第25話 王への報告
レオンハルトから受け取った嘆願書を懐へしまった私は、急いで国王である父の元へ向かった。
王国と神殿は良好な協力関係を築いている。だが、レオンハルトが療養していた辺境の神殿にだけは、不正の疑いがあった。
そのため私は、彼に療養を兼ねて内々に調査を命じていたのだ。
セレナのおかげで早期に復帰したレオンハルトは、信頼できる協力者も得ていたようで、調査は大きく進展していた。
「入れ」
父の執務室の扉を叩くと、すぐに応答があった。
「失礼します。今、お時間よろしいでしょうか?」
「ユリウスか。そんなに堅苦しい言葉遣いはやめてくれ。執務室ぐらい親子の会話をしたいのだがなあ」
「陛下、仕事の話ですので」
「せめて父上と呼んではくれぬか?」
「……はあ。では父上、こちらにお目通しを願えますか」
「ふむ、良かろう。どれどれ……嘆願書とな?」
「はい。レオンハルトが滞在していた、辺境にある神殿で知り合った仲間からだそうです」
「ほお……」
陛下は三度ほど読み返すと、小さなため息を吐いた。
「ユリウスが言っていた通りだったか。この者たちは証拠も押さえてあるとのことだが、信用に足る者だろうか?」
「あのレオンハルトが任せたのですから、信用に値するのでしょう。嘆願書をしたためた者も、なかなかの知恵者のようですし」
「何か気になることがあったのか?」
「どうやら現在の神殿では、手紙すら検閲しているようでして。この嘆願書は、二重封筒に隠されて届きました」
「……確かに、確実にレオンハルトへ手紙を届けようと策を講じたわけか。検閲を行うほど追い詰められていた、という証左でもあるな。後日、神殿の件が解決した暁には、何か褒美を取らせてやってくれ」
「かしこまりました。それでは、神殿の本格的な調査に移りたいと思います。枢機卿や教皇にも先に話を通しておきますか?」
「教皇や枢機卿たちを呼んで、その前でレオンハルトが謁見・報告させる形が良さそうだな。記録にも残せるし、教皇たちには貸しを作れるだろう」
「かしこまりました。すぐに手配してもよろしいでしょうか?」
「……あまり脅してやるなよ?」
「もちろんです。少々驚いていただくだけですよ」
にやりと黒い笑みを浮かべる私に、陛下はやれやれといった様子で続ける。
「ユリウスに任せた仕事だから、口出しはせぬよ。神殿側とレオンハルトの折り合いのつく日を選んで進めておくれ」
「かしこまりました」
やっと頭の痛い件が片付きそうだとほくそ笑みながら、私は足取り軽く、自分の執務室へ戻った。そして、急いで各所へ手紙を認める。
神殿を裁く舞台は、もう整い始めていた。




