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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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11 うさぎさんの香り


 静が教室へ入ると、既に唯と星羅と寧々が友人達と談笑していた。

 こちらに気づき、唯は手を振り、星羅は小さく手を上げた。

 寧々はニッコリと笑って返してくれた。


 そんなに時間がかかった感覚はなく、寧ろ自分が一番乗りのつもりだった。

 動揺を悟られぬよう、平静を保って入室する。

 そんな静は颯爽とした感じで挨拶をした。


 「おはようございます」

 「おはよう。今日もお疲れだね」

 「見てましたか?」

 「見てた。でも静なら当たり前感が強いっていうか」

 友人の一人、朝霞愛花が苦笑いしていた。


 静が机に鞄を置くと、辺りをキョロキョロと見回した。

 「美琴さんと優華さんは?」

 「そろそろじゃないかしら?」

 「おはよう」「おはよー」

 「おはようございます。やっときましたね」

 丁度入ってきた二人に抱きつこうとして、サッサッと躱される静。

 毎朝のルーティンである。


 いつも空振りに終わり、恨めしい顔で見上げる。

 「なぜ、逃げるのです?」

 「そりゃあ、抱きつこうとしたら避けるでしょ」

 「そうね。しかも貴女、抱きついたら離れないし」

 「わたくしは唯さん程ではありませんよ?」

 「それでもよ」

 「うんうん」

 二人とも唯と静の違いを話しながら、自分の机の横に鞄を掛けていた。


 二人とも静の両隣の席だ。

 右側が、宇佐美美琴。左側が冷泉(れいぜい)優華だ。

 愛花は静の前の席である。

 二人とも薄紫の髪の毛で、目は赤い。

 美琴はハーフアップにしているが、優華は長い髪をウェーブにパーマを掛けていた。

 そして、二人ともやたらとスカートが短かった。


 「愛花さん、酷くないですか?」

 「わたしに振らないでよ」

 愛花には抱きついて早々にチョップを喰らったので、余程のことがない限りは抱きつかない。


 「スキンシップは、朝の疲労回復にいいのですが」

 「朝はダメよ……」

 美琴が横を見ながら言う。

 だが、静は今抱きつきたいのだ。

 静は唐突に、自身の長い髪の毛を緩い三つ編みにする。そして、それを持って上下に動かした。


 「そ、それはダメよ……」

 「ああっ……それだけはダメよ」

 「ほら、二人とも!」

 「わ、分かったわよ、もう……」

 「仕方ないわね、くっ……」

 諦めた二人が静の前に立つ。

 静は恍惚の表情で、二人纏めて抱いた。


 「ねぇ、何で静はそんなに二人に構うの?」

 「うさぎさんの香りがするので」

 「へ、へぇー……」

 軽く引く愛花。


 「ま、まぁ、うちでうさぎ飼ってるしね」

 「うん。うちも」

 「今度お邪魔しても?」

 「うさぎが怖がるからダメ」

 「うさぎに悪い影響が出るからダメね」

 「そんなぁ……」

 がっくり肩を落とす静。


 そんな時、タイミング悪く入ってきた生徒がいた。

 「お、おはようございます」

 案の定、その生徒は抱き抱えられた。

 そして静が逃さないとばかりに、抱きしめて席に座った。


 「あ、あの……静さん?」

 「おはようございます薫くん。今日も可愛いですねぇ」

 「ふぇえ」


 真っ赤な顔をするのは、花咲薫。男だ。

 男子の制服を着ているが、どこからどう見ても少女にしか見えない。

 髪の毛の長さ、髪の毛の柔らかさ、髪型、顔の作り、身長、体重、体臭、声、話し方、しぐさ……どれをとっても男の要素が皆無だった。


 そして小動物のような愛くるしさも相まって、静の被害者と化している。

 もっとも、本人も恥ずかしがりはするが、拒否はしないのが増長する原因なのだが。


 「薫くんはどうしてうさみみを付けてないんですかね」

 「ふぇ!?」

 「学校でそんなのつける必要ないでしょ」

 「そうよ。……でも確かに似合うかも」

 「美琴?」

 「ふふん」

 そんな様子を冷静に愛花は眺めていた。

 心のキャンバスになんとか詳細に書き殴っていた。

 必ず薄い本にしようと。


 「あの……、そろそろ離してもらっても……」

 「ああ、すいません。お陰で十分、充電できました。明日もお願いしますね」

 「え? は、はい……」

 真っ赤な顔をして薫は、自分の席へ行った。

 行ったと言っても美琴の前の席なのだが。


 「そういえば、静メガネかけてたっけ?」

 愛花に言われて、思い出したように外す。


 「ええ。真面目モードになる時は」

 「なによそれ」

 三人がおかしそうに笑う。


 「でも、その髪型とメガネはダメね」

 「どうしてです?」

 優華の発言に小首を傾げる。


 「だって、なんか抗えないもの」

 「分かる」

 「「?」」

 美琴も同調したが、静と愛花はよくわからず、首を肩につきそうな程傾けた。


 気がつけば、ホームルームの時間になっていたようで、担任の先生と副担任の先生が入ってきた。

 「じゃあ続きは一時間目終わったらね」

 「そうね」

 美琴と優華は席に戻り、愛花はそのまま椅子を引いて座った。


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