17 琴線
「おい、その格好はなんだ?」
朝、朝食の準備をしていたら、ユイが女教師の格好をしていた。
ボウタイリボンブラウスにタイトスカートに黒ストッキング。
そして、一番意味不明なのがフォックス型のメガネだ。なぜ、それを選んだ。
しかもきっちりと低めの位置にお団子ヘアだ。
というか、その指し棒は要らないだろう?
「にっしっし。コージこういうの好きでしょ?」
「好き」
「ちょ! そんな速攻で好きだなんて……」
何を照れる必要がある。それに聞いてきたのはユイだろう?
「だって好きなんだからいいだろう?」
「も、もう……コージったらぁ……」
すまんな。癖が出てしまった。
隠しているつもりも無かったんだが、ちょっと琴線に触れまくってな。寧ろ千切れそうなくらい。
そして、静と星羅がそれを見て、ドタバタと走りながら二階の自分の部屋へ戻っていった。
そして、ドタドタと階段を駆け下りてきた二人。
朝から元気だなぁ。
「はぁはぁ……。んっぐ……、もうそういうのは早くいいなさいよね」
どんだけ急いでたんだ。机に手を置いて息を整えている。
「はぁ〜〜〜」
そして深呼吸すると、ドヤ顔を見せた。
「ふふん。どうかしら?」
そんな星羅は、ジャケットを着たタイプの格好だ。胸元は開けている。それ以外はユイと同じだ。
髪型はユイと同じく結んでいるが、バレッタで髪を留めていて、上に少し跳ねている。
これもなかなかにいい。
「こ、光司どうよ?」
「控えめに言って最高」
「ちょ! 光司がそんなこと言うなんて意外だったわ……もう……」
両頬に手を当て左右に揺れている星羅。
俺だっていいものはいいって言うぞ?
対する静は黒いベストに黒いパンツを履いており、青いネクタイを締めていた。
そしてなぜか白衣を着ていて、髪の毛は下ろしていた。
「どうでしょうか?」
「静、それは違う静さんだ」
ココアシガレットを咥えている。分かっててやってるな。だが……。
「静……」
「はい。なんでしょう」
俺はサムズアップして言った。
「最高」
ボンっと大きな音がして、部屋全体が八月の気温のようになってしまった。
すかさずユイがエアコンをつけて、温度を下げまくっていた。
「もう、コージ褒めすぎ……」
「すまんな。俺だって好きなものはあるぞ?」
「これさぁ、いのりちゃん先生が聞いたらヤバイよね」
「ええ。黙っていましょう。あの人は危険ですからね」
いのりちゃん先生って確か、担任の先生だったよな。
確かラノベの茶○先生みたいな見た目の俺の好みのどストレートな人だった気がする。
性格は知らないから、何とも言えないが、遠目から見る分には素晴らしいと思う。
「もう……朝から何バカなことやってるんです?」
朝一で野菜の手入れをしていた寧々が戻ってきた。
小脇に抱えたカゴにはきゅうりとトマトが入っていた。
「光司、これはどうなの?」
「んー。こっちは特には……」
「え、なんですか?」
それは体育の先生みたいに、ジャージを着ていて、上はファスナーを全開にしていた。
どうしてホイッスルを首に下げているのかは謎だが。
「なんか、あたしの知らないところで話が進んでますね……」
「ま、まぁいいじゃないか。じゃあ、朝ごはんにしようか」
「ダメです。光司さん、説明を要求します」
俺のエプロンを掴んで引き寄せる寧々。
その手には、普段以上に力が込められていた。
「寧々もこういう格好すればいいのよ」
「ふぇ?」
手を離し、三人をまじまじと見る寧々。
「なるほど。光司さんはこういうのが好きなんですね?」
「はい」
「はい……って、なんかやけに素直じゃないですかぁ?」
寧々の笑顔がだんだんと黒くなっていく。
そんなに攻め立てることないじゃないか。
俺にだって、好きなものの一つや二つあるんだから。
「でも、あたし、こういうの持ってないです」
「寧々、わたしの貸してあげるわ」
「ありがとう星羅。ではちょっと着替えてきますね。正座して待っていてください」
星羅と共に二階へ行く寧々。
言われた通り、ちゃんと、期待して正座で待つ。なぜかユイと静も俺の両隣で正座して座っていた。
「お待たせー」
「お待たせしました」
寧々の格好はアイボリーのジャケットにパンツスタイルと静の格好に似ていたが、インナーはシンプルな白のカットソーだった。
「なんか営業の人みたいだな……」
ついうっかり言ってしまったがために、俺の正座時間は延長になってしまった。
いや、でもそれも悪くないんだけど、なぜか寧々が着ると保護者にしか見えないんだ。
すまない……。




