第十二話
さぁって戻ってきましたよ、モナルキーアに!ちなみにモナルキーアは私が召喚された国。つまり、さっきまでいた国の名前ですよ。
そして、王座で固まっている王の前には同じく固まっている春翔。何故かちゃんと床に正座しているのが笑える。笑いを堪えながら、春翔の隣に立った。
私が転送でこっちに戻ってきたときに目にした状況と何も変わらない。ていうか、二人が驚きすぎて動かない。何者かと警戒していた騎士達も、私の姿を見るなり警戒を解いた。多分、あぁこの人が連れてきたなら大丈夫だな。みたいな感じだと思う。それでいいのか。
「春翔。いい加減、戻って来て」
「…静香。いきなりは酷いんじゃないかな」
ようやく戻ってきた春翔の言葉を無視する。王は私の姿を確認したとたん溜息をついた。そんなに深い溜息つかなくてもいいじゃないですかー。そんな事を思いながら王に笑みを向ける。
「王。こちら、現魔王の春翔です。お話があるそうなので連れて来ました」
「…うむ。ハルトよ。楽にしなさい。どうせシズカに無理矢理連れて来られたのだろう」
そう言って王は春翔に哀れんだ目を向けた。まぁ間違っていない。そんな事を思いながら春翔の肩をポンッと叩く。一応力は抜けたな。そんな事を思いながら再び話し始める。
「王。提案があるのですが」
「なんだ」
「学校を作りませんか。人間と魔族が一緒に生活する学校を」
そう言った瞬間、王の顔が歪む。その顔ににやりと笑って続ける。
「人間と魔族の間には多くの誤解があります。それを無くすためには、互いを知ればいい。そうだと思いませんか?」
「…長年受け継がれた記憶はそう簡単にはその記憶は消せないだろう」
「ええ。だから、新しい記憶を刻み込む。ここから新しく作り上げるんです。互いを憎んでいるなんて当たり前。だけどそれは互いを知らないから。誤解をしているから。互いを知ってもなお互いを憎むというなら諦めるしかありませんが」
互いを知らないのにあっちが悪いこっちが悪いと言っていたってキリがない。手っ取り早いのは、互いをよく知ることだ。まぁいろいろと障害はあるだろうけどね。私の言葉に王は考える。これ以上は何もいえないなぁ。私は学校作りたいけど、この国のお金を使うわけだし、王が許可しないと何も始まらない。王は視線を春翔に向けた。
「君はどう思っているのだ。ハルト」
「…そもそも学校を作りたいと言ったのは俺です。魔族の中には、人間の技術、知能に惚れ込み、もっと交流を深めたいと思っている者が少なからずいます。だけど、大きな溝がそれを邪魔する。俺達しか知らない知識や、人間達が知らない知識を交換すれば凄く進むと思うんです」
「ふむ。シズカ。お前がこの者をここにつれてきたというと言う事は、お前はこの者を信頼していると考えてよいのだな?」
「ええ」
王のその言葉に笑みを浮かべて頷く。やがて王は閉じていた目を開き、笑顔で頷いた。
「やってみるがいい。ただ、条件がある」
「はい」
「まず一つは、私はその学校に関して何も口出ししない。次に、必ず何か成果を上げろ。これが条件になる。いいな?」
「はい。分かりました」
王の条件を飲んだ春翔。私は王が満足そうに頷いたのを見て口を開く。勿論、言う事は決まっている。
「王。私はこの学校に入学しますから」
「はっ?」
私がそういうと、王は王らしからぬ間抜けな声を出した。その声に少し笑いながら続けた。
「私はまだ学生であるべき年齢です。それと同時に特攻隊副隊長でもあります。つまりは、特攻隊副隊長と学生なわけです。学園内で問題が起こったとき、私がいればすぐに解決できるでしょう?便利な奴じゃないですか」
「…お前、本音は入ってみたいだけだろう?」
「はい」
凄くいい笑顔で答えてやった。だって、ねぇ?物凄く面白そうだし?だから、入学しちゃえばいいんじゃね?みたいな。そう言い切ると王が呆れ顔になる。勿論、特攻隊副隊長としての仕事もちゃんとこなしますよ。学校はあれ。息抜きみたいな感じで。
「…まぁいい。だが、役目は変わらない。仕事を怠るなよ」
「了解しました。それでは王。取り敢えず、余ってる学校はありませんか?」
「あぁそれなら丁度いいのがある。後で資料を渡しておく」
「ありがとうございます。それでは失礼します」
王との会話を終え、王に許可を貰ってから未だ正座している春翔を連れ部屋を出た。取り敢えず、ウィルさんとかに報告。出てきたのはさっきだから、まだ仕事部屋にいるはず。そう思い春翔をつれてウィルさんの仕事部屋の扉をノックする。あ、自分で歩けてるんだけど、やっぱ人見知りするみたいで体を小さくして歩いている。
「誰だ」
「シズカ・アプロスです」
「あ?シズカ?」
不思議そうなその声を聞いて扉を開ける。取り敢えず皆まだ揃ってたみたいで、皆ポカーンとしていた。まぁ出て行ったのさっきだしね。そんな事を思いながら、春翔をソファへ座らす。私は春翔の隣に立つ。そして、正気に戻った皆に紹介した。
「こちら、現魔王のハルト・ディアーブルです」
「ハ、ハルト・ディアーブル、です」
「…ウィルダ・ニコロ、特攻隊隊長だ。…シズカ、これはどういう事だ?」
カチコチの春翔に笑っていると、ウィルさんが驚いた顔でそう聞いてきた。なので、今までのことを一通り説明した。いやー皆の驚いた顔と言ったらね。笑えるね。笑わないけどね!ウィルさんは一応納得したのか、私に質問を投げかけてきた。
「学校を作るのはいいが、生徒はどうする。教師は?」
「勿論集めます。生徒は取り敢えず一年だけで百人。と、考えています」
「それは、片方がか?」
「勿論」
百人。ここでは少ない方だ。普通は何千人とかだから。ああは言ったものの、やっぱり教えられた事は簡単には捨てれない。魔族はいい人だから魔族と一緒に生活してくださいと言われてそう簡単にはいそうですかとは行かない。でも、絶対に興味はちょっとあると思うんだよね。
だから、取り敢えず、皆のヤル気をあげてみる。魔族は魔法の知識が長けている。逆に人間は体を使って戦う事に長けている。ならば、互いの長けているところを見せあえばいい。
と、なんかかっこいい事いってみた。
「取り敢えず、私はコッチで動き回ってみるので、春翔は春翔で動いてくださいね。困ったらシャラさんを頼ってください」
そのためにシャラさんを置いてきたんだから。ニッコリ笑うと、春翔は戸惑いながらも頷いた。皆のあきれる視線が気になるけど、まぁ無視しておこう。それを確認してから、私はウィルさんに向き直る。
「そういう話です。訓練に支障は出しませんので」
「分かった」
私の言葉に頷くウィルさん。取り敢えず、訓練に支障が出ないようなやり方、だな。そんな事を思いながら私は一つ、いい案を思いついてニヤリと笑った。さぁて、はじめようか。




