第46話 この身で守れるものならば
ガルザの神殿に教皇と枢機卿が立ち寄ると聞き、私は嫌な予感と共に神殿へ急ぎ向かった。
私が管轄している神殿の一つで王都に一番近く、あの事件を隠蔽した場所の近くだから、念のためだ。
「総大司教様、教皇様の護衛という名目で、王都から騎士が複数向かって来ております!」
「なんだと?」
「王城へ書類を届けた際に、文官たちの話が聞こえてきました。騎士団の団長と聖女が馬車で向かうから、馬車と護衛の準備を急がねばと」
「……ふむ、教皇の護衛というのは表向きの罠である可能性があるな。どちらにしろ、この状態で騎士まで増えるのは面倒だな」
「足止めしますか?」
「ああ、そうしてくれ。ゴロツキどもには十分な報酬を払うと言え。『決してしくじるな』とな」
「はい。……その、相手に怪我をさせない程度で——」
「殺さなければ構わん。聖女が同行しているのだ。多少壊したところで治せるだろう」
「……かしこまりました」
★★★
「か、囲まれています!」
「落ち着け! 俺が出る! セレナ、動くなよ」
俺はセレナの頭を優しく撫でてから、「バン!」と馬車の扉を大きく開けて飛び降り、すぐに閉めた。俺という存在に目を向けさせる戦法だ。
これで他の騎士たちが、この馬車を守りやすくなる。
もう一台の馬車からマティアスがこちらの馬車に向かって走ってくる。セレナは彼に預ければ安心だろう。
「おらぁ! かかってこい!」
馬車二台を囲めるだけの数がいるということは、見えている者たちの他にも敵がさらにいるかもしれない。
俺は木陰や草むらにも意識を向けた状態で戦っていた。
「危ない!」
思った通り、草むらや木の上からも攻撃が飛んでくる。
これはかなり手強いな。こちらは俺とマティアスを除けば、騎士が九人だ。
相手は見えているだけで二十人、見えていない者は五人……いや、六人はいるだろう。
そして、厄介なことに、『無痛の魔道具』を持っているようだ。
「負傷したら下がれ! 連中は斬っても向かって来るぞ! 気を抜くな!」
ゴロツキたちの数が半数になった頃、馬車に向かって『火筒』が投げ込まれた。
「やめろぉ————!」
駄目だ! あれは火薬と豆粒サイズの鋼鉄玉が大量に詰まっているんだ!
苦し紛れに野盗どもが使うことがあると聞いていたが、まさかこのタイミングで使ってくるとは!
「伏せろ————っ!」
俺は猛ダッシュして放り投げられた『火筒』に手を伸ばした。『火筒』を素手で掴み、ゴロツキたちが隠れていた草むらの方角へ全力で投げ飛ばす。
「……くっ、遅かったか!」
『火筒』は草むらへ届くよりも早く、空中で爆ぜた。俺は馬車の前に仁王立ちになり、少しでも『壁』となるために腕を広げた。
——ドドドッ!
——バターン!
俺は体で複数の鋼鉄玉を受け止めた。認識する前に地面に崩れ落ちる。セレナ……セレナは大丈夫だったのか?
彼女の無事を確かめる余裕もないまま、俺は意識を失ったのだった。




