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夢現〜眠りの鏡界  作者: ヴィトー・シームルグ


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眠りの追憶

ノットリの被害は無いが、最近になって山から猪型の魔獣である牙野猪(きばのじし)が下りてきて怪我人が出たらしい。


「この町には平地が少ないから結界は緊急時にシェルター付近に展開するだけなんだ。センサーで魔獣の反応があった所を早めに処理しているんだが、数が多くて討伐師が怪我をしたらしくてね。僕ら3人で討伐しないか」


熱海は立地的に結界を使いにくいが、その立地の影響で魔獣が侵入してくるルートが限られていた。

元々、魔獣自体が出にくい地域なのだが流石に多いので討伐師が疲弊しているようだ。


「いいと思う。どこら辺に魔獣が出没したっていう話なんだ?」


ユウが聞くとザンダが持ってきた地図を出して指差す。どうやらユウが知っている神社のさらに上に行った所のセンサーに反応があったらしい。


「ここからそんなに遠くない。ユウとショウが問題ないなら日が沈む前に片付けよう」


3人は役者を出て坂を上っていく。

急な坂だがその分早く目的地に着く事ができそうだ。


「急な坂で大変ですね!」


ショウはここまで長い坂に慣れていないようで少し大変そうだ。

ユウは慣れているので問題なく坂を上っていく。


「後少し上れば一旦平らな道に出ると思うよ。頑張れ少年!」


ショウを元気づけながらユウは坂を上っていく。

平坦な道に出てさらに進んでいくと山へ入るような道が見える。

山の入り口付近に神社の鳥居が見える。この神社よりさらに先にセンサーの反応があったようだ。

更に坂を上って行こうとした時、ザンダが2人を手で静止する。


「止まって!境内に何かいる」


神社の境内に牙野猪が徘徊しているのが見える。


「センサーの位置よりかなり町へ下って来てたんですね」


ショウのいう通りもう少し山道を上って行った先が目的地だった。想定より更に下ってしまったようだ。

このままでは神社が荒らされてしまう可能性があった。


「想定とは違うが、幸い山道よりは平坦で戦いやすい。打ち合わせ通りいこう」


ザンダの合図で3人は神社の境内に駆けていく。

炎魔の高速移動で一気に接近し、赤熱した炎魔の爪を振り抜く。

牙野猪は不意を突かれて斬り裂かれて倒れる。


一頭倒してすぐにユウは下がって距離を取る。他の牙野猪が気付いてこちらに来ようと地面を蹴る。

ショウは風の刃を放って牙野猪の足を止めさせる。


1頭仕留めて残り4頭。ショウが風の刃で牽制し、ユウが1頭ずつ炎魔で仕留めていく。

風の刃で止めきれない牙野猪がショウに近づいたらザンダが障壁で防ぎ、ショウの風の刃を当てて怯ませて、最後はザンダの炎を纏った剣で仕留めていった。


3人は難なく5頭の牙野猪を討伐する。憑神ではないからマナの結晶は出現しない。


「牙野猪は食用にもなるから持っていきたいけど、どうしようか」


牙と体が少し大きい魔獣の牙野猪は食用にもなるが、5頭は重すぎて持って帰る事ができそうにない。


「あ!それじゃあ凍らせておこうか。多分できると思うんだ」


そういうとユウは炎魔を凍らせた時の要領で、牙野猪に触れて氷に包むイメージをする。

うまい具合に牙野猪の1頭は氷漬けになる。


「いいね。これなら役所の職員が来るまで鮮度も保てそうだ。役所に連絡して来てもらおう」


ユウは残りの牙野猪を凍らせに行く。


「ユウさんは多芸ですね…。剣も自在に出せて、炎魔を使えて、マナクラフトに氷魔法まで…」


討伐師は大体1〜2種類くらいの魔法をメインに立ち回る事が多い。適性があるので、得意な事を伸ばしていくのが一般的だった。


「そうだね。ショウはまだまだ成長途中なんだから、色々できる事を増やしていってもいいんじゃないかな」


ザンダはショウがまだまだ成長できる事を確信していた。先ほどの風の魔法を使った立ち回りは素晴らしかった。更なる成長のためにユウの魔法はいい刺激になると思っていた。


「終わったぞ〜」


ユウが5頭を氷漬けにし終わったようだ。

3人は役所に連絡するために神社から出て少し坂を下る。近くにあった酒屋に入り、魔道具の通信機を借りて連絡する。

役所から運搬用のトラックで迎えに来てくれるそうだ。

3人は神社で待機する事になった。


ユウは懐かしそうに神社をみていた。


「せっかくなら神社を見ていかないか?」


2人に提案して神社の境内を見ていく。


境内の奥に進んでいくと大木が見えてくる。


(確か、この木に触れながら1周すると寿命が延びるんだっけ)


ユウが子供の頃はまだ観光客が全然来ていなかったので、学校から帰るときに友達と境内に入っていた。

木を何周したかわからないぐらいだったので、何十年寿命が延びたことになるのであろうか。


(確かこの神社って伝説があったような…。木に落雷があって神様が宿ったとか、白髪の老人が大木を切るのを止めたとかだったかな)


授業で調べた事があったが、子供の頃でうろ覚えだ。


(現実と違うのは観光客がいるかどうかくらいかな)


大木を眺めているザンダとショウから離れて、お守り等が売っているであろう所に行く。


「魔獣を退けて頂きありがとうございます」


ユウが振り向くと神社の神主なのか、神装束を着た白髪の老人が立っていた。優しそうな雰囲気を感じる。


「神社の方ですか。すいません、神社の中で戦ってしまって…」


牙野猪と戦っていた場所は最小限の範囲で済んでいたが、炎魔の高速移動で砂利が焦げていたり、牙野猪の血が流れているところもある。


「いいのですよ。あのままでは神社が荒らされてしまうところでしたから、助かりました。時に、この神社に何か思い出でもあるのでしょうか。とても穏やかな表情で何かを懐かしむように見て回っているように感じまして」


ユウは現実の神社、その子供の頃の記憶を思い出す。


「こことは違うところなのですが、昔似た場所に友人と行っていた事がありまして。なんだか懐かしくなってしまいました。いい所ですね、この神社は…」


ユウの言葉に老人は嬉しそうに微笑む。


「ありがとうございます。…何か求めてこの地へ来られたようですね。よかったらそこのおみくじを引いてみて下さい。よく当たると評判なんですよ」


老人が指差した先におみくじの箱があった。

目の端にザンダとショウが大木の方からこちらへ来るのが映ったのでそちらの方を見る。

視線を戻すと老人はいなくなっていた。


(…まぁ、魔法がある世界だ。霊的なものが存在しないわけないよな)


ユウは何となくさっきの老人が人ならざるものであった事を感じていた。

牙野猪が神社の近くに現れた事で神社から住民は一時避難していた。誰か残っているわけないのだ。


「なぁ、このおみくじ引いてみない?」


きっと何かあると思い、ザンダとショウを誘い3人でおみくじを引く。


(えーと、幼き記憶を辿れば得られる…か)


ショウは仲間を信じて精進すれば願いが叶うといった内容。

ザンダは得意を伸ばすことが全てを好転させる。成長は他人のものだけではない事を忘れるなという内容であった。


職員が到着して牙野猪の氷を解除するようにイメージすると氷は消えていった。猪はトラックに乗せて、皆で町へ帰るのだった。

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