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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第三章

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09 気づけばみんなに愛されていた


 柚と話しながら歩く。

 「でもあれ実話でしょー?」

 「そうなんですよねー。あたしがやったらイメージ壊しそうですしー……」

 「そんなことないと思うけどなー」

 そんな話をしながら教室へと入る。


 「おはようございます」「おはよー」

 「おはよー、おかーさん」「おかーさんおはよう」「きゃー、寧々さんこっち見てー」

 「なんかアイドルみたいだね……」

 「しのびないですねぇ……」

 唯と星羅は先に来ていて、軽く手を上げて応じた。二人とも話に花を咲かせているようだ。


 「これは……」

 「はは……。これは、また……。人気だねぇ」

 寧々の机の上には入部届けの紙が置かれていた。


 吹奏楽部、製菓部、衣装部、コスプレ研究会、手芸部、科学部、弓道部、花道部、茶道部、書道部、文芸部と主に文芸部の半数以上が置かれていた。


 調理部があれば、すぐに入っていたかもしれないが、あいにくとこの学園にはないようだ。

 製菓部なら入ってもいいと考えていたが、やはり家事を考えると検討の域を超えられない。

 他のみんなもやるにはやるのだが、どうしても自分がやりたいのだ。


 寧々はそれを束ねて、軽くトントンさせながら整えてクリアファイルにしまった。

 「そういうところだと思うな」

 「えっ?」

 「いや、なんでもない」

 柚の黒いポニーテールがゆっくり左右に揺れた。


 「おはよう寧々〜」

 もう一人の友人、織部(ともり)がニマニマしながらやってきた。

 少しギャルっぽさもあるが、少し間延びした語尾から人懐っこさと柔らかさがある。

 制服の上に大きなパーカーを着ていて、缶バッジを沢山付けていた。

 手はポケットに入れており、ゆるいウェーブのかかった栗色のショートボブの髪が揺れていた。


 「おはようございます、燈」

 「今日も見てたよー」

 「ふぇ!? ど、どこからです?」

 「囲まれて〜、飛んで逃げて〜、頭に葉っぱ乗っけたまま入ったとこ〜」

 「ぜ、全部じゃないですかー……」

 「だって、忍者みたいで凄いんだもん。あれ見る為に待機してる子いっぱいいるよー」

 「はわわわわ」

 てっきり全部隠しおおせてると思い込んでいた寧々は、ここからどうやってその噂を払拭させようかと考えていた。


 「で、それなに?」

 「え? あ、ああ部活の入部届ですね」

 「ついにどこ入るか決めたの?」

 「いやー……」

 「忍者部とかあればよかったのにね」

 これはもう、払拭できないなと諦めた寧々。

 「「にんにん」」

 二人して忍者のポーズを取る。

 「もー、やめてくださいよー」

 寧々は胸の前で両こぶしを握って抗議した。


 燈が寧々の机に両手を置いて、話題を切り替えた。

 「ところで〜、今日のお弁当も旦那さんの手作りでしょ?」

 「もう……旦那さんだなんてぇ」

 「否定しないんだもんねー」

 「ね。お熱いことで」

 二人は寧々の様子をニンマリした顔で眺めていた。


 「な、なんですか?」

 「だって、ねぇ」

 「うん」

 「ふぇ?」

 何を言われるのか予想していなかった寧々。

 燈と柚が寧々の前にぐいっと近づいて言った。


 「例のスピーチで言ってた相手でしょ?」

 「あれ、うまく隠してたわよねぇ」

 「そ、そんなぁ……」

 満更でもない様子の寧々。

 両頬に手を当てて、顔を朱くする。


 「そんな彼お手製のお弁当」

 「ね。いつも綺麗で栄養のバランスもいいし、ちゃんと考えられてるもんね。愛されてるなーって」

 「えへへ」

 「ほんと、彼のことになるとすぐ惚気るんだから」

 光司と自分のことを言われて嬉しさのあまり、ついつい肯定してしまう。


 でも、ふと思い出したのか、燈が疑問をぶつけた。

 「でも、それ、みんなの分作ってるのよね?」

 「えっ! ええ、そうですね」

 続けて柚がずっと思っていた疑問を尋ねた。


 「唯ちゃんに、星羅、寧々、静さんと四人分。ねぇ本当に四人とも一緒に住んでるの?」

 「はい。みんな仲良しですよ」

 「そうなんだ。唯っちと静っちとは親戚同士だって聞いたけど」

 「そうですね。遠からず近からずって感じですね」

 「そうなんだー。ふーん」「へぇ〜」

 二人は意味ありげに顔を見合わせた。


 「ほ、本当ですよ?」

 「別に疑ってないわよ。実際仲良いしね」

 「でも、帰国子女って頭いいし、運動神経もいいんだね。わたしびっくりだよ」

 「あ、それあーしも思った」

 「ぜ、全員がそうとは……」

 「首席が四人の時点で信憑性ないわよ、それ」

 「そうそう。でも、五人目の人は495点だったんでしょ?」

 「でも、その人、学校来てないらしいね」

 「へぇ、そうなんですね」

 他の人の点数には興味が無かったのか、初めて聞く情報だった。


 「まぁ、それは置いといて、ゴールデンウィークってどうだったの? どこか行った?」

 「あ、いえ……、家でゆっくりしてましたよ。みんなと……光司さんと」

 「そうなんだー。ふーん……」

 「はい。作った畑の手入れや花壇なんかを見て過ごしてました」

 寧々はゴールデンウィークにあった出来事をいくつか話した。


 「羨ましいわ。今度家行ってもいい?」

 「え? ええ。まぁ、はい……」

 「絶対よ絶対」

 「楽しみだわー。その光司さんって人にもね会ってみたいわ」

 「はわわ」

 「全くもう。真っ赤な顔しちゃって、もう」

 「言動と行動が一致してないのよね」

 嬉しさを隠そうともしない寧々を、二人は微笑ましく眺めていた。


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