表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑用ばかりの聖女見習いですが、聖女に覚醒したらスタンピードの前線へ送られました~人の痛みに敏感な、静かな聖女の物語~  作者: 月城 蓮桜音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/16

第12話 前線の惨状

 魔物と兵士たちの血の臭いが、森と土の匂いに混じって漂う。 スタンピードの前線では、今日も大量の魔物が兵士たちを傷つけ続けていた。


「殿下! このままでは、王都に魔物がなだれ込んでしまいます!」


「分かっているっ!」


 剣を振りながら返事をするが、スタンピード発生から三ヶ月以上が経っている現場では、限界を迎えようとしていた。

 私の近衛騎士であるレオンハルトが前線を離れてからというもの、騎士や兵士たちの隊列が崩れやすくなり、的確な指示を出せる者たちも怪我で前線から退いているのだ。


「殿下、馬車が向かってきているようです! 物資の補給でしょうか」


「何だって? 私が迎えよう」


「はっ!」


 物資は先日も届いたばかりだ。レオンハルトが無理して戻ってきたのだろうか? あの傷では、まだ起き上がることすら難しいはずだ。

 本当に戻って来たのであれば、追い返さなければと思いつつ馬車を見つめる。


「お手を」


「……ありがとうございます」


 何と、馬車から降りて来たのは、まだ幼い少女だった。年の頃は……十歳か、その前後だろうか。


「申し訳ありませんが、怪我人のいるテントはどちらになりますでしょうか?」


 私が王族であることを知らないらしい少女は、名を名乗るでもなく、怪我人のテントへ向かおうとしていた。と、いうことは……。


「お嬢さんは聖女様でいらっしゃるのか?」


「はい、私は……先日、聖女として覚醒しました。お役に立てるよう励みますので、テントの場所を教えてください」


 きょろきょろと辺りを見渡して、悲しそうな顔つきになったのは、辺り一帯に飛び散った血飛沫(ちしぶき)のせいだろうか。


「分かった。テントへ案内しよう」


 私は彼女に背を向け、早足でテントに向かう。本当に聖女なのであれば、今は怪我人を少しでも回復させてもらえると助かる。

 年齢や神殿の対応など気になることも多いが、今はそれどころではない。

 ここは前線だ。一人でも多くの兵士が動けるようにと願わずにはいられない。さすがに経験の浅いであろう小さな聖女が、救護テントの者たちを完治させられないことなど考えていないが、それほどに現状は厳しく、こんなにも小さな少女にまで縋りたくなるほどなのだ。


「着いたよ。私が手伝うことはあるかい?」


「重傷の患者さんはどちらか分かりますか? 私は『痛み』は完全に取ることができます。まずは苦しみから解放して差し上げたいのです」


「何だって……? いや、分かった。案内しよう」


 それが本当であれば、彼女は救世主だ。そんな能力の持ち主を、神殿は手放したというのか?

 疑問を抱えながらも、私は重傷者のテントへ彼女を連れて行く。


「ここだ。かなり酷い裂傷もあるが……大丈夫だろうか?」


「問題ありません。いつも見ていますから」


 いつも見ているだと? そんな仕事をしていたとは……にわかに信じがたいが、それが本当なら安心して任せられる。

 そんな矛盾する心持ちで彼女がしゃがみ込んだのを眺めていた。


「大丈夫ですよ、今、痛みを取りますからね」


 痛みで唸り声を上げつつ暴れる騎士の腕をさすり、(あばら)の骨が見える胸辺りに手をかざして祈り始めた。その瞬間——!


 騎士の周りを白い光が覆い、金色の粒が舞っている。

 幻想的な美しい輝きに、目を細めつつもしっかりと見つめた。


 すぐに光は収まった。

 先ほどまで苦痛に顔を歪めていた騎士アレンが、静かに涙を流していた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ