第51話 苦し紛れの反論
審判場を張り詰めた空気が支配した頃、アーサーは国王側の者たちにだけ分かるようにニヤリと口角を上げた。
……あいつ、面白がっているだろう。
「ここまでの報告に異議はあるか」
アーサーの問いに、ローレンツは拳を握り締める。 先ほど叱責されたばかりの彼は、軽々しく口を開けずにいた。
「……ないようだな。では、最初の証人を」
神殿で働いていた調理場の責任者や職員の証言で、セレナが一人で働かされていた実態が浮き彫りになる。
ローレンツの顔色は証言が進むほどに悪くなり、縋るような視線を総大司教アウグストに向けていた。そんな視線に気づかないわけがないのに、アウグストはセレナをじっと見つめているだけだった。
「違う! そんな証言は嘘だ!」
青ざめたローレンツは、助けを求めるように何度もアウグストへ視線を向ける。
「証拠など捏造です!」
耐えきれなくなったローレンツは、さらに声を荒らげた。
「あの娘は平民だから教育が足りなかっただけだ! 私はこれまで神殿のために……!」
必死に言い募るローレンツは、最後まで足掻くつもりらしい。
俺はローレンツを睨みながら、黙って聞いていた。そんな俺に視線を寄越したのはアーサーだった。
「……終わったか?」
早口で唾を飛ばしながら話していたローレンツが一息ついたところだった。
「では、こちら側の次の証言を聞こう」
アーサーは慌てる様子もなく、一つひとつ証言を重ね、ローレンツの主張を崩していく。
切り札は、まだ出さない。
それだけで、ローレンツは十分すぎるほど追い詰められていた。
そして俺は、次に呼ばれる証人へ静かに視線を向けた。




