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四神戦隊レイジュウジャー  作者: 沢木佑麗/雲月
第二章 カーマイン王国編
19/103

『銀狐』

 カーマイン王国にやって来て4日目の朝が来た。

 宿の食堂でなんとなくおざなりに食事をとっていた大牙を除くレイジュウジャーたちは、ふと、昨日よりも客が多いことに気付いた。それも、冒険者や旅の商人という感じのものではなく、遠方からわざわざこの都に物見遊山にやってきたという雰囲気の者たちなのだった。

 その者たちの、みるからにはしゃいだ様子の会話を漏れ聞くに、《パレード》だの《一目ご尊顔を》だのという単語が耳に入り、三人は顔を見合わせた。

 ちょうど追加のパンが運ばれてきたので、給仕女を引き止め、龍児が尋ねた。

《あの、この都で何か行われるのですか?》

 すると、相手は呆れたように彼らを見、

《あんたらもそれが目当てなんじゃないのかい。三日後は、この国のお姫様のお誕生日なんだ。それを盛大に祝う祝賀パレードが街中を練り歩くんだ。今日から街の中も飾りつけやら何やらで大忙しさ。お姫様の美しさは国中で大評判だからね。一目見ようと王都以外からわんさと人がつめかけているのよ》

 そして別のテーブルから声がかかり、女はさっさと行ってしまった。

「パレードか…それはまずいな」

 龍児が食欲をなくしたようにフォークを置き、呟くように言った。

 朱音がスープの残りにパンをなすりつけながら問い返した。

「なんでよ? お姫様だってずっとお城の中に引きこもってるんじゃつまらないじゃない」

「パレードもそうじゃが、これだけ人が増えては、探し出したい対象がますます埋没することになりはせんかのう」

 と玄人が大牙ほどでないにせよ、芋のチーズ焼きを二皿と厚切りベーコンを三つほどたいらげながら言った。

「そのこともだよ、クロト」

 龍児は顔の前で手を組み合わせて同意した。

「この街はこれまでの街とは比べ物にならないほど広いし、人も多い。この二日、僕らなりにくまなく歩いたつもりだけど、結局怪しい気配を掴むことはできていない。そしてそのパレードを見物する人々がさらに外部から入ってくるとなれば、それほど身を隠しやすい方法はない。それにだ。パレードの当日がまた問題だ。人を隠すには人の中ってやつさ」

 朱音がようやく合点がいったようにごくりとパンを飲み込んだ。

「つまり、パレードの観客に紛れて、お姫様を狙う奴が現れるっていうことね?」

 龍児は頷き、

「敵もなかなか用意周到なことをするものだね。その日をゼロ時間に設定して準備してきたんだ」

「まだ三日あるわ。なんとかしなくちゃ。ああ、まどろっこしくて仕方ない。よく大牙が我慢してると思うわよ」

 朱音が力を持て余しているかのように両拳を握り締めるのを、玄人と龍児は苦笑で返し、

「陰謀を巡らすような相手は、力押ししても暖簾に腕押しって場合が多いから、こちらも絡め手でいかないと。それに僕らはただでさえ疑われやすい身なりをしているし、用心深くならなくては」

「わかってるわよ、リュウ。でも、他に何か方法はないの? 暗殺者と観光客を見分けるなんて、難しいわ」

「それなんだけどね、ちょっと考えたんだけれど、盗賊ギルドに行ってみようかと思うんだ」

「何それ。大っぴらに強盗ができるわけ? この世界では?」

 朱音が素っ頓狂に言うと、龍児は眼鏡のレンズを拭き拭き、応えた。

「うーん、まあ、僕らの世界観ではそういうことになるのだろうけれど、この世界では当たり前に存在する組合というか、どちらかというと結社みたいなものさ。裏世界を牛耳っているとでも言えばいいのかな。冒険者の一行に盗賊(ローグ)がいるのといないのとでは、冒険の攻略度が違ってくる。彼らには鍵開けや罠解除の技があり、隠密に動いたり、身軽な攻撃手段など、重い鎧をつけた者とは別角度からの貢献ができるんだ。それに、宝の鑑定眼にも優れているから、偽物をつかまされて泣くなんてこともない。情報網の広さも盗賊たちの専売特許だ。だから、こないだタイガが襲撃されたこともすでに耳に入っているに違いない。そして、その襲撃が、自分たちの手の者の仕業でないこともわかっているだろう。盗賊ギルドは掟の厳しいギルドだ。他国の、それも無許可で暗殺まがいのことをしたとなれば、ギルドとしても放ってはおけないはずだ。そこで、彼らの情報網に、頼ってみるのはどうかと考えたんだ。昨日、それらしき場所を見つけたのもあるんだけどね」

「だが、掟が厳しいつうことは、部外者のわしらが接触するんは難しいんじゃないか?」

「ああ、その通りだ、クロト。これは賭けなんだけれど、もしかするととっておきの合言葉になるんじゃないかと思っていることがあるんだ」

「あら、何よ、思わせぶりなこと言って。教えてよ、リュウ」

「うまくいかなくてお前になじられるのは遠慮したいんでね」

 と龍児はしらっと言い、朱音はぷぅ、と頬を膨らませた。そしてすっくと椅子から立ち上がると、二人に先立って歩き出し、

「うまくいけば、パレードの時にとても役に立ってもらえるかもしれない。どうせ僕らの手持ちの札は少ないんだ。一か八かの勝負にでようじゃないか」

 そういうわけで三人は龍児の案内で、盗賊ギルドらしき建物がある場所へと向かったのである。


*****


 そこは裏通りの、高い木の塀のある平凡な三階建てほどの住宅に見えた。

 一つ違和感があると言えば、入り口が木の塀にある小さな戸口だけということだろうか。

 いや、それだけではない。彼らは先ほどから複数の視線を感じ取っていた。姿は見えない。普通の人間なら何も感じ取ることもない、微かな気配が、彼らを監視し、警戒していた。

 龍児は臆すこともなくその木の扉に近づくと、そこにある小さな覗き窓がさっと開いたのを見、彼が小説などで疑似体験してきた盗賊ギルドと全く合致することに心高鳴るのをとめられなかった。もしこれで中に入れたら、彼らしくもなく「やった!」と快哉したくなるだろうと思いながら、龍児は剣呑な視線をはねのける呪文のように一つの名前を持ち出して言った。

《先日の件で、オクタヴィア様から依頼され、話を聞きに来た》

『オクタヴィアって誰?』 

 朱音が首を傾げながら尋ねる。玄人が短く応えた。

『あのお姫様の侍女じゃよ』

『なんでそんな人がここに用があるのよ』

 龍児は覗き窓が一度ぴしゃり、としまり、おそらく別の者と話し合っているのだろうかと思いながら、朱音の疑問に応えた。

『あの侍女、毒に詳しかったし、探索活動にも慣れているようなそぶりだった。情報戦や交渉力が必要な場合は戦士よりも盗賊の方が長けているのがこういう世界での常さ。王族に仕えられるほどの腕前のローグなら、この街のギルドにも顔がきいていて当然……と、戻ってきた』

 再びさっと窓が開き、じろじろと龍児の顔を眺めながら、その者はしゃがれた声で言った。

《特にあのお方からつなぎがあったとは聞いてねえが? 貴様ら、何者だ? みょうちきりんななりしやがって》

 この世界にハンディコムなどの通信手段がなくてよかったと思いながら、龍児は厚顔にも見える図太さで続けた。

《あのお方の多忙さは知っている通りだろう。火急な用向きが生じ、つなぎさえつける余裕がなかったので、僕らがひとまず駆け付けたわけだ。僕たちの存在は王族の一部にしか知られていない。お前が僕らのことを知らなくても当然だ》

 またも背後の誰かとぼそぼそと囁き合うのが聞こえたが、今度こそ扉が内側に開き、三人を中に入れてくれた。そして彼らを先導し、エントランスから直接地下へと下る階段へと進む。

『ちょっと、大嘘ついてるけど、大丈夫?』

 地下二階分ほど下りながら、朱音がやや気掛かりに尋ねる。龍児は先導者のあとを堂々とした足取りでついていきながら、

『盗賊たちとのやり取りは虚々実々なのが当たり前だよ。とは言え、僕らの残りの手札には「真実」しかないのだけどね。でも、あの侍女の名前の威光がここまであるとすれば、話のわかるギルド長ではないかと想像しているよ』

『あんたにもタイガの楽観主義が伝染した?』

『僕は別に悲観論者ではないよ』

 三人は、狭い回廊を進み、いくつかの布で仕切られた小部屋を通り過ぎ、一番奥の、片開きの扉の前に案内された。

《ギルド長自らがお前らの話を聞きたいそうだ。行け》

 龍児がその扉の取っ手に触れようとした時、ぷすっという微かな破裂音が聞こえ、三人は反射的に身体を屈めていた。振り返ると、すぐ足元に錘状の刃物が回廊の床に突き立っていた。

 彼らが身体を起こした時、扉が向こう側から開き、銀色の顎髭を蓄えた、細身で意外に小柄な壮年の男が興じたような眼差しで彼らを見て言った。

《オクタヴィアが寄越したと大嘘をついただけのことはあるな。まあいい。お前は下がっていろ。俺はこの連中と少し話をしてみたい》

 と、部下を引き下がらせ、銀髪のギルド長はカードでもやるような小さめの卓の椅子に座ると、三人にも手で座るように示した。朱音があからさまに警戒して椅子を睨みつけているのを、ギルド長はくつくつと笑いながら言った。

《その椅子には何の仕掛けもありはしない。さっきのは少々お前たちの力量を試したかっただけだ》

 椅子の座面から鉄のトゲでも飛び出るのではないかと危ぶんでいた朱音が、ほっと溜息をついて座ったのを横目に、龍児は冷静に尋ねた。

《僕たちが嘘をついているとわかっていて、ここまで通してくれたのはなぜですか?》

 ギルド長は、その面長な顔に好奇心の色を浮かべて応えた。

《お前たちの人相と身なりを聞いて、ピンときたからだ。このところ話題の凄腕冒険者ではないかとね。そんな連中が子供だましみたいな方法で堂々とこの〈銀狐〉の門をたたきに来たとくれば、会ってみたいと思うのが普通だろう? それも、例の襲撃にも関わっているらしいときた。あの事件は俺たち盗賊ギルドの沽券にもかかわる大問題なのだ。その襲撃者に関してはこちらでも足取りを追ってはいたが、衛兵どもに連れて行かれてから、ぷつんと追跡できなくなった》

 そこまで見抜かれているとわかれば、腹を割って話すしかないと、龍児はやや身を乗り出して言った。

《あの襲撃の際、王女と共にいたのは、僕たちの仲間です。そして今城内の牢につながれています。処刑はとりあえず免れているようですが、あの襲撃者たちの黒幕を暴かない限り、正当に彼が解放されることは難しい状況にあります》

 〈銀狐〉は卓上においてあったデカンタから、貴族の口にしか入らないような上等のワインをグラスに注いで彼らに回すと、自分は一息に半分ほど飲んでから言った。

《なるほど、それで少し合点がいった。ああいった裏通りに住む者の中には我らに与する者がかなりの数いるのでね、あそこで起きた騒動のことは、俺の配下が逐一目撃している。あれがお前たちの仲間か。ふむ、確かに似たようななりをしているな。そう言えばオクタヴィアもいたと聞く。王女を護る役目は果たしていたが、あの騒動を鎮めたのは一重にお前たちの仲間の卓越した技によるものだと、配下の者が感嘆していた。にしても、少々強引なやり方をしたもんだ。最近の城内は動きが奇妙でね…だがさすがに城の中を探るには骨が折れる。それに、国王の傍にはべったりとあの灰色の面をさげたいけ好かない魔道士がくっついて離れない。お前たちも冒険者なら、噂くらいは耳にしたことがあるだろう。この国が王位継承でもめているという噂を。俺にはどうにもこの噂を信じられなかった。なぜなら、俺は国王の人となりをよく知っているからだ。いくら病で弱っているとはいえ、そんな噂が流れるままにしておくような男じゃない》

《だったら、その王女さんのお付きの人から話を聞けばええんじゃないか? あんたさんとは知り合いなんじゃろ?》

 玄人が素朴に言葉を挟むと、〈銀狐〉は困ったように肩をすくめた。

《そこがあの女の頭の固いところでね…腕前は俺が仕込んだし、ただのローグで終わらせないためにいろんな躾をしてきた…俺は彼女の育ての親みたいなもんさ…ここに来る前はバーミリオンの貴族に仕えていたが、その雇主が死んで、ギルドの仕事を請け負うこともしていなかったのを、ちょうど王女の侍女兼護衛を探しているとの話を国王から聞いてね。王女のおてんばぶりは小さな頃から変わらなくてなあ。手をやいていたらしい。それでオクタヴィアを推薦したのさ。国王は俺が推すくらいなら、と二言なくすぐに決めてくれたよ。オクタヴィアも、この平和で美しい国で可愛い王女の…と言ってもはねっ返りだが…護衛という任務に納得がいったようだった。ただ一つ、その時彼女に念押しされてなあ。いくら国王の認可があるとはいえ、盗賊ギルドの手先のような真似はこの国にいる限り一切しないと。おそらく王女と言う純粋な存在と、盗賊ギルドに付随して回る暗黒街のならわしや掟といったものを近づけさせたくなかったのだろう。それも理解できるんだが、今はそこにこだわっている時期ではないと俺は思っているんだ。だが王宮につなぎをつけようとしたって国王は臥せっているし、オクタヴィアも城内の深窓にこもってしまっていて手が出せない》

《ではあなたは国王と顔見知りということなんですか》

 と龍児がやや驚いたように尋ねた。盗賊ギルドの長は苦み走った笑みを唇の端に浮かべて応えた。

《考えれば、あの王女様のおてんばぶりは、国王の性質を受け継いだものなんじゃないかって思っているよ。っていうのも、まだ王子が産まれてなかった時分、国王はよくお忍びで街の中をうろついていたんだ。見聞を広めるためだと、あとになって本人から聞かされたが、あれは単に城の中がつまらなくて飛び出して来ちまったんだと俺は思っているね。その時に、俺がたまたま飲んでた場末の酒場にひょっこり姿を現したのさ。街のもんは、国王の顔なんぞ間近で見たことないから誰も気づかない。だが俺にはわかった。そりゃ盗賊やってれば知らないはずがない。こっそり耳打ちしたさ、「国王陛下がこのような場所を一人歩きされるのは危ない」とね。国王は見破られたことを豪快に笑い流して言ったものだよ、「ではお前が私を守ってくれるだろうな? しかし、私の剣の腕もなかなかなものだぞ、見てみたいか?」ってな具合さ。これがきっかけで、俺たちは天地もかけ離れてる世界で暮らしているにもかかわらず、繋がりができちまったのさ。そんな国王だから、むしろ城内で何かが起こっているのなら、俺に何か言ってくると思うんだ。むしろ今こそ、俺たちが役に立てる時だと思っているんだが、国王からの報せは一向にないし、最近はその安否さえ怪しく思われてならなくなることがある。だから、せめてオクタヴィアから何か一報があればと思うのだが、ここまで来てもギルドとの接触を憚る彼女の潔癖さが逆にあだにならなければいいと危惧している》

《そのオクタヴィアさんですが、その人にも危険が迫るかもしれないんです》

 久しぶりに飲む濃いワインに少しむせながら、朱音が言った。〈銀狐〉の表情がわずかに引き締まる。話を龍児が引き継いだ。

《僕たちがここへ来たのは、襲撃者、つまり暗殺者ですが、そのような集団であれば、あなた方の方が把握していると思ったからです。それに盗賊ギルドの情報網の広さと速さは他に比べるものがないと聞きます。あの襲撃者が他国の、それもあなた方の許可を得ずに、もちろんあの連中が王族を狙うとわかっていて許可するはずもないでしょうが、この王国内で活動することは掟に反することです。あなた方の制裁を受けるべき存在なわけです。そして僕たちも、あの襲撃者が誰の依頼で今回のようなことをしたか、知りたいのです。さらにその凶刃は、オクタヴィアさんにも向けられているのです。なぜなら彼女は王城内で毒が使われ、僕たちの仲間、つまり、襲撃者と直接かかわった者である存在を消しにかかった事態について、疑問を持ったからです。この二日、城から彼女が出てきた形跡はありません。きっと城内のことで外出する暇がないのでしょう。今日もこれから城を見張り、彼女の身辺を警戒するつもりでいます》

 〈銀狐〉はワイングラスの脚に指をはさんでぐるぐると中身を揺らしていたが、

《これはひょっとして、国王が臥せっているのと関係があるのか? 巷では第二王子の謀略だの、第一王子の暴挙だのと面白おかしく騒がれているが、完全に噂ですまされないことが起きているということなのか?》

《僕たちも城内には入れませんので明確には言えませんが、事実、全く関係のない僕たちの仲間が何の裁判もなく即刻処刑に決定されたり、かと思えば毒殺されかけたりと、普通ではないことが起きています》

《ふむ……衛兵隊長ら数人の衛兵が消えたことも関係があるのかもしれんな……乞食が拾い集めた物の中に衛兵の甲冑の一部らしいものがあるという報告を受けてな。おそらく、殺されているだろう。なぜか、まではわからんが》

《その衛兵、わしらの仲間を連行していった衛兵だとすれば、襲撃者たちも連行しているはずじゃ。つまり、目撃者はすべて消すつもりなんじゃないやろか》

 と玄人が重々しく口を開いた。〈銀狐〉の表情がますます厳しく尖る。

《うーむ、王族を狙うような者たちがこれで諦めるとも思えん…よし、配下の者を総動員して他国者のローグを洗い出すよう、命じよう》

 そしてここで彼はワインを飲み干しながら気が付いたようにカタン、と空のグラスを置いた。

《この俺が失念するとは恥ずかしい限りだ。三日後には大祝賀パレードがあるではないか! まさに暗殺の好機! このことをオクタヴィアは気づいているのかどうか!》

《僕たちもそのことを懸念しているのです。このことでもあなた方の手を借りたいと思い、ここに来たのです》

 と龍児が細い眉をよせ続けたまま言った。

 〈銀狐〉は両手をついて立ち上がると、銀色の顎髭を撫でながら行ったり来たりして言った。

《俺のシマで好き勝手にされちゃ、ギルド長として名折れだ。もちろん加勢させてもらおう。いや、むしろこちらからお前たちの助けを借りたい》

《もちろんです。僕たちも仲間を助けたいですし、何より、悪事がのさばるのを放ってはおけません》

《そうよ、あたしたちは正義のヒーローだもの。悪い奴らは根こそぎやっつけるのが主義なの》

《人の命をなんとも思わん輩には鉄槌を下す、これが常套じゃ》

 これを聞いた盗賊ギルドの長は、小気味よく笑い、言った。

《聞きしに勝る風変わりな冒険者だ! 気に入った! 特別にお前たちに盗賊ギルドの出入り許可を与える。どこの国に行っても、盗賊ギルドに行きたければ、〈銀狐の尻尾は9本ある〉と下町の乞食に言うがいい。すぐに誰かがつなぎをつけてくれるはずだ。ただし、北の魔道帝国だけは別だ。あそこの国のギルド機構は少々特別でな。俺たちの目もなかなか届かないのだ》

《魔道帝国ですか……》

 龍児の記憶の中で何かがつながったように感じられたが、それは〈銀狐〉の言葉でまとまることなく霧消してしまった。

《オクタヴィアのことは俺も目をかけておくが、お前たちの手も借りるぜ。できれば何も起こらなければいいが》

 しかし、このギルド長の期待は良くも悪くも裏切られるのである。


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