第十六話
大きな音が、耳から頭の中へと侵入する。それを止めるべく、私は眠い目をこすりむくりと起き上がった。
「止まれ」
眠い。ひたすらに眠い。
そんな事を考えながら、とある物体にそう言った。すると大きな音が鳴り止み、時計の針が進む音だけが響いた。
コレは目覚まし時計。今では誰もが愛用するものだそーだ。私はコッチの世界にきてから、コレにお世話になりっぱなし。二度寝しないように、ベッドから出て、台所へ向かう。
何となくわかったと思うけど、私、朝弱いんだよねぇ。今からでもベッドに潜れば、二度寝できるほどには。
「くぁ…ねむ」
大きいあくびをし、コーヒーをいれる。実はお茶とかよりコーヒーが好きだったりする。まぁ紅茶とかも飲めないわけではないので、出されたものを基本飲むんだけど。自分でいれる時は、基本コーヒーだねー。
『…おはよ』
「おはよ。はい、トマトジュース」
そう言って寝起きのハクの前にトマトジュースを置いた。ハクの朝はこれから始まる。本人が言うには、これから始まらないと一日が始まった気がしないんだそうだ。眠い目を擦りながら、昨日の作業の続きが散らばる机の上を片付ける。昨日、割と遅くまで仕事してたんだよね…いや、主に委員会とか行事の見直しなんだけど。
「ハク、書類の上にジュースこぼさないでよ。また、書き直しになっちゃうんだから」
『アイアイサー…』
うわぁ…絶対適当に返事してる。てか、あれ半分寝てんじゃん。
なんて事を思いながら、サッサと机の上を片付けて、箱の中にしまい、それを透明化させた。いや、バレちゃうから。サッサと制服に着替え、七時になるのを待ち、部屋を出て食堂に向かった。
「シズカー」
呼ばれて顔を上げると、チュゼが手を振っていた。てか、後ろにいる人誰ですか。
「どうしたのーチュゼ」
「いや、お前、ディアーブルと仲良いのか?」
「ディアーブル?」
駆け寄った私に、チュゼかわそういう。どこか聞き覚えのある言葉に首を傾げ、すぐさまあぁと頷いた。ディアーブルって、確か、春翔の家名だったっけ。
「春翔の事?」
「そうそう。ハルト・ディアーブル」
「まぁそれなりにはいいけど…何かあったの?」
私の言葉に、チュゼが振り向き、そこにいた友人らしき人がチュゼの隣に並ぶ。
「初めまして。俺はハルトと同室のシェアード・ナノと言います。シェアと呼んでください」
「初めまして。私はシズカ・ドラーク。シズカって呼んでね。よろしくシェア」
「よろしくお願いします。俺の敬語は癖なので、気にしないでください」
敬語に違和感を感じていたのが分かったのか、シェアが苦笑してそう言った。そうなのか、と、納得してそれに頷くと、シェアは本題に入る。
「突然ですが、俺はハルトが普通の魔族ではない思います。シズカさんは、寮長達が決めた部屋割りのルールをご存知ですか?」
「うん。ペアが、人間と魔族になるようにしてるんだよね?」
「はい。なので、勿論ハルトが魔族だということは分かります。ただ、俺には、ハルトが普通の魔族だとは考えられないんです」
そう言ったシェアの瞳には、不安と困惑が浮かんでいた。思ったより、シェアは頭が良いらしい。どうして?と問えば、シェアらスラスラと自分の意見を言う。
「俺、魔力探索魔法が得意なんです。ちょっと意識したりすればすぐ分かるくらいには。だから、ハルトの魔力もすぐに分かったんですけど…その、おかしいんです。普通、人間も魔族も、魔力を持ってるじゃないですか。極微量でも。けど、ハルトは無いんです。見れないほど少ないとかの問題じゃなくて、無いんです」
困惑の部分はそれか…てか、春翔ぉ。確かに、春翔の魔力は多過ぎるから魔力を抑えておけと言ったけども。…言ったけども!誰が無くせと言った!明らかに不自然じゃん!何で生きてんのってなんでしょ!この世界の人は大抵の人が、魔力が尽きると同時に命も尽きる。まぁ例外はあるけども。
「と、相談された俺も分からないんで、ディアーブルと仲がいいお前に話を聞こうってなったわけだ」
「うわぁ…ゴメン。うちの春翔のせいで。とりあえず、ご飯食べながらでもいい?どうせ本人来るだろうし」
シェアに申し訳なくて謝る。私の提案に頷いたシェア。それを見て、朝食を取り、席につく。二人が座ったところで、周りの音を遮断し、中の声が聞こえないように魔法をかけた。これ、便利なことに、周りから見たら、普通に世間話しているように見えるんだよ。ありがたいよねー
「ちょっと、他に聞かれるとマズイから、魔法かけさせてもらったよ。で、シェアは春翔が何者なのか知りたいの?」
「それもありますが…あんな状態で大丈夫なんですか?」
そう聞いてきたシェアに驚いて目を見開いた。てっきり、不安なのは春翔が何者かわからないからだと思ってたんだけど…心配してたんだ。シェアが安心するように微笑んで言った。
「うん。そこは問題ない。本当は、魔力が腐る程あるんだよね。だから、魔力がないわけじゃないから安心していいよ」
そういうと、ホッと息をついたシェア。
うーむ…いい人だなぁ。そんなことを思っていると、馬鹿がようやく現れた。
「あ、おはよう。…え、なにその組み合わせ」
私達を見て、驚きで眠気が吹っ飛んだ春翔に、ニコッと笑いかけた。
あぁ報告忘れてたんだけどね。春翔、同じ学年だったんだよね。誕生日が早いだけで、別に年上ではなかった。
ま、そんなことはおいといて。
春翔が私の笑顔を見て、ビクリと体を震わした。
「し、静香?笑顔が怖いんだけども」
「さっさと座りなさい」
オロオロする春翔にそう言うとまたビクッと体を震わせ、私の横に座った。さて、人が揃ったところで説明しましょうかね。
「まず、簡単に説明するね。魔族の人に聞けば分かるんだけど、春翔は現魔王。で、異世界人」
「「…は?」」
シェアとチュゼ、二人の声が重なった。あれ?シェアは予想してると思ってたんだけど…あまりに驚き過ぎて、生きしてるのか心配になるくらい、固まってる。あちゃー…ちょっといきなりすぎたかな。
「魔王だから、魔力がゼロの状態に出来るし、元々異世界人だから、魔力がなくても生きれるんだよ」
「…え?じゃあ、本当にハルトは魔王なんですか?」
「うん。あ、あんまり言いふらさないでね。面倒だし、ハルトが」
どうやら、無理矢理納得してくれたみたいで、微妙な顔で二人が頷いた。さて、問題も解決したし、8時前になったから、さっさと片付けて登校するか。っと、その前に。
「春翔。シェアに謝っておくことと、シェアから魔力の平均値を聞いてそれに合わせときなさい」
「はい…」
ショボンとする春翔そう言って朝食の用意を片付けた。三人と別れ登校する。とりあえず、学校二日目。気合いれて行きますかー。
春翔の誕生日は四月。
静香の誕生日は二月。
二人が出会ったのは五月の始め。
だから静香は勘違いしていました。
…補足になってますか分かりませんが^^;
GWは暇なので、多分、更新出来ると思います。
それでは、次回。




