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雑用ばかりの聖女見習いですが、聖女に覚醒したらスタンピードの前線へ送られました~人の痛みに敏感な、静かな聖女の物語~  作者: 月城 蓮桜音


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第13話 奇跡

 涙するアレンに慌てた私は、彼に声をかけた。


「おい! 大丈夫か!?」


 何事かとアレンの胸に目をやると、(あばら)の骨が見えるほどの怪我だったはずなのに、綺麗に塞がっていたのだ。

 ……奇跡でも起きたのか? 彼女は『痛みを取る』と言ったはずだ。


「ああ、良かったです。ちゃんと治せましたね。他に痛いところはありませんか?」


 彼女がそう言った瞬間だった。


「俺の怪我も治ってるぞ!」


「お、俺もだ!」


 なんと、テントの中にいた怪我人全員の傷が塞がっていたのだ。

 このテントの怪我人は、全員が重症患者だったはずだぞ。


「君、ちょっと来てくれるかい?」


 私は慌てて自分のテントに彼女を促した。

 あのテントには、指揮官クラスの者も複数いる。私が直接指揮を執らなくとも大丈夫だろう。


「そこへ座ってもらえるか? まずは……君への無礼を許してほしい」


 私はしっかりと頭を下げる。彼女が慌てている気配がするが、私の采配ミスで怪我をさせてしまった者たちを治療してくれたのだから、礼の気持ちも込めて、丁寧に下げ続けた。


「だ、大丈夫ですから。私のような下賤な者に、王子様が頭を下げてはだめです!」


「……君は聖女だろう? 下賤な者などでは決してない」


「あ、その……。私は孤児から聖女になりましたので……」


 なるほど、恐らく神殿でも蔑まれていたのだろう。彼女は自分の素晴らしさを理解していない。それは、誰にも教えてもらえなかったからに違いない。


「君の名前を教えてくれるかい?」


「……セレナです」


「セレナ、君は聖女として、素晴らしい力を持っていることを自覚しているかい?」


「先輩の聖女様たちは、一度で怪我を完治させることはできませんでした。だから、もしかしたら凄いのかなって……」


 セレナは、自分がどれほどの奇跡を起こしたのか、まだ理解していないようだった。

 

 だが、この少女の力は間違いなく、この国の未来を変える。

 

 ――私はそう確信した。

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