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雑用ばかりの聖女見習いですが、聖女に覚醒したらスタンピードの前線へ送られました~人の痛みに敏感な、静かな聖女の物語~  作者: 月城 蓮桜音


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第14話 優しい味方

「その通りだ。君はこの国で、誰よりも治癒力の高い聖女だろう。たくさんの聖女を見てきた私が言うのだから間違いない」


「そうですか……」


「嬉しくないのかい?」


「たくさんの人を救えるという意味でなら、とても嬉しく思います。他にも怪我をなさった方がいらっしゃるのであれば、治療したいのですが……」


 曖昧な答えに、引っかかりを覚えつつも、怪我人を治療してくれると言うのだから、そちらを優先することにした。

 残りのテントは三つ。騎士団専属の治癒師たちにも声をかけ、セレナの治療を見届けることにした。


「素晴らしい! 聖女様は聖女になられてから、どれくらいの訓練を受けられたのですか?」


 治癒師の一人が、興奮気味に質問している。距離の近さに驚く素振りを見せたセレナの前に立ち、治癒師を少し押し退けてから彼女に答えを促した。


「あ、あの、申し訳ありません。私は……昨日の夜に覚醒したばかりなのです。なので、訓練は……」


「大丈夫ですよ、聖女様。あなた様の治療はとても素晴らしいものです。豊かな魔力をお持ちですから、放出する魔力量をほんの少しだけ調整する練習をなされば、十分かと思われます」


 治癒師をまとめている治癒師長のマティアスが、セレナを怖がらせないよう優しく諭していた。


「そうですか、ありがとうございます」


「よろしければ、私がお教えしましょうか?」


「……よろしいのですか?」


「もちろんです。私でよろしければ、何でも聞いてくださいね」


「あ、あの、私は『痛み』しか取れない聖女見習いだったのです。なので、どうしてこんな力を授かったのかと……」


「……痛みを取ることができたのですか? 見習いの身で?」


「はい、痛みだけしか取れませんでした」


 治癒師たちは驚きすぎて声が出ないようだ。

 それもそのはずだ。見習いで『痛み』を消せるなんて、聞いたこともない。


「聖女様、その『痛み』は、病人のものも取れましたか?」


「はい。怪我人だけではなく、自分の胃の痛みや頭痛も取ることができました」


 ……自分の不調の痛みを取ってまで働いていたのか? 普通なら、痛みを取り去って無理をするのではなく、ゆっくり休むものだろう。


「はっ! すみません、ごめんなさい!」


 ビクッと体を震わせた彼女は慌てて謝りだした。マティアスが驚いた素振りすら見せず、穏やかに話しかける。


「大丈夫ですよ、聖女様。神殿ではそんなことで怒られていたのですか?」


 マティアスは『何を』怒られていたのか言及しなかった。何に怯えているのか分からないのだから上手くは聞き出せないと思っていたが、彼は物柔らかい雰囲気で、彼女の言葉を待っていた。


「は、はい……。私の力は……魔力までも神殿のものだから、自分に使うことは許されないと。神殿に入った時に約束させられたので、使うと怒られます」


 言っていいことなのか分からないけれど、といった様子で話し始めたセレナには、今まで味方がいなかったのかもしれない。


「スタンピードが終わるまでは、聖女様にも前線で一緒に治療にあたってもらうことになります」


「はい、大丈夫です。そのために来たのですから」


 急にセレナの瞳が力強く前を向いた。自分のことに対しては曖昧な話し方をするのに、治癒することに関しては、まるで『使命』を帯びたかのような意気込みを見せる。


 そんな不思議な聖女を、治癒師たちは笑顔で受け入れた。

 それはきっと、セレナにとって初めて出会う『優しい味方』だった。

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