14 いつもの帰り道
星羅が蘭子と一緒に花の世話をしているのを見て、唯がふと疑問に思ったことを聞いた。
「野菜とかは育てないの?」
「そんなどこぞの悪役令嬢みたいなことしないわよ」
「だよねー、あはは」
「それがな、実はあるんだよ」
「「「「え?」」」」
神崎先生の返答に驚く一同。
「勝手にナスとかトマトとか植えられてるんだ。しかもプランターじゃないぞ? ちゃんと畑になってる」
「わだすも初耳なんですが……」
「俺も誰がやってるか知らないんだよなぁ。」
神崎先生が困った顔をして頬を掻きながら話す。
蘭子も関わってないようだ。
この広い学園の敷地全てを把握するのは難しいのだろう。
実際、園芸部が関わっているのは、敷地の半分程度なのだ。それほどまでにこの学園は広いのだ。
「きっと、優しいけど見た目だけキツめの子がやっているのかもしれないですね」
「それも、星羅みたいにちゃんと作業着に着替えてさー」
寧々が言うと唯も乗ってきた。
「なんでそんな具体的なのよ……」
「お菓子とか好きそうですね」
「気づかぬうちに逆ハーレム形成してそうだな」
「人誑しかもしれねぇだすな」
「待って。なんかモデルの人でもいるの?」
そんなことを話している中で、静だけが遠くを作業着姿の人物とメイド服のようなものを着た人物が堂々と歩いていくのを見たのだった。
「さて、こんなもんだすかね」
蘭子が立ち上がり、手をパンパンと叩く。
水やりと花壇に土を入れるだけのはずが、綺麗に寄せ植えしてしまった。
「すごい……」
「センスがやばいっしょ……」
「……本当にあの星羅さんなんですよね?」
「静、それどう言う意味よ……」
そんな感じで全員で出来たての部分を見ていた。
「じゃあ、そろそろいい時間だね。片付けはやっとくから、先帰っていいよ」
「いや、薬師丸も帰っていいぞ。今は試験前だからな。本当なら部活動は休みなんだ。やってるのバレたら俺が怒られちまう」
「大丈夫だすよ。二人でやった方が早いだす」
それを見て星羅は三人の方を見て、頬を掻いたのだった。
「邪魔者は先に退散しましょうかね」
星羅が着替え終わり、四人で帰宅する。
園芸部部長である薬師丸蘭子は神崎先生と何か話してから帰るとのこと。
「それにしても星羅が、園芸部だなんてねぇ」
「あんな格好してたら、星羅シスターズも気づかないでしょうね」
「待って。何その名前」
「今考えました」
四人が帰りに寄ったカフェでテイクアウトした飲み物を飲みながら歩いている。
「まぁ、確かに園芸部にいる間は、見られてもスルーされてたわね」
「あの格好では気づきませんよ。現にわたくし達も分からなかったですし」
「うん。でもカッコよかったよ」
「そ、そう? あ、ありがと……」
顔が夕陽色で染まる星羅。
そんな中で一人ずっと黙ったままストローを加えたまま考えているのが寧々だった。
「寧々、どうかした?」
「え!? あ、いえ……なんでもないですよー……あはは」
そんな寧々を三人は黙って見守っていた。
家に帰ると、それぞれが思い思いに過ごしていた。
寧々は夕飯の準備を。
星羅は庭の手入れを。
唯は洗濯物を取り込んで、お風呂にお湯を入れていた。
静は、唯の取り込んできた洗濯物を畳んでいた。
庭の水撒きを終えた星羅と、浴室から戻ってきた唯が、静の前に座った。
「静が家事をするようになるなんてね」
「まぁ、あーしらも最近始めたばっかだしね」
「失礼なこと言いますね。わたくしは前からやってましたよ」
洗濯物を畳みながら静が反論する。
付けっぱなしのテレビではニュースをやっており、とある人物が逮捕されているシーンが映っていた。
結構センセーショナルな内容をニュースキャスターが淡々と告げていた。
その後、芋づる式に捕まった人物が次々に映されていた。
スタジオの中ではコメンテーターが好き勝手にいろいろ言っていた。
だが、そんなニュースを四人は一切興味を持たなかった。
星羅と唯は洗濯物の山から光司の洗濯物を掴もうとして静に奪い取られた。
「「ちょ!」」
「大丈夫ですよ。これはわたくしの仕事ですから」
「いやいや、多いから。手伝ってあげるっしょ」
「そうよ。好意は素直に受け取りなさいな」
「どうして光司くんの洗濯物だけ取るんでしょうかねえ」
静が、ジト目で二人を見る。
見ながら洗濯物を綺麗に畳んでいく。
「た、たまたまよ。というか静が奪い取っちゃうから畳めないし」
「自分の洗濯物をどうぞ。テロテロしてるので、畳にくいんですよね」
「悪かったわね。もう」
「あと唯さんのもアレンジ加えていて畳にくいです。どっちが上なんですか、これ?」
「わ、分かったよ……もう……。これはそんなにいじってないし……」
結局、なんだかんだ言いつつ、静が全部の洗濯物を畳んでしまった。
「ほら、自分のものは自分でしまってくださいね」
なぜか、素直に従ってしまう二人。
そんな時、光司が帰ってきた。
「ただいまー」
四人がそれぞれおかえりを言い、夕飯が終わったあと、寧々が意を決したように光司にお願いをした。




