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夢現〜眠りの鏡界  作者: ヴィトー・シームルグ


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追憶の先に

役所に着き、3人は牙野猪の討伐の件を報告する。

外に出ると日が沈んでおり、報酬をもらった3人は宿屋に向かった。

宿屋に着いて受付にて夕食を注文する。


「よろしければ、温泉に入っていって下さい。疲れも取れますよ」


受付で宿屋の温泉を案内されたので食事の前に温泉に入る事にした。

汚れと疲れを温泉で溶かし、宿屋の浴衣に着替えて部屋に戻る。

少しすると食事が運ばれてきたので夕食にする。

美味しい夕食を食べ終わると、移動と討伐の疲れもあり、3人は就寝する事になった。


ザンダとショウが眠りについたのを見計らって、ユウは外に出る。


(幼き記憶を辿る、か)


ちょうど今いる所は、現実と同じ場所では沢山の思い出があった。


(あの魚屋はクソガキだった俺を可愛がってくれてたっけ…。あっちの坂の上の平坦な所で友人達とよく遊んでたな)


懐かしむように、現実と似ている夢の世界を歩いていく。川の上の短い橋を通り、反対側の坂を少し上る。


(こっちは通学路だったっけ…。帰り道、友達と探検するように色々な道を行ったな…。道なき道を行く事もあって、崖の上に出たり塀の上に出る事もあって今考えると危なかったかも。そういえば、あの時…)


ユウは坂を上りながら幼き記憶を思い出す。


(確か、坂の途中に柵があって、その先に下へ続く石階段が見える不思議な場所があったんだ。崖のような地形だからか、まるで地下に行くような見た目だった)


ユウは更に深く思い出そうとする。


(崖下に当たるところを坂を上らずに回り込んで下から見上げてみても、建物があるようには見えなかった。だから、気になって入ってみたんだっけ)


友達と得体の知れない階段を降りていく。その先にはマンションのようにいくつかドアが左右の壁に設置されていた。しかし、様子がおかしいと子供ながらに感じていた。


(そうだ、絶対にそんな空間はないはずなのに、上とか下に渡り廊下のような橋が不規則にかかっていて、沢山の部屋のドアがあったんだ。中心が空洞になってるから、階段から下を覗くとかなり深くてどこまであるか分からなかったんだ。それで、友達と怖くなってそこから逃げるように出ていったんだ…)


その体験があってからは探検しながら帰ることはしなくなったのだった。ユウはまだその場所が何か気になっていたが、友人が乗り気ではなくなったのだ。


(そう、確かこの辺で…)


そこには記憶の中と同じような階段があった。柵はないようだ。


「あった…。ここら辺は変わってないんだ…」


ユウはその階段がどうにも気になってしまう。

何かに引き込まれるように階段を降りていった。



階段の先はマンションではなく、洞窟のような感じだった。所々何かが天井で光っているので足元は明るい。


壁は溶岩石のようにざらざらしていて黒っぽい。空気はひんやりしているようだ。


どのくらい階段を降りただろうか、開けた地底湖のような場所に出る。目の前は外が見えるように壁に巨大な穴が空いている。

穴の手前に温泉が沸いているのか湯気が立っているようだ。

穴の向こうを見てみると向こう岸に桜の木が1本見える。


ユウが広い空洞を前に進もうとしたその時。


「客人とは珍しいことだ」


頭の中に直接話しかけてくるような妙な感じがする。

それと同時に何かが左の方向から動くような気配を感じる。


ユウが恐る恐る左側を向くと、そこには空想の話でしか見たことのない巨大な黒いドラゴンがいた。

壁際の寝床で休みながらこちらを見ている。

ユウは驚いて一瞬固まった。思ってた以上にドラゴンの迫力があり、なぜ1人で来てしまったのか後悔した。

何とか逃げようと炎魔の高速移動を使おうとした時、ドラゴンが話しかけてきた。


「何もせんわ。落ち着け」


そう言われてユウは足を止める。


「せっかく来たのだろう。何か目的があったのではないか」


ドラゴンは見透かしたような事をユウに言ってくる。

ユウの背中に嫌な汗が流れる。

このドラゴンに何もかも知られているのではないかという気さえしてくる。

しかし、ドラゴンの言う事は正しかった。


(そうだ。手がかりになるかもしれないドラゴンに会えたんじゃないか!逃げてどうするんだ!)


何か質問しようとするが、うまく言葉を紡げない。大きな時計塔と、軍隊のような集団、ノットリ、憑神化実験。これらが今掴んでいる手がかりであった。


「大きな時計塔を使って何か怪しげな事をしている軍隊のような集団に心当たりはないですか?」


緊張で声が震えそうだったが、何とか絞り出して質問した。


「大きな時計塔と怪しげな連中?…悪いが分からんなぁ。長らく外へは出ていないのでな」


ドラゴンと時計塔と軍隊は何も関係が無かったのか、期待した答えは返ってこなかった。


「いや…怪しげな連中かどうかはわからんが、人間達が言う憑神とやらの動きは不自然か…」


(動きが不自然って、なんだ?憑神化実験に繋がるのか…?)


ユウは考え込んでしまう。憑神化実験という言葉は燃えて穴抜けになった文献から知っている。動きが不自然というのは、一体どういうことだろうか。実験によるものなのか、それとも別の何かなのか知りたかった。


「それは、どういう風に不自然なんでしょうか」


ユウの質問にドラゴンが少し考えてから答える。


「憑神はマナが足りないところに現れるようになっている。憑神がマナの枯渇した場所を潤して再生するためだ。だが最近、憑神の出現する場所が集中している。憑神が現れた場所はマナが回復するはずなのだが、同じ場所に何回も続けて憑神が現れている事、それが不自然なのだ」


ドラゴンの話を聞いて、憑神の出現場所がある程度コントロールされてしまっているように感じた。

憑神化実験が関係している、ユウはそう思った。


「それは、どの辺りかわかりますか?」


憑神が不自然に集中する場所がわかれば、また何かわかるかもしれない。次は場所を聞いてみる。


「ふむ…。北の大地と、ここから西の方にその気配があったな。まぁ、西の方は最近気配がなくなったが」


西の方は憑神化実験と書かれた本を見つけた旧軍基地跡の事で間違いないであろうとユウは思った。

北はまだ憑神が集中する場所があるようなので行けば何かわかるかもしれない。

そう思い更に細かくドラゴンに聞こうとする。


「北とは、具体的にはどこらへんになるのでしょうか」


ユウの質問にドラゴンは首をかしげる。


「何を言っている。お前の方が詳しいだろう」


「え?」


ユウはドラゴンが何を言っているかわからず困惑する。


「お前がこちらに転移する前にいたところであろう、憑神よ」


ユウは何を言われたのか理解できなかった。

ドラゴンの言葉が自分の中で繰り返し反響する。

憑神と。

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