第50話 断罪の時
今回の審判は、神殿という救いを与える場所で起こってしまったため、国を揺るがす大事件として、貴族を中心に多くの人々が集まった。
国と神殿は協力関係にあるため、国からは国王陛下と王子たちが、神殿からは教皇と数名の枢機卿、そして総大司教が見届け人として参加することになっていた。
訴えられたのは、辺境にある聖フィリア神殿で働いていた者たちと、聖フィリア神殿を任されていた上位司祭であるローレンツだ。
彼らは後ろ手で拘束され、審判場に入って来た瞬間からセレナを睨みつけていた。
きっと、あの者たちはこう思っているのだろう。「悪いのは、すべてセレナだ」と。これまでもそうやって、彼女に全てを押し付けて来た。その性質が簡単に変わるとは思えないほど、彼らは彼女に依存していた。
そして、彼女のおかげで聖フィリア神殿が成り立っていたことに、誰一人として気がついていない。愚かな者たちの集まりでしかなかった。
「それでは開廷する」
声を上げたのは、この国の宰相補佐を務めるアーサーという男だ。彼はレオンハルトの父である総長の右腕だったのだが、大きな怪我を負ってしまい、第一線からは退いていた。
しかし、体つきは昔のまま、熊のような大男で声も通る。
腕っぷしも強いから、こういったゴタゴタの場には向いていると判断されたのだろう。
「これから聖フィリア神殿で起こった出来事を、国が調査した報告書を読み上げる。最後まで声を上げずに聞くように」
アーサーは、淡々と報告書を読み上げる。彼の通る声は、部屋中に響き、聞き取りやすかった。一言一句、聞き直す必要がないほどに。
「異議あり!」
声を上げたのは、聖フィリア神殿の責任者である司祭ローレンツだった。しかし、彼はアーサーが読み終える前に声を上げてしまった。「さっき説明しただろう」と言わんばかりのアーサーの鋭い眼差しに、ローレンツは数歩後ずさった。
「……ローレンツ司祭、だったか。人の話はちゃんと聞け。私は何と説明した? お前のような輩がいるから、物事がスムーズに進まんのだ。次に同じことをしたら、弁論なんてさせないからな。有無を言わせず牢屋行きだ。いいな?」
ローレンツに向かって歩きながら説明し、目の前で「いいな?」と低い声で言われたら、誰でも脅されたと感じるのではないだろうか。彼が言っていることは正しいのだが、脅迫されているように聞こえるのは、彼の顔がレオンハルトよりも強面だからだろう。
ローレンツは冷や汗を流しながら、何度も頷いた。




