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二章_四

ニタリと笑いながら興奮気味に少女は煌良に話しかける。

少女「すごいよ…私に一撃入れるのもそうだけど、その歳で杖と魔導具の並列起動ができるなん…あっ…そういえば仮面割れちゃっ…。」


煌良「は…?なんで…同じ顔?」


「ト゛ォ゛ーン」

男が話している途中の少女へ向け砲撃を放ち、煌良の元へと走り出し煌良を担いで宿へと逃げ込む。


少女「お話してる最中に遠慮なくぶっぱなすなんて…逃げちゃった…。」

逃げ込んだ場所が分かっていると言わんばかりに少女は宿の方へと歩き出すが、数歩歩いたところで足を止め、ふりかえる。


少女「あはっ!久しぶりだねぇ!君にも会えるなんて、今日はとってもいい日だよ!」


少女が笑顔で見つめる先には二百センチ程の背丈を持ち、豪華な装飾と何らかの魔術が施された白銀の荘厳な全身を覆う鎧を身に纏い、百五十センチ程の重厚な両手剣を片手で持ち、鎧の隙間から蒸気を勢いよく吐き出しながら「ガシャン…ガシャン…」と音を立て、ゆっくりと着実に少女の元へと歩み続ける屈強な騎士が居た。


少女「ねぇ、そんな兜なんて外して私に可愛くてかっこいいお顔を見せてよ〜。」

甘い声で少女は揶揄う様にお強請りする。


騎士は少女の言葉など意に介さず一歩また一歩と近づいていく。

吐き出された蒸気は月光を纏い、鎧に反射した光は御伽話の中から出てきたかの様な幻想的な姿を少女の瞳に写すが、それと同時に少女は鎧から発せられた蒸気機関の様な機械音と自分に対する凄まじい憎悪と鋭い殺気を感じ取っていた。


少女「…私のお願いを聞くつもりも私とお話するつもりもないの?悲しいなぁ…。そういえば…あの頭が狂っちゃった…。」

「ホ゛ン゛ッ」

突然巨大な爆発音の様な音が鳴り、騎士は音を置き去りにする程速く少女に近づき、重厚な両手剣を振り下ろす。騎士が先程までいた地点には小さなクレーターができており、少女に近づくまでに通って来たであろう地面の表面は粉々になっていた。

騎士「黙れ、この都市にお前の様な者は相応しくない。その首だけを置いて化け物共の所へ帰るがいい。」

騎士が振り下ろした剣を間一髪で防御した少女の腕は弾け飛び粉々になった。飛び散った少女の腕は泥の様なものになり、少女の足元へと蛆の如く這い、吸収されていく。

少女「も〜ぅ…そんな態度とるなんて、酷くない?今日はな〜んにも悪い事してないんだよ?もっと優しくしてくれても…」

少女は再生した腕をを見せつけながら、挑発するような話し方で喋り続ける。

「ホ゛ン゛ッ」

と先程と同じ爆発音が鳴り響き、騎士が少女の首を落とすべく剣を振るう。

少女は男との戦闘の時よりも格段に速く鋭い拳を騎士の腹に向けて打ち込む。

「ホ゛ン゛ッ」ともう一度騎士の背後から爆発音が鳴り、少女の視界から騎士が消える。

「ホ゛ン゛ッ」前の爆発音が耳に響いている内にさらにもう一度爆発音が耳に響く。

騎士の姿を捉えようと振り向いた瞬間に少女は熱く鋭い物が自身の首の肉を斬り裂く感触を感じ、騎士の姿を捉えようとした少女の視界には自身に迫ってくる地面が写っていた。


少女の頭が地面に落ち、少しの間転がって「コツン」と音を立てながら街灯にぶつかる。


少女「あーぁ…負けちゃったぁ。」

これまでで一番の歪んだ笑顔を浮かべ、少女は近づいて来る騎士を見つめる。


街灯の灯りが少女の生首だけを照らし、騎士が鈍重な歩みで近づいていき、吐き出す蒸気がゆっくりと生首とだらしなく横たわった首が取れた体を包んでいく。


少女「こわぁ〜い、首から下がなくなっちゃったか弱い私のことをどうするつもり?」


騎士「ここに来た目的は?」

少女の頭に足を乗せ、騎士は冷たい声で質問する。


少女「私のこ〜んなに可愛いお顔を踏んずけるなんて!?はぁ〜あ…君たちは年長者を敬うって事を覚えた方がいいんじゃない?」


騎士「………。」


少女「そもそもなぁ〜んで教えなきゃいけないの?教えても教えなくても私を殺す気でしょ?」


騎士「これ、本体ではないな。この人形を作るのも少しは苦労しただろう?その苦労をガラクタにはしたくないなら…。」

騎士は頭を踏みつけている足に力を入れる。


少女「もしかして…話したら帰してくれるってこと!?あはっ!やさしーねぇ。」


騎士「……。」


少女「あはっ!本当に逃がしちゃっていいんだ!じゃあ…話してあげる。私がこの都市に来たのは久しぶりに劇が見たくなったからだよ!」


騎士「そうか…もういい。」

騎士はその言葉を最後に少女の頭を踏み潰した。少女の頭は騎士が着ている荘厳な鎧の重さに耐えられず、一瞬で崩れて泥の様な物になり、その鎧を汚した。


少女「酷い!君達はいっつも私達に容赦しないね。」

先程まで横たわっていた少女の首が取れた体が何事もなかったかのように立ち上がり、話し始める。

その直後に体から翼を生やして空へ飛び上がる。

少女「君のお願いだからその首…だったものは置いてってあげるよ!」

騎士は少女を追いかけようとするが、少女の首だったものが騎士の鉄靴と地面をガッチリと繋いでいた。

それにほんの一瞬気を取られている内に、少女は騎士の視界から完全に消え去ってしまった。


騎士「………。」

足と地面を繋いでいるものは時間が経つにつれ崩れていき、騎士は周りに残った戦いの後を確認して先に少女と交戦していたであろう魔物討伐隊の隊員を探し始める。



一方その頃煌良は男に担がれ、煌良が泊まっていた宿へと逃げ出していた。


煌良(なんで…どうして同じ顔なんだ!?…冷静になれ私…姿を偽装する魔術や魔導具を使って…ならなんで仮面を?それに割れちゃってたっていってたよね…。)

必死に考えを巡らせる煌良は男が話しかけてきたことによって現実へと引き戻される。


砲撃を放った男「さっきは助かった、あんたが来てくれなかったら…。」

担いでいた煌良を降ろし、男は自身の装備についた土埃を手で払ってから礼を言う。

煌良「それより!あれが追ってこないとは限らないんですから…」

煌良は顔を隠すため、急いで上着に付いているフードを深く被り、その後自身についた土埃を払ってから逃げてきた方向から少女が追ってこないかを警戒する。

砲撃を放った男「心配ない。無敵の騎士様が来てくれたからな。」

警戒している煌良を尻目に男は茶化す様に話しながら受付でぐったりとして眠っている人を調べる。

そうしている内に外から爆発音が聞こえてきた。

砲撃を放った男「始まったな…。まぁすぐ終わる、それまでゆっくりしてるといい。俺はこの眠りこけてる奴らを比較的安全な場所まで避難させる。ここから絶対に離れないで待っていてくれ。」

そう言い、男は受付で眠らされている人を担いで宿の裏口から出ていった。

煌良「はぁ〜ぁ…つっかれた…これからどうしよ。」(私はあれと同じ顔なんだもんな…もし見られてたら素直に帰してくれる訳ないし…。重要な荷物は宿の入口付近に置いてあるからそれを回収して逃げる?…逃げれる?)


煌良(足音はしないしもう遠くに行ったかな…よし!逃げよう!)

最低限の荷物を回収して、煌良は宿の裏口から飛び出す。


煌良「カハッ!……ォェ…?」

腹に拳がめり込み、煌良は思わず声を漏らしてしまう。


砲撃を放った男「絶対離れないでくれって言ったよな…命の恩人をこんな目には遭わせたくなかったんだが…。」


地面に這いつくばり、みぞおちへの衝撃によって生じた激痛にもがき、一時的に止まった呼吸を取り戻そうとする。


砲撃を放った男「拘束させてもらう。」

少女に向けていた冷たい目と同じ目を朦朧とした意識の中で見たのを最後に煌良は意識を失ってしまった。


その後…


騎士「………。」

足と地面を繋いでいるものは時間が経つにつれ崩れていき、騎士は周りに残った戦いの後を確認して先に少女と交戦していたであろう自分の部下を探し始める。


少ししてから煌良達が逃げ込んだ宿から頑丈そうな太い縄でぐるぐる巻きで拘束された煌良を担いだ男が出てきた。


騎士「一益(カズマス)生きてたか…それは?」

騎士は落ち着いた声で男に担いでいる人を指さし、質問する。


一益「さっきのあれと同じ顔をしている…人です。おそらく。それ以外にも所持している本…王国が禁忌指定した内容の物がありました。」

一益が煌良を騎士に渡す。

騎士「そうか……そいつは私が連れて行こう。お前はあそこにこびりついている泥のような物を採取していつもの所に届けておいてくれ。」

騎士が煌良を担いで立ち去ろうとした時、騎士を引き止めるように一益が声を掛ける。

一益「わかりました…。一応こいつは俺の事を助けてくれました…真意は分かりませんが。勝手な願いですが、あまり乱暴にしてやらないでください。」


騎士「あぁ。こいつが大人しくしていれば傷つけないと約束しよう。」


一益「ありがとうございます。」

一益は深々と頭を下げて感謝を伝える。

騎士「私はもう行く、お前も気をつけろよ。」

重い鎧を鳴らしながら都市の外へと歩いていった。


この作品を読んでくださり、ありがとうございます。

至らない点も多いと思いますが、温かく見守っていただけると嬉しいです。

感想やレビュー、評価などをいただけたらとても励みになります!

更新は不定期になりますが、これからも読んでいただけたら嬉しいです。


次の話もぜひお楽しみに!

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