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夢現〜眠りの鏡界  作者: ヴィトー・シームルグ


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15/27

侵入

炎魔のマナ結晶を譲る形になった事で、対策課から宿を提供してもらっていた。

今回も同じ宿に戻り、ベッドに入る。

不思議と眠気があり、すぐに眠れそうな気がする。

ユウはそう時間もかからず眠りにつくのであった。



「…戻ってきた」


現実の自分の部屋だった。朝の支度を済ませ、今日も大学に行く。

次の目的地が決まった事により、現実での生活も自ずと活力が湧いてくる。希望はまだ繋がっている。

ユウは今日も大学で変わらず過ごすのであった。


ユウの耳には入ってこなかったが、この大学に限らず色々な所で妙な噂が立ち始めていた。


「なぁ、最近変な夢の噂知ってるか?」


「変な夢?」


「何かから逃げて捕まる夢らしいけど、それからずっとどこかに押し込まれているような夢を見ちゃうらしいよ。身動き取れないし、周りもぼやけてよく見えない状態の悪夢なんだって」


「知ってる知ってる!隣のクラスの人がそれで休学してるとか」



時間は流れ、大学ですべき事が終わり家に帰る。

帰宅してからやるべきことを全て終わらせ、就寝の時間になる。


(ザンダに相談して、夢の世界での熱海への行き方を調べなきゃ…)


ユウは次の目的地での希望を抱いて眠りについた。





「…よし!まずはザンダを探しに」


現実から夢に切り替わる感覚にも慣れたものですぐに動き出す事ができるようになっていた。

夢の世界の宿屋のベッドから立ち上がった時、なにやら外が騒がしい事に気がつく。

住民の叫び声のような音が窓の外から聞こえる。

窓から外を見てみると、路上に倒れている人が見えた。

何事かと思い宿屋から飛び出て倒れている人のところへ向かう。


外に出ると1人の男が武器を持って暴れていた。

討伐師でなくても護身用の武器は持っているが、不慣れな魔法の使用や武器の使用で被害が拡大しているようだ。


ユウは何があったか周りの住民に話を聞く。


「あの暴れている人はどうしたんですか!」


「わからない!うめき声が聞こえると思ったら緑色の何かに体が覆われていて苦しんでいて、緑色の何かが無くなったと思ったら今度は暴れ出したんです!」


緑色の何かはすぐに検討がついた。ノットリだ。

ユウは暴れる住民に近づき炎魔の腕で掴む。

炎魔の炎がノットリを焼き尽くし、暴れていた住民はその場に倒れる。


「ユウ!」


ザンダが宿に向かって走ってきた。


「ノットリが出た!町で暴れてるみたいだ!」


ザンダも暴れる住民に遭遇して対処してきたようだ。


「この人の事もノットリが操ってました。まさかこの町にも現れるなんて」


ノットリから解放した住民を指差しながらザンダに答える。

2人が話している間も遠くで戦闘音が聞こえる。

ユウとザンダは戦闘が発生しているであろう場所に向かった。

道中何人かの暴れる住民がおり、都度対処していく。

討伐師ではない住民であっても魔法を使用する事ができるので、被害が拡大しないように無力化する必要があった。


「こんなにノットリが侵入してくるなんて、魔獣の接近に誰も気が付かなかったのか!?」


ユウは暴れる住民を鎮めながら戦闘が発生しているところに向かった。

魔獣が町の内部まで侵入する事は今までなかった。魔獣が町に侵入するまで誰の目にも触れない事はない。この事態が自然に発生した事とは考えにくい。


「町の結界は問題なく機能している。この状態で門以外からの侵入は無理だ。門には見張りがいるから魔獣の素通りなんてあり得ない」


町は外壁が無いかわりに、マナの結晶を原動力にした巨大な障壁である結界に包まれているので門以外から出入りは難しかった。

ザンダもこの不可解な状況が気になっていた。

今考えても答えは出ず、疑念だけが残る。

2人はノットリに操られた人々を無力化しながら戦闘音が激しい所に向かった。


戦闘音が激しい所に着くとそこは役所近くの大通りで、暴れている者が複数いた。

ユウとザンダは協力して1人ずつノットリを燃やし無力化していく。

全て対処完了したと思った時、まだ1人暴れている者がいたようで後ろから叫び声が聞こえる。

振り向くと大人ではなく、少年が暴れていた。

ショウであった。


「ショウ!?」


ユウは見知った者がノットリに操られているのを見て一瞬固まる。


「ユウ!!しっかりしろ!すぐに助けるぞ!」


ザンダがユウに喝を入れる。


「…っ!わかった!援護してくれ!」


ショウは落ちていた誰かの護身用のナイフを拾い、近くにいた住民に襲いかかった。


「させるか!」


ザンダがショウと住民の間に入り障壁で防ぐ。


「少し我慢してくれ!」


背後に回り込んだユウは炎魔でショウの背中に触れ、操っていたノットリを焼き尽くす。

ショウはその場で気を失い倒れるが、ユウが支えてゆっくり地面に降ろす。


「ショウ!大丈夫か!」


ユウはショウに呼びかける。火傷はあるが軽傷のようだ。

ザンダも駆け寄りバッグから火傷治しの薬を出そうとする。

しかし、その薬が使われる事はなかった。

薬を使う前にショウの傷がみるみる治っていき、ショウが目を開ける。

突然爆風のような衝撃が発生し、2人が後方に吹き飛ばされる。


突然の事で反応が遅れたが、ユウとザンダは受け身を取って体勢を整える。

何が起こったのか確認するためにショウがいた場所に目を向ける。


「一体何が起こった!?」


ユウはなにが起こったのか理解できなかった。何故火傷が何もしてないのに治ったのか、今の爆風のような衝撃は何だったのか。

目線の先のショウは自分の足でしっかり立っている。

こちらからでは横顔で、どこを見ているのかわからない。


「そんな、何故、急に…?」


ショウをみたザンダが狼狽えている。ザンダには身に覚えのある、何か良くないことがあったようだ。


「ザンダ!ショウに何があった!?」


ユウには何が起こっているのか分からなかったが嫌な予感がしていた。これまでも体験したことのある圧力を感じる。勘違いであって欲しいと願いながらザンダに聞いた。


「あれは、憑神だ。ショウが、憑神化してる…」


憑神は動物や魔獣、そして人に取り憑く事がある。憑神化すると例外なく凶暴になり手が付けられなくなってしまう。

ショウは2人の方に顔を向ける。いつもの茶色の目ではなく、金色になった目がこちらを見つめていた。

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