第10話 真実と覚醒
セレナが激しく発光した次の瞬間、俺はあまりの眩しさに目を閉じてしまった。目を閉じていても温かな光を感じる。
やっと光が収まったのは、それから数分ほど経った頃だった。
「何が起こったんだ? なあ、セレナ……おい、セレナはどこに行ったんだ?」
「いない! お嬢ちゃんはどこじゃ!?」
「あの嬢ちゃんのことだ。仕事に戻ったんじゃないか?」
確かにその可能性は高い。だが、治療後に何も言わず立ち去るような娘ではない。
「お嬢ちゃんの仕事の邪魔をしちゃ悪いからなあ。それに、誰かが痛みを感じた時には必ず来てくれるんじゃし、お嬢ちゃんがいなくなった理由も分からないのだからそっとしておこう」
トーマスの言葉に、部屋の中の怪我人が皆頷いた。
外はすでに暗く、俺たちはそのまま眠りについた。
★★★
翌朝、誰一人として痛みで目を覚まさなかったことに疑問を感じた俺たちは、無言のまま考え込んでいた。
「レオさん、今日は顔色が良いのお。よく眠れたかい?」
「ああ、珍しく朝まで目が覚めなかった。皆が誰一人として痛いと声を上げなかったからだろうな」
俺は訓練を受けているせいで、人の声で目が覚めてしまうのだ。
「な、なんと……。昨晩は誰も痛みが出なかったと言うのかい?」
周りを見渡すと、皆が顔を見合わせながら頷いている。
「ああっ!? な、ない! き、傷が無いぞ!」
誰かが声を上げた。その瞬間、トーマスが低い声で唸るように話し出した。
「静かに! 良いか、声を上げるんじゃない。本当に治っていたりしたら、お嬢ちゃんが大変な目に遭うことが、目に見えているじゃろうが!」
確かにトーマスの言う通りだ。にわかに信じられない俺は、包帯の隙間からそっと傷口を覗き見る。
——すると。
そこにあった傷口は、綺麗に塞がっていた。抉られるように深い傷だったはずだ。そんなすぐに治るような傷ではなかったのに、怪我をしたことが信じられないほど、綺麗に治っていた。
酷くなっていた肩甲骨の床ずれまでもが完治しているのだ。
俺は息を呑んだ。
「覚醒しちまったのか……」
「覚醒?」
「聖女見習いは、聖女に覚醒する可能性がある者たちなんだ。そして、献身的に看病してくれていたお嬢ちゃんだ。いつかは聖女として覚醒するとは思ってはいたが……」
「なるほどな。トーマスさん、頼みがあるんだが良いだろうか」
「どうしたんだい、かしこまって」
「俺は怪我が治ったのであれば、前線に向かわなければならない。しかし、この神殿でやり残したことがあってな」
「不正の証拠かい? それとも、いじめについてかのお?」
「両方調べられるだろうか?」
「俺たちも手伝うぜ!」
「どうせ服や包帯の上から魔法をかけるふりをするだけだし、寝てりゃ怪我が治ってることもバレないだろうしな!」
セレナに世話になったこの部屋の患者たちは、皆が大きく頷いてくれた。
「任せてくれ。両方しっかりと調べると約束しよう。お嬢ちゃんがもっと大事にされる神殿に——」
「しっ! 誰か来る」
入り口が開くと、聖女たちが入って来た。今日の巡回の時間らしい。その中に、セレナがいないことに気がついた俺は、できるだけ目線を合わせないようにしながら目の前に来た聖女に声をかける。
「セレナを知らないか。朝から見かけないんだが」
「あの子なら、早朝にスタンピード前線へ送られましたが」
「……なんだって?」
トーマスが視線で落ち着けと言っている。これから調査もある。今、大きな声で怒鳴るわけにはいかなかった。
俺は聖女たちが出て行ったのを確認してから、トーマスたちと、今後の動きを最後まで念入りに打ち合わせるのだった。




