災害襲来
「完成だ…」
「やめろ…」
燃えている、町が、人が、世界が。
ドラゴンが、飛んでいる。
………
「また続きか…」
今日は大学に行き、級友達と過ごし、実習をこなし、レポートを書いて、ゲームをして就寝したはずだった。
気が付くと前日夢で見ていた場面だった。
周りを見渡すと、図書館から出たあたりのようだ。
(今のはなんだ?)
一瞬見えた偉そうな男、息も絶え絶えになりながら何かに手を伸ばして止めようとする者、そして、燃える町と空飛ぶドラゴン…
全く身に覚えが無く、だがしかし、焦燥感を掻き立てられるものだった。
(嫌な感じがする。)
自分が何故そう思っているのかわからなかったが、自分が何かしなければという焦燥感だけがあった。
(燃えていたのは、この町? 細かいところまでは思い出せない…)
先ほどの映像が頭から離れない。町は燃えて崩壊していた。人々の叫び声、流れ出る血、空飛ぶドラゴン、その全てが現実のようだった。
(これは、そう、夢なんだ。ゆめ、なんだ)
不安から目を背けるように何度も自分の中で繰り返した。これはただの夢だと。
サイレンが鳴った。
けたたましいサイレンの音に驚いて顔を上げると、町の向こうが赤くなっているのが見える。
「センサー2が魔獣を検知しました。住民の皆様は外出をお控え下さい。繰り返します。センサー2が魔獣を検知しました。住民の皆様は外出をお控え下さい。」
町に設置されたスピーカーから緊急の呼びかけが聞こえる。
「魔獣…?」
放送を聞いて町の人々は急いでどこかへ走って避難しているようだった。
(外出は控えるようにって言われたのに、皆んなどこに行くんだ?)
何が起こっているのか分からず、とりあえず邪魔にならないように図書館入り口横で動向を見守っていた。
「あ! ユウさん!」
ショウが慌てて駆け寄ってきた。
「外部の方は魔獣対策課に避難ですよ!」
どうやら心配して孤児院からわざわざ探しにきてくれたようだ。
「対策課に?」
「ええ!早く魔獣対策課のシェルターへ!!」
魔獣対策課のある役所には緊急時のシェルターが存在しており、家よりも遥かに頑丈で安全とされていた。
2人が役所に着くとかなり多くの人が来ているようだった。
役所の職員に誘導されて地下へ降りているようだ。
「こりゃ全員避難するのは無理じゃない?」
シェルターに続く道がすし詰め状態になっているのが見える。
「今日は外部からの人が多かったみたいですね。」
ショウは周りを見渡して見知らぬ顔が多いと感じた。
魔獣対策課・憑神対策課の前には武装した討伐師達が集合していた。
センサーに反応があった場所に緊急出動するようだ。
隊長の号令と共に街の外へ向かって行った。
「それにしても毎回こんな避難してたら大変だな」
図書館で見た感じだと世界にはかなりの数の魔獣が生息しているようだった。魔獣がきて毎回避難するたびにこれでは大変だろうなと思えた。
「センサーが赤で、みんな家じゃなくてシェルターに来てるんだと思います」
「赤?」
ショウは町の外が赤くなっているのを指さしながら言った。
「赤…この町、どうなっちゃうんだろう…」
センサーは町から離れた場所に設置されており、マナ濃度を測定して色が変わる。
赤は高濃度のマナを検知した時の警戒レベルであり、マナの濃度が高いということは強力な魔獣が近くに迫っていることを示していた。
センサーが赤くなるのはこの町では初めての事だった。
ショウはシェルターに入る列に並びながら怯えているようだった。
(ん?あの憑神化した熊はセンサーに反応してなかったよな?)
「なあ、あの熊はセンサーに反応しなかったよな?あれも憑神化してたならセンサーに反応しないのか?」
憑神化したら強力な個体になる。ということはマナ濃度とやらも上がるはずなのになぜ反応しなかったのか分からなかった。
「それは、センサーの範囲外だからだと思います。あの森から出るか出ないかあたりまで来てたら反応してたと思います。」
センサーの範囲はそれほど広くはないようだった。
(それって、もうすぐそこまで来てるってことでは?)
周りを見渡す。シェルターに避難しようとする人々で役所は混乱していた。とてもすぐに避難完了できるとは思えない。
町が燃え、人々の叫び声、流れる血、その映像と音が頭をよぎる。
(これは夢で、さっきの映像もなにかの間違いだ…)
自分に言い聞かせる。これは夢だと。
遠くで爆発するような音が聞こえる。戦闘が始まったようだ。
となりのショウをみると音に驚いて震えているようだ。
周りからは悲鳴と泣き声も聞こえる。
(そうさ、これは夢だ。俺だけは。)
何でもできるはずだと、自分に言い聞かせて顔を上げる。
「…俺ちょっとトイレ行ってくるわ、先にシェルター入ってて」
「え?」
不安そうなショウにそう告げるとユウは列を外れ役所の外に出て行った。
空を見上げると赤く光っている方角に黒い煙が立っていた。
「…よしっ!行くか!」
力強く目的の場所へ駆け出していくのであった。




