第7話 小さな願い
今晩も夜が更けるにつれ、痛みに苦しむ人たちの声が耳に響く。
私はそんな苦痛の声に導かれるように、静まり返った神殿の廊下を急いでいた。
窓の外では虫の鳴き声が聞こえ、月明かりが石畳を淡く照らしている。それでも神殿の中には眠れない人たちがいるのだ。
「うう、い、痛い——」
その声に引き寄せられるように、私は次の部屋へと足を向けた。
部屋へ入ると、トーマスさんがベッドの上でうずくまっている。
「大丈夫ですよ。すぐに痛みを取りますからね」
私はいつも通り、患者さんの腕をさすり祈りを捧げた。
「辛い痛みが取れ、一時的にでも苦しまずに済みますように」
ふわりと温かな白い光が灯り、金色の光の粒が舞い上がる。
何度見ても不思議な光景だった。
神様が本当に祈りを聞いてくださっているような気がして、私は少しだけ安心した。
これでトーマスさんが朝まで眠れると良いのだけれど。
「ありがとう、お嬢ちゃん……」
苦しそうだった表情が和らぐ。それを見られるなら、眠れない夜も悪くないと思えた。
私は小さく微笑み、次の患者さんの様子を見ようとして——
「ゆ、ユリウス……」
かすれた声に足を止めた。
振り返ると、苦しそうな顔で寝言を言うレオ様の姿が目に入った。額に汗を浮かべ、焦っているようだ。
苦しそうに名前を呼ぶ騎士様に、胸が少しだけ痛くなった。
きっと、とても大切な方なのだろう。離れている今も、心配でたまらないほどに。
そういえば、主様が前線にいるから早く怪我を治したいのだとおっしゃっていたのを思い出した。
私は彼の汗を拭い、「早く治りますように」と小さな声でつぶやいた。




