第15話 前線にて
テントの中の怪我人をすべて治療してもらえたおかげで、前線には余裕が出てきていた。
セレナの光を一緒に浴びていた私やマティアスは、その理由がはっきりと分かっていた。
「殿下、お変わりありませんか」
「良い意味でならあるな」
「……私もです。昔痛めた膝の痛みまで消えました」
「私の方も、疲れていた体が嘘のように軽い」
「やはり。騎士たちの動きも明らかに違いました」
「これは……神殿に帰すわけにはいかなくなったな」
「ええ。神殿には不審感もありますし、調査は必要かと」
「ああ。レオンハルトを潜ませてはいるが、あの傷では当分動けまい。どちらにしろ、スタンピードが落ち着いてからだな」
「そうですね。まずはスタンピードを終わらせなければ」
「根源さえ見つかれば終わるのだがな」
「まだ場所が掴めませんからね」
「猛者を集めて、部分的にでも押し進めるようにするしかないだろうな」
「しかし、それでは守りが疎かになってしまいませんか」
「そうなのだが……可能であれば皆が回復している今こそ、行動を起こしたいと思ってしまうのだ」
「確かにそうなのですが……。レオンハルト殿がお戻りになれば解決するのでしょうけどね」
「現実的ではないことを考えても仕方ない。……妙だな」
「どうかなさいましたか」
「怪我人が運ばれてこない。テントの外が静かすぎる。様子を見に行くぞ」
「お供いたします」
私とマティアスは、待機していたテントの幕を上げて外に出た。
前線からそう離れていないはずなのに、周囲は不気味なほど静まり返っていた。
「……騎士たちはどこだ?」
「誰一人いませんね……」
治療師がいるはずのテントにも、誰もいなかった。セレナすらいない。まさか、前線に向かったのか!?
「マティアス、急ぐぞ!」
「はいっ! 急ぎましょう」
マティアスも異変に気づいたようだった。私たちは珍しく、慌てた様子で最前線に向かって走り、セレナたちを探すのだった。




