第43話 総大司教の仕事【回想1】
王都から辺境までの神殿を統括する総大司教となったのは、四十歳の春だった。
若くして総大司教に抜擢された私は、多くの者から「神に選ばれた人物」と称賛され、羨望の眼差しを集めていた。
そんな私は、定期的に孤児院を訪問している。今日も『聖オーグ孤児院』に到着したところだった。
「アウグスト様だ!」
「アウグスト総大司教様!」
子どもたちに囲まれる。毎回、菓子などを配り、優しく声をかける。
「おお、元気にしていたかな? 今日は焼き菓子にしたから、皆で仲良く食べるんだよ」
「「「はーい!」」」
この聖オーグ孤児院は、私が司祭になることが決まった時に、私の実家である伯爵家に建ててもらったものだ。
あれから何十年も通い続けているからか、シスターたちとも顔馴染みで、懇意にしている。
「総大司教様のおかげで、今年も寄付が集まりました」
「それは何よりです。子どもたちが健やかに育つことこそ、神の望みですから」
シスターたちが私に深々と頭を下げる。
「もし、子どもたちの中に光魔法の才能を持つ子がいたら、ぜひ私に知らせてください。必ず立派な治癒師に育てましょう」
来るたびに、そう伝える。次代の治癒師を育てるのも、神殿で働く私には大事な仕事なのだと言い含めた。
子どもたちには懐かれ、シスターたちからは尊敬されている。
こうして慈悲深い総大司教として振る舞い続けることで、私の評判は揺らぐことがなかった。
人は、見たいものしか見ない。だからこそ、私は今の地位にいるのだ。




