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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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18 有罪


 そして、唐突に始まった裁判。

 「被告人須永光司前へ」

 お誕生席で静がスクランブルエッグを食べながら言う。

 多分、裁判官の役なんだろう。

 というか、朝ごはん食べながら裁判をするのはどうなんだろうか?

 前へも何も、横に座らされてるんだが?


 「じゃあ、わたし検事やるわ」

 「では、あたしは弁護士やりますね」

 なんで寧々が弁護士をやるんだ? 原告じゃないのか?

 「じゃああーしは書記官やるね」

 後ろにホワイトボードを持ってきたユイ。

 ロールパンを頬張りながらマジックを持った。


 「では、弁護人、何かありますか?」

 「ありません」

 いきなり弁護を放棄しないでほしい。


 「では検察側はいかがでしょか?」

 「これはもう揺るぎないくらい有罪ね」

 「「「「異議なし」」」」

 日本の司法制度じゃないんだぞ?


 「では、続けて被告への罰を言い渡します」

 ケチャップついたままだぞ?

 「主文、本日作るお菓子の量を二倍にします」

 「ええ……」

 「「「異議なし」」」

 今日どれくらい作るか知ってるのか?


 「待て、それは多くないか?」

 「いえ、寧ろ少ないくらいです」

 ま、まぁ、このくらいの罰ならいいか。

 

 後ろを振り返ると、ホワイトボードにびっしりと料理とお菓子のメニューが書いてあった。

 「……これを全部?」

 「あたしも一緒にやるから安心してください」

 「あっはい」

 寧々の気迫に押されて、俺は何にも言えなくなった。


 ユイ達のクラスメイトたちが来るまでそんなに時間はない。

 昨晩下拵えしていて良かった。

 急ピッチでやっていく。

 これテレビの料理ショー並みの速度なんだが……。


 クッキーを焼き、ラングドシャを焼き、マドレーヌを焼き、フィナンシェを焼き、マフィンを焼き、カヌレを焼き、マカロンを焼き……。

 もうオートメーション化された機械のごとく次々と作っていく。


 冷蔵庫の中を確認する。上から四段目まで全部カップデザートが入っている。

 ちなみに一番下の五段目には台湾カステラが四つ鎮座していた。

 『ピロッピロッピロッ……ピロッピロッピロッ……ピロッ! ピロピー!』

 『ピーローピーローピーローピー……ピーローピーローピロピロピー……』

 『ピンポーン』

 オーブンで焼いていた最後のお菓子が出来た。そして炊飯器と同時にチャイムが鳴った。

 やりきったぞ俺。

 プシュッとビールを開けたい気持ちをなんとか堪え、炭酸水で我慢する。

 

 ユイがあの格好のまま玄関へ向かった。

 「うわっ、マジ先生じゃん」「唯似合ってるね」「てか、なんで先生の格好?」「本格的だね……」

 「えへへー。やっぱり格好から入るのは基本っしょ」

 基本とは?

 同じことを考えていたようで、何人かが「基本とは?」と返していた。

 ユイはそれには答えず、「ほら、入って入ってー」と言いながら先頭で戻ってきた。

 そして、続くクラスメイト達が、「こんにちはー」「お邪魔します」「お世話になります」など挨拶があった。


 俺もただ突っ立ってるわけにもいかないので、営業スマイルで「いらっしゃい」と言ったのだが……。


 「「「「「「「「「「普通……」」」」」」」」」」


 という、なんとも言えない評価をされてしまった。


 「え、おかーさんが言うから、もっとかっこいいと思ってた」「なんか地味」「うん。普通だよね」「いやでも中の上じゃない?」「わたくしは、まぁまぁだと思います」「うちが期待してたのと違ったんだけど」「ね、あんなに言うから期待値爆上げだったのに」「え、普通にカッコイイと思うけど……」「あたしもアリよりのアリだと思う」「そう? あたしはもっと王子様みたいの想像してた」「おかーさんが結構盛ってたんだと思う」「わたしは普通にイケメンだと思うけどなぁ……」


 なんというか散々な評価だ。俺泣いてもいいかな?

 だが、男性陣は違ったようだ。


 「何言ってんだよ。普通にカッコイイじゃん」「こんなにお菓子作れるなんてスゲー」「料理もできるんでしょ? マジヤベエって」「俺、普通に教わりたいもん」「男が惚れるタイプの顔してるよな」「な。化粧したらイケるって」


 何人かヤバイ奴もいるが、概ね評価が高くて良かったよ。うん…………。


 しかし、多いな。何人いるんだ?

 うちのリビングってかなり広かったけど、こんなギュウギュウになるくらい集まるなんて前代未聞だよ。


 俺と寧々で作ったお菓子を並べていく。

 飲み物は申し訳ない。ペットボトルのお茶やジュースを置いていく。

 流石に人数分のグラスは無いので紙コップだが。

 「これ、おかーさんが作ったの?」

 「あたしと光司さんで作りました」

 寧々が照れながら言う。

 そして、一口食べると、みんな目を見開いた。


 「うまっ!」「おいしっ!」「何これ! やばぁ!」「うまうま」「止まらないっ!」「止まらないよぉ」「これを食べる為に来た?」「お持ち帰りは? お持ち帰りはあるの?」


 絶賛してくれて良かったよ。これで口に合わなかったらどうしようと思ったよ。

 しかし、気になる言葉がある。


 「おかーさんのおかーさん、料理めっちゃ上手だね」

 寧々がおかーさんなのも気になるが、俺がおかーさん呼びなのは一体何故なんだろうか。


 「はいはーい。みんな、勉強しに来たんでしょ?」

 ユイが先生みたいなことを言いながらホワイトボードを叩いていた。


 「唯もまじオカンだよね」

 「そうなると、この家にオカンが三人いることになるのか……」

 「そう考えるとなんかすごいね」

 話がどんどん飛躍していく。どうしてそういう結論になるんだろうな……。

 いったい四人は学園で何をしているんだ?

 

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