」「ええっ!」
「では、わたくしは用事がありますので、失礼しますね」
そう言って、軽く頭を下げて去っていく静。
「冗談じゃなさそうね。意外だわ……」
「だね。ねぇ、次もあるかな?」
「どうかしらね?」
「いい成績が取れたらあるんじゃない?」
声のする方を向くと、静と仲のいい愛花がいた。
今日も頭に二箇所ツノを作り、カラフルなピンで止めまくっていた。
アンダーリムメガネがキランと光った。
「マジで?」
「だって、かなり大規模なことになってたでしょ? 結果が出なかったら多分次回は教室ね」
「うぇー、それは困るー」
「まあ、明後日の結果発表次第ね」
「そうだねー」
そう言いながらも、頭の中にはあの時食べたお菓子や料理でいっぱいの三人だった。
そんなことを、クラスのあちこちで話し合っていた。
「麗華はどうだった?」
似たような見た目から親近感を抱いていたエレナが話しかけた。
「ふふ。あの勉強会のお陰ですわ。わたくし、トップ10入りは確実かと思われますわぁ」
ファサッと髪の毛をかき上げる麗華。
それを見て真似をするエレナ。
「いいなー」
「そういう、エレナさんはどうなんです?」
「わたしに聞く?」
「聞いてきたのは貴女ではありませんか」
「エレナはね、お菓子ばっかり食べてたから多分ダメね」
そう言って、エレナの肩に手を置き、会話に混ざったのは、クラスでもツッコミ担当の優華だった。
「そ、そんなことないわよ。ただ、赤点は余裕で回避出来たし」
「折角唯様が教えてくれたのに、そんな意識低いんですの?」
麗華が信じられないといった顔をした。
「だってだって美味しかったんだもん!」
「それは分かりますが……」
「でも、赤点取ったらエレナは確実にお呼ばれされないわね」
「というか、そんな成績でよく英愛に入れましたわね」
麗華と優華が不思議そうな顔でエレナを見ていた。
エレナはなぜかドヤ顔をして返したのだった。
窓際では、サッシの部分に体重を預けた愛と燈が。その横の席に座る操と美羽の四人が話し合っていた。
「どうだった?」
そう最初に切り出したのは操だ。
「多分、大丈夫」
「あーしもなんとか」
愛と燈は苦笑いしながら答えた。
「国語の最後以外は出来たよね?」
美羽がそう言うと、三人がコクコクと頷いた。
「でも、英語はダメかも。八割くらい?」
操が首を傾げながら問う。
「最後の長文多すぎよね」
「あれ、読んでて時間無くなったし」
「でも、それくらいよね」
「うん。勉強会でやった内容は全部出たしね」
このグループではそれなりに出来たと結論づけていた。
もっとも、楽観視し過ぎてはいるのだが。
廊下側の席では、美琴と陽菜と柚とティナの四人が、一つの席に椅子を置いて答え合わせしていた。
「どうだった?」
まず、美琴がテストの出来を聞いた。
「英語と国語の最後以外は大丈夫」
柚が自信満々に答える。
「陽菜は?」
「同じく。美琴は?」
「英語のラスト以外は多分大丈夫」
「ティナは?」
「理科は任せなさい」
「他はどうなのよ」
美琴が胡乱げな目でティナを見ると、ティナは窓の外の方に視線を向けてしまった。
「おい!」
「でも。今思うと自信ないとこ多いよねー」
陽菜が机に突っ伏して諦めたような声を出した。
「分かる。理科の三問目のあれなんだっけ」
「あ、それはねー」
理科だけは自信満々のティナが胸に手を当てて答えを言った。
そんな感じで自信のないところを言い合い、答え合わせをして一喜一憂していた。
そんな様子を後ろの黒板の前で、唯、寧々、星羅が、教室内を見回しながら話していた。
「いやぁ、みんな死屍累々だねー」
「あんなに勉強会したんですけどねー」
「いや、実際難易度高かったんじゃない? 最初であれはイジワルよ」
「確かに」
唯が、苦笑いしながら頷いた。
「応用問題が多かった印象ですね」
「そこもフォローしたんだけどなぁ……」
寧々が思い出しながら言うと、唯が脱力しながら返した。
「光司と寧々の料理が美味しすぎたのが良くなかったのね」
「あれで、覚えたこと忘れるなんて、そんな……ありえますね」
星羅が両腰に手を当てて言うと、寧々は顎に手をやり、真面目に考察し始めた。
実際に、何人かは雷に撃たれたかのような衝撃を受けていた。それで、覚えたことを忘れた可能性もある。
更に言えば、1組の男子は翌日曜日に、料理を教わりに来たくらいだ。
光司と寧々が嬉しそうにしていたのも相まって、かなりの料理を作っていた。
「まぁ、多分大丈夫っしょ」
「そうね。ところで、静はどこ行ったのかしら」
「たまーに消えるときあるのよね」
三人は覚えていない。理事の仕事を任せっぱなしにしていることに。
そして残る男子グループは、テストの結果よりも料理の向上の方に興味があるようだった。
翌々日、午後───
廊下に試験の結果が張り出された。
そこには、衝撃の結果が載っていた。




