第37話 王都、剣を持たぬ戦場へ
俺たち騎士団とセレナ、そして護衛対象の教皇と枢機卿は王都へ到着した。
城門を通り抜け、城の入り口で馬車から降りる。俺たちだけではなく、教皇や枢機卿の到着に、城の使用人たちも驚いたようで、誰もがバタバタと走り回っていた。
「セレナ、部屋を用意させてあるから湯浴みをしてゆっくり休むと良い」
「あ、ありがとうございます」
出発の日の早朝も働いていたセレナは、馬車にも慣れていなかったのだろう。目の下には隈ができており、あまり休めなかったようだ。
気になっていた俺は、コンラートを先触れとして馬で走らせておいたのだ。
俺とコンラート、そして教皇と枢機卿は、国王へ報告を兼ねて謁見することになっていた。
教皇たちが目立たないように、城の裏側から、騎士団の訓練場を抜けた先の応接間に案内すると、すでにユリウスが待っていた。
「レオンハルト、おかえり。教皇様、枢機卿、長旅ご苦労でした。まずは寛いでください。お茶を用意させています。レオンハルト、すぐに謁見へ向かっても良いのかい?」
「ああ、俺は問題ない。教皇様、よろしいでしょうか」
「はい、構いません。ユリウス殿下、よろしくお願いします」
ゆっくりと頭を下げる教皇たちに、鷹揚に頷いたユリウスは、応接間の入り口に立っていた側近に目配せをした。
「さて、謁見の前に……セレナは人のためには無茶をするくせに、自分のこととなると途端に無関心になるんだ。明日は聴取もあるだろうから、今日はゆっくり休ませたいね」
「ユリウス、俺も明日は立ち会うぞ」
「くくっ、過保護だねえ。まあ、構わないよ。神殿のことに関しては、全員が把握しておくべきだからね」
「我々も立ち会わせていただけますでしょうか」
教皇の言葉に、枢機卿もしっかりと頷いた。
「教皇様、それは構いませんが……」
少し困ったような顔をしたユリウスに、教皇は神殿の意志とばかりに説得してきた。
「今回の件については、我々も責任を持ってお答えいたします。もちろん神殿側の規律など、知りたいことがありましたら包み隠さずお話しいたします」
「それは二度手間にならず助かるが」
「現地をこの目で確認いたしました。これまでの報告はすべて事実です。セレナさんは神殿の患者たちを一人で支え続けておりました。我々も協力しましたが……神殿を救ったのは、紛れもなく彼女です」
セレナの行動は、神殿のトップである教皇たちの心まで動かしたようだな。
そこまで言ってくれるのであればと、ユリウスも納得したようだ。
「私が前線で出会った時から感じていた違和感は、正しかったようだね。私は彼女を尊敬するよ」
「ユリウス、俺は陛下が何とおっしゃろうと、セレナを守る発言しかしないからな」
「あはは、ぶれないねえ。もちろん、構わないさ。私としても、セレナは守られるべきだと思うし、これまでに負った心の傷が少しでも癒されることを祈っているよ」




