25 [再会】
2人がマンションの前に到着すると、入り口付近に立っていた警護の刑事2人がこちらに気づき、柔らかく声をかけてきた。
「橘さん、おはようございます」
朝の涼やかな空気の中で、きびきびとしたその声が響く。
「おはよう。お疲れさん、今日も頼むな」
橘は軽く会釈をしながら、笑みを浮かべて声を返す。
「はい、任せてください」
そのやり取りのあと、刑事のうちの1人がふと思い出したように言葉を継いだ。
「高木さんのご友人だったんですね。昨日、差し入れでおにぎりをご馳走になりました。……まいさん、すごく優しい方ですね」
その言葉に、純一はすかさずにやけた顔で胸を張るように言った。
「だろ? めちゃくちゃかわいいし、優しいし、最高なんだよな〜」
ところがその瞬間、隣にいた香がじっと純一を睨みつけ、わざとらしく拗ねた口調で言う。
「どうせ私は可愛くないですよぉ〜だ」
その一言に、純一は慌てて両手を振りながら弁解した。
「ち、ちがうって! そういう意味じゃなくて……!」
しどろもどろになって焦る純一の姿に、見ていた刑事たちも堪えきれずに笑い出す。
「ふふっ、朝から仲良しですねぇ」
「まあまあ、元気があっていいことだ」
橘も微笑ましそうにそのやり取りを眺めながら、軽く手を挙げて言った。
「じゃあ、またな。ちょっと高木の部屋に寄って話をしてくるから」
「はい、了解しました」
刑事たちは一礼し、再び警戒の姿勢に戻る。
橘は短く頷きながら、エントランスのガラス扉を押し開け、静かに建物の中へと入っていった。
エントランスで謙の部屋のインターホンを押すと、数秒の間を置いて、モニター越しにまいちゃんの顔が映った。
「はい、どうぞ」
柔らかな声とともに、オートロックが「カチッ」と解除される音が鳴る。
「ありがとう」
俺はそう呟きながら香と一緒にエレベーターホールへと向かった。
エレベーターを待つ間、香がふと立ち止まり、じっと俺の顔を見つめてくる。
目線が合った瞬間、俺はなんとなくその視線に気づいて首を傾げた。
「……なんだよ、香?」
問いかけると、香は意味ありげな表情をして、少し微笑みながら、まるで探るような声で言った。
「ねえ、まいちゃんのこと……どう思ってるの?」
突然の質問に、俺は一瞬だけ戸惑い、眉をひそめたが、すぐに肩をすくめて答える。
「どうって……謙の彼女だよ。それ以上でも、それ以下でもない」
それでも、香の顔にはどこか納得しきれていない様子がにじんでいる。
まるで俺の言葉の裏を探っているような雰囲気だ。
そんな香の反応に気づき、俺は少しだけ茶化すような調子で言葉を続けた。
「それにさ、俺にはお前がいるし……香って優しいし、気が利くし、何より――かわいいし、スタイルもめちゃくちゃいいしな」
冗談交じりの言葉だったけれど、内心は本気だった。
すると香は少し驚いた様で、わずかに頬を赤らめたかと思うと、照れ隠しのように小声で一言つぶやいた。
「……バーカ、そういうの、恥ずかしいでしょ」
「だって、香が何か疑ってるから〜」
俺が軽く笑って返すと、香はくすりと笑いながら小さく肩を揺らし、「わかってるよ、冗談だって」と、柔らかく言葉を返してきた。
ちょうどその時、エレベーターの扉が「ピン」という音とともに開く。
2人で視線を合わせ、軽く頷くと、俺たちはそのまま中へと足を踏み入れた。




