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第24話 トーマスからの手紙

 セレナの思わぬ副産物で怪我が治ったトーマスたちは、不自由のない体の動きに感激しながら調査を進めていた。


「お嬢ちゃんのおかげで、膝の古傷まで調子が良いわい」


「俺もだ。あ、トーマスさん。二重封筒、できあがりましたぜ」


「おお、仕事が早い。ありがとう、助かるよ」


「セレナちゃんのためなら何でもやりますぜ」


 神殿では、セレナの不在によって患者たちが限界を迎え混乱していたため、調査そのものは難しくなかった。

 しかし神殿側も、不正や不手際を隠蔽するため、外へ出す手紙などに厳しい検閲をかけ始めていた。


「俺の家族への手紙も検閲で通してもらえなかった。当たり障りのない内容しか通らないだろうな」


「表向きは、レオンハルト殿への、一緒に過ごした日々を懐かしむ手紙にするしかなかろう。二重封筒の隠してある方には、国王宛の嘆願書を入れる。普通に送れば揉み消されて終わりだろうからのお」


「そうするしかないよな。俺たちはセレナちゃんのおかげで治っているから動けるが、怪我が悪化している者も多いと聞いたぞ」


「そうだな、もう動くべきだろう」

 

 トーマスたちは「このままでは駄目だ」と決意し、皆で調べた不正の証拠を隠してある場所や、患者たちの現状、セレナが前線に送られた経緯などを書き留め、封をして検閲に持って行く。


「神官のお兄さん、これを友(・)人(・)の(・)レオンハルト殿に出したいのだが、頼めるだろうか?」


「……中身を確認しても?」


「ん? 最近では手紙を送るのにも検閲が入るのかい?」


「あ、いえ、その、上からの命令でして……」


 この神官は、半年ほど前にこの神殿へ配属されてきたばかりだった。そのころに仕事で失敗をしたのだが、落ち込んでいた際、トーマスに話を聞いてもらい、励ましてもらった過去があった。それ以来、彼はトーマスを祖父のように慕っているのだ。


「そうかい。無理はしなくていいからのお。そなたが読んで、問題ないと思ったら出してくれるかのお?」


「は、はい。今、この場で確認しても良いですか? 午後の便がこの後に出ますので」


「ああ、見てくれて構わない。久々に友と文通ができることが楽しみなんだ。助かるよ」


 トーマスは外側の封筒だけは、あえて封をしていなかった。そのため神官は、そのまま中の手紙を読み、戻してから封をしてくれた。


「この内容なら大丈夫ですよ。午後の便で出しておきますね」


 こうして、トーマスの出した手紙は、無事に配送されることになったのだった。


 ★★★


「レオンハルト、私の方に君宛の手紙が届いていたぞ」


「ああ、悪いな。……トーマスからだ」


「神殿で同室だったという?」


「そうだ。……だが、大した内容は書いてないな」


「——ん? 手紙はたった一枚か? ……妙だな。この封筒、手紙一枚にしては厚い」


 俺は封筒を持ち上げると、確かに厚みがあった。


「こっちが本命か?」


 丁寧に封筒を解(ほど)いていくと、もう一枚、手紙が出てきた。


「……陛下宛か」


「ああ、嘆願書だね」


 嘆願書には、神殿で起こったことが克明に書き綴ってあった。そして、神殿が限界を迎えていることも。


「レオンハルト、これは私が預かっても問題ないかい?」


「ああ、もちろんだ。先に話を通しておくのか?」


「そうだ。表に出す前に、こちらから調査をする必要もありそうだからな。証拠の在りかも分かっているし、これ以上、一般の民たちに無理はさせられない」


「動く時は教えてくれ」


「ああ、もちろんさ」


 にやりと何かを企んでいるような笑みを浮かべたユリウスは、そそくさと陛下の元へ向かうのだった。

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