第一話 まだ始まらない恋愛
物語をここまで書いてきたら、さすがに頭が痛くなってきたよ〜。
でも涼太にずっと文句を言われるのも面倒だから、とりあえず最後まで書いてあげることにした〜。
第一話 まだ始まらない恋愛
「お前なぁ!!」
涼太は机を叩いた。
「ずっと放置しやがって!俺、何日待ったと思ってるんだ!」
『実際、数日放置してたしな』
作者は悪びれもなく答えた。
「何してたんだよ!」
『テレビ見たり、スマホ触ったり、設定考えたり』
「設定は考えたのか?」
『いや、全然』
「胸張って言うな!」
作者が指を鳴らした。
その瞬間。
真っ白だった世界に色が生まれる。
高層ビルが立ち並ぶ街並み。
住宅街。
道路。
信号。
人々の気配。
涼太の周囲に世界が形を作り始めた。
『よし。舞台は日本だ』
「雑っ!?」
『恋愛ものって日本が多いじゃん』
「その理由だけ!?」
『不満あるか?』
作者の背後に筋肉の幻影が現れる。
「ありません」
即答だった。
『よろしい』
涼太は舌打ちした。
「で、俺はどこの学校なんだ?」
『知らん』
「知らんのかよ!」
『今日入学式だから自分で見てこい』
「適当すぎるだろ!」
作者は完全に無視した。
『ほらほら、制服着ろ。父さん母さん妹が朝飯食ってるぞ』
「ちょっと待て」
涼太は目を輝かせた。
「もしかして女子だらけの学校?」
『知らん』
「不良だらけの学校?」
『知らん』
「超名門校?」
『知らん』
「何なら知ってるんだよ!」
『今日が入学式ってこと』
「終わってる!」
その時だった。
ズキン、と頭に痛みが走る。
「うぐっ!?」
大量の記憶が流れ込んでくる。
家族。
友人。
通学路。
近所の風景。
知らないはずなのに知っている。
自分の人生。
「いてぇ……」
『あ、記憶入れるの忘れてた』
「忘れるなよ!」
『ごめんごめん』
「絶対反省してないだろ!」
『ほら下行け』
「嫌だ」
『行け』
「嫌だ」
『俺は作者だぞ』
「だから?」
『従え』
「断る」
しばらく沈黙が流れた。
『……』
「……」
『外道手段使うか』
作者は席を立った。
「どこ行くんだ?」
数分後。
作者は小さな男の子を連れて戻ってきた。
『よーし、甥っ子。やれ』
「は?」
男の子は本を掴むと。
ぶんぶん振り回した。
「ぎゃああああああ!!」
さらに引っ張る。
「やめろやめろやめろ!!」
『ほらどうする?』
「降ります!」
『素直でよろしい』
甥っ子は満足そうに帰っていった。
涼太は床に崩れ落ちる。
「最低だ……」
『作者権限だ』
「横暴すぎる……」
制服に着替えた涼太は部屋を出た。
階段を下りる。
リビングでは母が片付けをしている。
父は新聞を読んでいた。
妹は朝食を食べている。
普通の家庭。
普通の朝。
「描写雑じゃない?」
『想像に任せる』
「手抜きだろ」
『うるさい』
涼太は席に着いた。
だが目の前の皿を見て首を傾げる。
「母さん」
「ん?」
「俺の朝飯変じゃない?」
母は首を傾げた。
「いつも通りだけど?」
「作者」
『ん?』
「何これ」
『予算不足』
「ゲームじゃねぇんだよ!!」
『じゃあ描写するか……』
次の瞬間。
皿の上に焼きたてのトースト。
ふわふわのスクランブルエッグ。
香ばしいベーコン。
湯気の立つスープ。
ようやくまともな朝食が現れた。
「最初からやれ!」
作者は深いため息をつく。
『なぁ涼太』
「なんだよ」
『お前ずっと俺と喋ってるよな』
「そうだけど?」
『恋愛小説なのに』
「そうだけど?」
『主人公と作者しか会話してない』
「そうだけど?」
『読者帰るぞ』
「……」
『このままだと筋肉作者がヒロインになるぞ』
「それだけはやめろ!!」
作者は満足そうに頷いた。
『よし』
『じゃあ次からちゃんと物語を進める』
「本当だな?」
『たぶん』
「たぶん!?」
作者は笑った。
そして。
『続きは次回!』
「お前ぇぇぇぇぇぇぇ!!」




