第7話
幸運にも、偶然入ったカフェはそんなに混んでおらず、すぐに席に座ることができた。
案内された窓際の席からは、レンガ造りの瀟洒な建物が並ぶ都会の街並が見下ろせた。
照りつける太陽に焼かれる地上とは違い、店内は空調がよく効いているのか、全身から吹き出していた汗もいつの間にかすっかり乾いていた。
眞美は一杯1000円もするアイスコーヒーをストローでちびちび飲みながら、同じく一杯1100円もするアイスカフェラテをストローでかき混ぜる彩芽をちらりと見やる。
中学校を卒業してからも、度々彩芽から遊びの誘いがあった。
眞美があんなことをしたのに、彩芽は何も感じていないのだろうか。いや、そんなはずはないだろう。
彩芽の気持ちが分からなくて、なんとなく気になって、気まずいながらも誘いを受け続けた。
でも、何度会っても、彩芽はあの頃接してくれたときと変わらなかった。眞美を恨むような発言や態度もなく、純粋に眞美とのおしゃべりやお出かけを楽しんでいるような、そんな無垢な印象ばかりだった。
調子の良いことに、眞美は彩芽の好意に甘え続けた。後ろめたさはあったものの、自分が犯してきたことに対して何も言及されないことに安堵した。
この「平和」が保たれるのなら、このままでもよかった。
しかし、予想外のことが起こった。
「平和」であるはずなのに、眞美の胸はあの頃と同じひりついた痛みを訴え始めた。
どうしてだろう。眞美にはその理由が分からなかった。
眞美はしばらく考え続け、とある答えにたどり着いた。
あの頃と同じことをすれば、同じようにこの胸の痛みは消えるのではないかと。
それはつまり、彩芽と「友達」になること。
しかし、眞美はすでに彩芽と「友達」だ。
これ以上「友達」になることはできないと考えていたところ、一つの考えが頭をよぎる。
もしかして、「友達」という関係にほころびが生じているのではないかと。だから自分の「平和」が揺らいでいるのではないか。
事実、眞美にはその原因に心当たりがあった。
眞美が犯した罪だ。
保身のために彩芽を利用し裏切った罪。
この罪を償わない限り、「平和」を取り戻すことはできない。




