第九話
皆さん、あけましておめでとうございます。
今年も、黒の竜使いをよろしくお願いいたしますm(_ _)m
今回はそれ程、話は進まないんですよね…(・・;)
それではどうぞ
誰かの声がして、意識が浮上する。うっすら目を開けると、真っ白な天井。何処だここと思いながら体を起こす。
「いった…」
「あ、シズカ。起きたか」
身体中が痛んで思わず呟くと、隣から声が聞こえた。視線を向けると、そこにいたのはウィルさん。ウィルさんは苦笑して言った。
「自分より何倍もある男を投げ飛ばしたんだ。そりゃあ、痛いに決まってる」
無茶しやがって。ウィルさんが私の頭を小突く。うぉ…痛くないけど、その顔でやられるとダメージが…!優しすぎだろウィルさん。
「挑発した俺も悪いが、あそこまでするとは思わなかったぞ」
「私としては、満足です」
満足した顔でそう言うと、呆れられた。まぁ目標は達成したからいいじゃない。その後、ウィルさんから私が意識を手放してからの話を聞いた。どうやら、私は倒れる直前にウィルさんに受け止められたようで、顔から倒れることは阻止できたらしい。しかしその後、兄さんやら団長が騒ぎ出し、落ち着くまでに大変時間がかかったそうだ。その間、私は熟睡していたようでして。
「…本当、すみません」
「今は二人共落ち着いてるからな。後で呼んできてやるから」
深々と頭を下げた私に対して、ウィルさんは苦笑して答えた。本当、申し訳ない…!しかし、兄さんが騒いだのは納得できるが、なぜ団長まで騒いだんだろう。まぁ、団長は保護者みたいな感じだからな。だからかもしれない。
それから私は、無事練習に復帰する事ができました。まぁ正直、意識飛ばした以外、体に異常はなかったんだよね。周りが大げさにしすぎだと思うんだよ。そんなこんなで練習に復帰した私ですが、何やら物凄い皆に見られます。いや、敵意を感じないからいいんだよ?別に。ただ、ガン見されるんだよね。
「…シーザさん。なんでガン見されてるんですか」
「そりゃあ、お前があんなスゲー事したからだろ」
赤髪緑眼の先輩はシーザさんという名前だった。で、シーザさんの近くに避難中です。もうね、あの巨体で迫られたら怖いのなんの。本人達には悪気はないんでしょうけど、正直、恐怖の塊でしかないからね。そんなわけで、さっきからシーザさんにくっついてるわけですよ。まだ、細マッチョの方がマシだし。
「まさか、投げ飛ばすとは思わなかった。なんかやってんのか?」
「昔、よく家族でサバイバルに行ってまして。父に崖から突き落とされて死にかけたことがあります」
あれはいつだったかな…確か、小一の頃だった気がする。入学祝いにサバイバルに行って、強くなるためにとかで笑顔で落とされたんだっけ。まぁそんなに高さがなかったから打撲とかですんだけど。空中で受身とってなかったら結構危なかったと私は思う。
そんなことを考えていたら、シーザさんに哀れんだ目で見られ、大変だったんだなと慰められた。
「まぁそれだけじゃないけどな」
「他に何か?」
「隊長がスゲー焦ってた」
「ウィルさんが?」
あれ。ウィルさん、そんなに焦ってたんだ。聞くところによると、私を受け止めたあと珍しく混乱していたようで、副隊長に叱られてたとか。で、私が目を覚ますまでそわそわしてたとか。…意外だ。
「それもあるんじゃねぇかな」
そう言って笑うシーザさんにはぁっと溜息をつく。未だに向けられる視線を無視する。とりあえず、この視線は気にしない方向で。
「ところでシーザさん。今は何をする時間なんですか?」
「今?見ればわかんだろ。マッチョ達が無駄に筋肉を見せ合う時間だ」
うん。見たらわかる。だけど、聞かずにはいられなかった。何その時間。というか、その無駄な見せ合いで誰が得するの?マジで。よくある光景らしく、シーザさんは笑ってその光景を眺めてる。目は笑ってないけどね。
「シーザ!聞いてくれ!」
そんなマッチョ軍団を観察していると、後ろから声がかかった。私ではないものの、シーザさんに釣られて振り向いた先には、ローブをきた男がいた。半泣きで。男はシーザさんに飛びついた。あ。シーザさんが若干、鬱陶しそうな顔してる。
「なんだよ、ウィーネ」
「隊長がさ、酷いんだよ!俺に、魔法なしで一キロ走れとか言うんだよ!」
「だから逃げてきたのか?」
「正解!」
笑顔で言うこの人。体力なさそうだなと思っていたら、何故かその人にガン見された。…なんだろう。
「特攻隊に女の新人?」
その目は見開かれている。まぁ、驚くのも当然なんだろうな。一応、頭を下げておいた。この人は、純粋にそのことに驚いているようで、別に馬鹿にしているわけではなさそうだ。
「今日から入ったシズカだ。シズカ。こいつは、魔法隊のウィーネ」
「初めましてシズカ。ウィーネだ」
「シズカです。よろしくお願いします」
そう言って差し出された手を握って言う。青髪赤眼のウィーネさん。ちょっとイケメンって感じの人だ。うん。なんだろう。めっちゃイケメンではないんだけど、平凡とは違うんだよね。まぁそんな感じだ。ウィーネさんは、握手したまま私をガン見する。それに首を傾げていると、またまた驚いたように言われた。
「シズカは、魔法も使えるのか?」
「一応。得意ではないですが。どうしてわかったんですか?」
「魔法隊の皆は、相手の体の一部に触るだけで相手の魔力とか、魔法が使えるかとかが分かるんだ。隊長なら、見るだけで分かったりすんだけどな」
「へぇ…」
じゃあ、はじめからサニエさんにはバレてたってことか。まぁ隠したつもりはないけどさ。しかし、本当に隊長なんだなーと改めて思った。いや、あの人が隊長ってイメージわかないんだよね…。でも、割と厳しい人なんだろうか。
「しかし、お前スゲーな!魔法も使えるわ、竜には乗れるわ、力は強いわ!超人か!」
「ちょっ」
ちょっと待て。この人、今スゲー重要なことを大声で暴露したな!?だから、それ隠してんだって!…あれ?そもそも、なんでこの人知ってんの?ハクに乗れるって知ってるのって隊長達と兄達だけなはず。
そこまで考えた私は、頭の中にピンク頭が思い浮かんだ。あぁ…なるほど。とりあえず、この人に口止めしておかなければ。…遅いだろうけど。私は、ウィーネさんに言った。
「ウィーネさん。あまり竜のことを言わないでください。面倒なので」
「ん?そうなのか?そりゃすまなかった」
素直に謝ってくるウィーネさんに笑顔を向ける。この人は別に悪くないんだよなぁ。あのピンク頭だ。そんなことを思っていると、遠くの方にピンク頭が見えた。それはウィーネさんも同じだったようで、嫌そうに顔をしかめた。
「げ!隊長、はえー」
「ウィーネ!お前、逃げんなよ!ってあれ?シズちゃん?」
「どうも。サニエさん。とりあえず、ちょっと来てください」
「え、何?すごく怒ってるっぽいんだけど!?」
当たり前だ。サニエさんを皆から離れた場所へ引きずっていく。そりゃ、私は秘密にしてくださいとは言言わなかったよ。けどね。その場の雰囲気ってものが秘密にする感じだったじゃん!だから言わなかったのに!
この国では、竜使いの数が少ない。しかも、竜は持ち運びに便利だったりするので、皆使いたがる。まぁ力持ちだしね。で、なにかとばれると面倒なのですよ。人攫いにあったりするしね。だから普段ハクには人間の格好をして貰うか消えてもらうかしてる。人間の格好は疲れるんだそうで、あんまりしたがらないハクは大体消えてる。
「サニエさん。どうして私が竜に乗れるってことを言いふらしてるんですか」
「いや、ついね?つい口が滑っちゃって」
あははと笑うサニエさんにはぁと溜息をつく。もう言ってしまったことは仕方ないからね。そこまで責めはしないさ。思ってることが伝わったのか、ホッと息をついたサニエさん。諦めてはいるけど、許してはないからね。覚えてろよ。
「シ、シズちゃん、倒れたらしいね。大丈夫?」
「えぇ。体はあちこち痛みますが、動けないほどではないので大丈夫です」
「そう」
そう言って安心したような顔をしてほっと息をつくサニエさんに、この人にも心配をかけていたのかと思った。まぁサニエさんは基本いい人だからね。たまに面倒だけど。心配かけましたとサニエさんに言ってからウィーネさんとシーザさんの元に戻る。そしたら、何故かウィーネさんにキラキラした目を向けられた。
「お前、スゲぇな!あの隊長を焦らすなんて!」
「…サニエさん。普段、どんな訓練の仕方してるんですか」
「だいぶレベル落としてるつもりなんだけどなぁ。それでもキツいみたいだね」
そう言って笑うサニエさん。体力ない人にはキツいんだろうな。ウィーネさんの顔が強張ってる。ちなみに、ウィーネさんは今、シーザさんの後ろに隠れている。ウィーネさんはデカイけど、シーザさんはそれ以上にデカイから隠れられる。がしかし、大の男がそんな事しても可愛くない。
そんな事を思っていると、サニエさんが低い声を出した。
「おいシーザ。いい加減帰るぞ」
「嫌です!魔法なしで一キロとか死にます!」
「じゃあ特攻隊の練習に混ざるか?」
「無理です!」
あ、嫌ですが無理ですに変わった。いや、まぁそうだろうけど。その答えを聞いたサニエさんは頷いてウィーネさんを引っ張っていった。…なんだったんだ。二人の姿が見えなくなり、シーザさんに向き直る。
「…そろそろ、ウィルさん戻ってきますかね?」
「知らね。隊長、意外に苦労してるからなぁ」
その言葉に頷き、再び先ほどの位置に座って無駄な筋肉の見合いを眺めた。
はい。
無駄に長くなってしまいました(・・;)
次回ものんびり更新です。
それではまた。




