第21話 願いよ、届け
急がなきゃ、レオ様が死んでしまう! 急がなきゃ! 私が行かなきゃ! 私の力をすべて注ぎ尽くしてでも、レオ様を助けなきゃ——。
必死に彼の元まで辿り着いた私は、レオ様の爛れた左手を両手で包み、祈りを込める。
『レオ様が助かりますように。レオ様の怪我がすべて治りますように。レオ様の命が連れて行かれませんように——!』
霞んできた視界を鬱陶しく感じ、ギュッと目を瞑った私は、強く、強く祈り、レオ様の左手を握りしめる。
すると、またあの感覚があった。体の底から熱く、大きな力が湧き上がるような感覚だ。
私はさらに強く祈った。いや、強く強く願った。
『神様……どうか、お願いします』
私はありったけの魔力をレオ様に注いだ。どうか死なないで。母さまたちのように、私を置いていかないで——。
★★★
魔力を使い果たしたのか、セレナはその場にパタリと倒れた。
慌ててその頭を支えたのは、レオンハルトだった。
「……また、無茶をする。でも、ありがとうな、セレナ」
セレナに向かって小さくつぶやいたレオンハルトは、軽々と彼女を抱きかかえ、こちらに向かって歩いてくる。
「ユリウス、『根源』は消滅したぞ。これで安心して——」
「馬鹿者! お前、一人で突っ込んだな! 肝が冷えたぞ!」
急に怒り出した私に、レオンハルトが眉を下げて小さく頭を下げた。
「わ、悪かった。謝るから怒らないでくれ。あのまま俺まで退避したら、セレナが『根源』に近づく羽目になると思って……焦ったんだ」
レオンハルトにとって、それほどまでにセレナは大事なんだな。
それでは仕方ないかと、私は大きくため息を吐いた。
「もう二度と、そんな真似はしないでくれよ。お前を犠牲にして助かったって、皆嬉しくなんてないんだからな」
「ああ、分かった。その、今はそれよりも、セレナを落ち着けるところに寝かせてやりたいのだが……」
遠慮して、少し控えめに希望を伝える大男に、つい笑ってしまった私は、幼馴染の願いを叶えてやることにした。
「私のテントに寝かせると良い。解決した……と思いたいが、他にも『根源』がないか確認して、残っている魔物を殲滅してから帰還する」
「「「はっ!」」」
レオンハルトの後ろにいた騎士たちが、一斉に動き出した。
彼のまとめる騎士団は、実に見事に足並みが揃っているのだ。そして、彼が皆まで言わずとも、やるべきことを先回りして終わらせてしまう。
「良い部下を持っているな」
ぽつりとこぼれた独り言に、レオンハルトが振り向く。
「ああ、本当にな。アイツらがいる限り、王国の騎士団が負けることはないぞ」
ニカッと笑ったレオンハルトは、嬉しそうに答えるのだった。




