第32話 自然な協力体制
夜明け前、人の気配に目覚めた俺は、セレナの寝ているベッドへ視線を送る。
すると、目を覚ましたセレナがガバッと体を起こした。きっと優しい彼女は「治療の途中で寝てしまった……!」と慌てているのだろう。
まだ外は薄暗いのに、部屋の外には患者が並んで待っているのが見えた。重傷者は昨日のうちに、セレナが治療してくれていた。今は比較的軽傷の者たちが多かった。
彼らはセレナが訪れるのが待ちきれず、また、彼女が移動に時間を取られなくて済むように、自発的に並んでいるのだ。
セレナは当然のように、髪を後ろで一纏めにしながら患者たちのもとへ向かおうとする。
「まだ休んでいていい」
俺の低い声にも物怖じしないセレナは「待たせたくありません」と強い意志のこもった視線を俺に向ける。
「昨日もそう言って倒れるように眠ってしまっただろう」
「ですが、ゆっくり眠れたおかげで、もう動けます」
困った俺は、マティアスに視線を向けた。彼もセレナの物音で起きており、俺たちの会話を聞いていたのだ。
「昨日より魔力は回復していますが、無理はしないでくださいね」
マティアスは苦笑いしながらも、体調に問題ないことを確認してから釘を刺す。
セレナは大きく頷いてから、コップ一杯の水を飲み、礼拝堂に向かって朝の祈りを捧げる。患者たちも祈りの姿勢をとり、神に感謝しているようだった。
祈りを済ませたセレナは、入り口に向かって声をかけた。
「治療を始めます。一人ずつ、順番に入っていらしてください」
患者たちは並んだ順番で部屋に入ってくる。
「セレナちゃん、早朝から悪いな。どうしても息子たちのことが気がかりで、早く顔を見て安心したいんだ」
「まあ。すぐに治療を始めますから、安心してくださいね。大丈夫ですよ」
笑顔というよりは優しい微笑みをうっすらと浮かべたまま、セレナは患者に治癒魔法をかける。白い光と金の粒が舞う、幻想的な彼女の姿は、相変わらず美しい。
「傷は塞がったようですね。痛みはどうですか?」
「ああ、ああっ! 全く痛くない……腕が動くよ! ありがとう、本当にありがとう!」
セレナは微笑みを返し、次の患者を診る。そうしているうちに、あっという間に昼になっていた。
「セレナ、午前の治療はここまでだ」
「もう、こんなに時間が……レオ様、もう一人だけ——」
「駄目だ。セレナも食事は大事だし、患者たちもしっかり食わなければ、治るものも治らないだろう?」
「……はい。続きはまた午後に」
「ああ、もちろんだよ、セレナちゃん。俺たちも食事を摂ってから戻ってくるからね」
患者たちが「そうだ、そうだ」と頷く。おかげで、セレナも食事を摂る気になってくれたようだ。
そして、セレナと一緒に外へ出ると、セレナは立ち止まり驚いた顔をしてみせた。
「わあ……」
神殿の庭先や広場には、大鍋がいくつも並び、湯気が太陽の眩しい昼の空へ立ち上っていた。




