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第36話 想いを託して

「トーマス殿、ひとつ頼みがある」


 俺は、最後まで残ってくれていた彼に声をかけた。


「レオンハルト殿、儂なんぞに頼みとな?」


「ああ。これから王都で、神殿で起こった出来事についての話し合いや断罪が行われるだろう。その時に、証言をしてもらいたいんだ。俺は、セレナを近くで見守ってきた貴方に頼みたい」


「それはもちろん、喜んで。お嬢ちゃんが、どれだけ皆を救ってきたか……儂らが黙っていては罰が当たるというものじゃ」


 トーマスは大きく頷き、凛々しい顔つきで快諾してくれた。


「我々にも証言をさせてください」


 教皇と枢機卿からの申し出に、コンラートたちは驚いている。それもそうだ。神殿のトップが、セレナを擁護すると言っているのだからな。 

 

「……助かる。これから先は、俺たちが責任を持って罪を裁かなければならない。セレナは理不尽な扱いを受けながらも患者に寄り添い、多くの人々を救ってきた。助けられた者の一人として、俺は責任を持って彼女を守りたいと思っている」


「レオンハルト殿、どうぞよろしくお願いします。儂らには、証言ぐらいしかしてやれんからのお」


 周りの者たちが頷き、俺に視線が集まる。こんなにもセレナの味方がいたとは。

 彼女には「頼ってほしい」と言っておきながら、俺自身もまた、一人で抱え込もうとしていたらしい。


「ああ。こちらこそ、よろしく頼む」 


 俺たち騎士団は、セレナと教皇たちの護衛を務めながら王都へ向けて出発した。


 最後まで作業を手伝ってくれていたトーマスたちは、俺たちが見えなくなるまで手を振ってくれていた。

 セレナもまた、彼らが見えなくなるまで手を振り続けていた。

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