第49話 集結
審判の日を翌日に控えた日の昼、辺境の地からトーマス殿たちが証言のために城を訪れていた。今日は警備の観点からも、城に泊まってもらうことになっている。
そんな彼らを俺とセレナは城の裏口から出迎えた。
「トーマスさん、こんにちは! 皆さんも、お久しぶりです!」
降りてくる彼らに、明るく挨拶をするセレナ。トーマス殿は嬉しそうに微笑んでいたが、彼の後ろから降りてきたセレナを知る者たちは驚いた素振りを見せていた。
「お嬢ちゃん、元気そうじゃな。見ないうちに、随分大きくなったんじゃないかのう?」
「そうですか? レオ様たちに、良くしていただいていますので」
セレナはにっこりと自然な笑みを見せる。かつての消え入りそうな微笑みではなく、年相応な少女の笑顔に、皆がつられて笑顔になる。
「トーマス殿、ご足労いただきありがとうございます」
俺は丁寧に礼をした。彼らの証言は、セレナにとっても神殿の腐敗についても、大きな役割を果たすのだ。
「レオ殿もお久しぶりですなあ。レオ殿もお嬢ちゃんも元気そうで安心しました」
正装で笑顔を見せるトーマス殿に、俺は違和感を覚えた。神殿で治療していた彼ではなく、遠い昔に会ったことのある、威厳のある紳士に似ている……。俺は彼を知っているはずなんだ。
「……はい、お気遣いありがとうございます」
考えながら答えたせいで、疑問が顔に出てしまったらしい。
「ほほほ、何か気になるのであれば、お聞きくだされ」
「あ、いや、正装を見て思い出したというか……」
つい、本音が漏れ、後半を言い淀んだ俺に、セレナが心配そうに話しかける。
「レオ様、どうなさったのですか? トーマスさんの正装、とっても凛々しいですよね! まるで、とても身分の高い貴族様みたいです」
貴族様……か。たしかに、ビシッと決めたトーマス殿には威厳がある。そして彼の胸元には、一つの紋章が輝いていた。
……どこかで見たことがある。この紋章は——。
その瞬間、「貴族様」というセレナの言葉が頭の中で繋がり、俺はハッと思い出した。
「……はっ! まさか、ノルトヴァルトの? トーマス・フォン・ノルトヴァルト辺境伯閣下でいらっしゃいますか?」
「ほほほ、ご存知でしたか。神殿での儂は、ただの怪我人でしたからのお。お気になさらないでくだされ」
「し、しかし……これまでのご無礼をお許しください。大変失礼いたしました」
彼に調査を依頼したり、無茶なお願いをしてきた俺は、顔を青くしたまま、しっかりと頭を下げた。
「いえいえ、滅相もない! 儂としては、腐り切った我が領の神殿を調査してくださったこと、大変感謝しております。お嬢ちゃん……セレナ嬢にもレオンハルト殿にも大変お世話になりました」
お互いに深々と頭を下げているところに、ユリウスが現れた。
「……何をしているんだい? ノルトヴァルト辺境伯、よく来てくれた。証言台に立ってもらえると聞いている。よろしく頼むよ」
「はっ。かしこまりました、ユリウス殿下。儂の証言でセレナ嬢が助かるのであれば、儂はいくらでも話しましょう。辺境の神殿にいた領民たちにも証言をしてもらうべく共に参っております」
「ああ、感謝する」
断罪へ向け、証拠も証人も揃った。誰もが、明日訪れる審判の時を静かに待っていた。




