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二章_三

煌良は劇場を離れて市場で消耗品や保存食を補充してから宿に戻って眠りについた。


都市の明かりのほとんどが消え、辺りが静まり返ったころ…

コンコンと窓ガラスを優しくノックする音で目が覚める。


ベッドから起き上がり部屋の明かりを付け、両手杖を取ってから音の鳴る方向へと警戒しつつゆっくりと向かう。


コンコン…コンコン


窓を叩く音が段々と強くなっていく。


窓まであと一歩という所まで近づき、そーっと窓を覗き込む。


煌良(誰も…いない?)


外を確認する為に窓を開けた瞬間…


???「ばぁっ!」

月光を遮りながらとても大きなカラスの様な真っ黒に染まった翼を生やし、仮面を着けた少女が逆さに吊るされている様な明らかに重力に逆らった姿勢で上から煌良を驚かそうと声を出しながら勢いよく現れた。


急に現れた少女とその少女が出した声に、反射的に距離を取る。


少女「あはっ!そんなに驚いてくれれば、私も驚かした甲斐が有るよ。」

窓の枠に肘をつきながら、どこかで聞いた事がある甘ったるい声でケタケタと笑う。


煌良「君は…誰…?」

両手杖を構え、少女をじっと見つめながらじわじわと部屋の出口の方へ移動する。


少女「えぇ〜…悲しいなぁ、もう忘れちゃったの?私はわざわざ君に会いにやって来たっていうのに。」

芝居がかった口調で少女は話し続ける。


コツン…と後ろに下がり続けていた煌良の踵が壁に当たり、一瞬煌良の意識が少女から逸れる。


煌良が少女に意識を戻した時、少女は音もなく息遣いが感じられる程近づいていた。


巨大な翼はいつの間にか消え、ゾワッとした寒気と死の予感が煌良に走る。

頭、体、心がカル村での大魔物とは比較にならない程の危険信号を発する。


少女「まぁーだ分からないのかなぁ?」

嬉しさを抑えきれないかの様な目で煌良の顔を穴があくほど見つめる。


煌良(いつの間に!?どうやって!?)

ぶわっと滝のように冷や汗が流れ、まとまらない考えをまとめようと頭を回そうとするが、目の前の脅威を警戒する事に手一杯でそれもままならない。


少女「ねぇ…本当に分かんないの?今日会ったばっかりなのに。」

少女は少し悲しそうな表情を浮かべる。


煌良(今日会った…会った?)

煌良「その声…その仮面、劇場の近くで…。」

少女の顔色を伺いながら、慎重に答える。


少女「そう!そうだよぉ!覚えていてくれて凄く嬉しいよ!」

悲しそうな表情から変わり、今度は見た目の歳相応の可愛らしい笑みを浮かべる。

少女「いや〜今日は劇を見にここに来ただけだけど…君にまた会えるなんて、劇を見にこの都市に赴いたらこんな以外で最高な収穫があるなんて!」

興奮しながら話していた少女は一瞬だけ窓の外へ視線を移し、入ってきた窓の元へと歩き出す。

少女「はぁ…もっと話したかったんだけど、怖〜いお客さんが来ちゃったみたいだからそろそろ行かなきゃ。仮面、届けてくれてありがとね。」

そう言い放ち、少女が窓から飛び出そうとするが。


煌良「それだけ?」

なぜその言葉を言ったのか、異質な少女に対する好奇心か…それは本人にも分からなかったが、気づけばその言葉を放っていた。

少女は足を止めてニヤリと笑いながら振り返り、話し始める。

少女「うん、今回はそれだけ。君を偶然見つけてね、どうしても会いたかったから。」

会話を終え、少女は止めていた足を再び動かし始める。


窓から少女が飛び出そうとしたその時。

ドォーンという轟音と共に熱と光と衝撃が辺りを覆う。



???「かすり傷の一つでも負っていてくれてると嬉しいんだが…。」

宿とは向かいの建物の屋根に乗っている筋骨隆々の男がポツリと呟く。


魔導具と思われる道具による砲撃の煙が晴れ、少しずつ少女の姿が現れるる。


砲撃を放った男(目に見える傷は無し…宿泊客が重症を負わないように加減はしたが、化け物だな。)

砲撃の効果が無い事を確認すると、男は屋根を強く蹴りどこかに姿をくらます。


少女「はぁ〜、王国の奴らはいっつも仕事が早いね〜。」

皮肉を言うように少女は呟き、姿をくらました男を追うため窓を飛び出し、翼を背中に生やして飛び去って行った。


煌良(助かった…のかな。)

少しの間煌良はその場に立ち尽くしていたがすぐに杖と魔導具を持って都市の警備員がいるはずの場所へと向かう。



砲撃を放った男(やはり追ってきたな。)

男は入り組んだ路地をその巨体に見合わない俊敏な動きで少女から距離を取りながら隙をみては銃口がテニスボール程の大きさの拳銃の様な物から砲撃を放ち、命中させる。


少女(めんどくさ…あの娘が来るまで時間稼ぎに付き合わないといけないとか…。)

少女は退屈そうにぐだぐだとしながらゆっくりと歩く。


その後も三十分程、男にとっては必死の少女にとっては退屈な追いかけっこを続けていた。


男(もう十五発以上は当ててるはずなんだが…こうもケロッとされてると自信が無くなるな。)

建物の影からこっそりと少女の様子を伺いながら、自身の魔導具に魔力を回して少女へ砲撃を放つ。



少女(この男も時間稼ぎは十分だって思ってるでしょ。魔力出力もほんの少しだけ落ちてる…相手の魔導具の影響かな。はぁ〜…威力に特化した魔導具かと思ったら妨害系とか、効果が長く続くと面倒だし…そろそろ終わらせようかな。)


少女は遠くからの砲撃には目もくれずに大きな翼を羽ばたかせ、目にも止まらぬ早さで空高く舞い上がり男の元へと急降下する。


男(消え…いや、ヤバいっ!)

男は少女の場所が分かっているかのように少女とは反対の方向に全力で走り出す。少女が上空から急降下しながら鋭い蹴りを放つが、男は地面を全力で蹴って派手に体勢を崩しながら建物に突っ込んだ。


男は体勢を直して、少女から距離を取ろうと走り出して建物の影へと再び身を隠す。


男(あっぶない…あと少しで死んでたな。そろそろあの人が来てくれないと本当に死んじまうぞ…。)


少女(今のを避けるかぁ…明らかに目で追えてなかったし位置も魔導具で感知してそうだな…まぁ今のでだいたい分かった。)


男(命中した砲撃は二十発程度…時間もいい頃。あと一発デカいのをぶちかます。)


男は魔導具へ今込めれる最大限の魔力を回し、都市の大通りに少女を挑発するかの様に姿を現す。


その場所の建物の一つには大きい穴と壁が焦げた跡と匂いが風に乗って漂っていて、煌良が泊まっていた宿に戻ってきていたのが分かる。


少女(隠れもせずに、堂々と…どうせ死ぬ前に一発食らわせてやろうって魂胆でしょ。まぁいい、乗ってあげようかな。)


少女は男と二十メートルほど離れた所にゆっくりとした歩みで大通りへと姿を現す。


少女「やっ〜とこの退屈なおいかけっこを終わらせる気になってくれたの?」

じりじりと男の元へと歩いてきながら少しの嫌味が混じった芝居がかった態度で話し始める。


男「あぁ。」


少女「はぁ…素っ気ない返事。君の待ち人が到着するまでもう少し時間があるし…楽しくお話しようよ。」


男「なぜ増援が来るとわかってて逃げない?」(あの人が来るのを分かってて時間稼ぎに乗っていたのか…まぁいい。)


少女「私を殺そうとするなら…あの娘が来ると思ってね。あの娘が来てくれるなら会わないって訳にも…ねぇ。」


男「殺そうとすれば俺をいつでも殺せただろ、なぜ手加減を?」


少女は宿の方に一瞬視線を向けてから話を続ける

少女「なに…いきなりおしゃべりさんになっちゃって…。まぁ私は無駄な殺しはしたくないから…あの娘の部下を殺しちゃうのも可哀想だしね。」


少女「ねぇ、いい加減その魔導具しまったら?君が抵抗しようとしまいと君は私とあの娘が感動の再会をする時に邪魔されたく無いから動けない様にする予定なんだよね。だからおとなし…」


少女が喋っている最中に、俺は自身が放てる中で最高威力の砲撃を放つ。


砲撃は少女の鼻先で爆発し、莫大な熱と巨大な衝撃が少女を襲い、少女の顔を覆っていた仮面が割れて周りが煙に包まれる。


少女は砲撃など意に介さずに男の懐へと一直線に向かい、男の心臓を狙い拳を打ちつけようとする。


その速すぎる動きに回避が間に合わないと男は判断し、急ごしらえの一撃を自分を巻き込むように足場へ向けて砲撃を放つ。


足場が崩れ、お互いの体勢が軽く崩れるが、少女は一瞬で体勢を整えて反撃に移る。


少女の凶拳が男へと無慈悲に降りかかろうとする。




一方その頃煌良は…


ドンドンドン…

煌良「警備員さん!すみませーん!」

肩で息をしながら警備員がいる施設のドアを叩く。


警備員「随分と慌ててる様子だけど…大丈夫かい?」

慌ててる煌良に向け、安心できる様な優しい声色で話す警備員。だが煌良は落ち着きを取り戻すことなどなく慌てたまま喋り出す。


煌良「変な…変な少女が現れたと思ったら、いきなり爆発が起きて!えーっと…」


警備員「とりあえず落ち着いて…ここに居れば命の危険は無いよ、大丈夫だ。」


煌良「へ?大丈夫なんですか?」


警備員「あぁ、大丈夫。その爆発は魔物討伐隊の人によるものだ、恐らくその変な少女というのは魔物だろう。人型の魔物は特に危険度か高い。」


警備員「今頃、魔物も駆除されてるさ。ここの住人達が騒いでる様子もないし、心配ないよ。」


煌良「なら…良かったです。」


警備員「明日、また来てくれ。」


警備員はメモ用紙になにかを書いたあと、それを煌良に渡す。


警備員「そこに書いてある場所にある宿に行って、書いてある名前を言ってくれれば、無料で泊まれるように手配しておくよ。」


煌良「ありがとうございます。」


警備員「どういたしまして。暗いからね、気をつけて行くんだよ。」


その会話を最後に煌良は書いてある宿へと向かう。


宿に向かう途中。

煌良(あっ…元いた宿にお父さんがくれた本…忘れて来ちゃった!誰かに見られたら本当にマズい…取りに行かないと…。)

そう思い、煌良は歩む方向を変える。


宿に着き中に入ると、受付をしている人が眠るように力なく倒れていた。


煌良「っ…大丈夫ですか!?」

倒れている人に急いで駆け寄り、容態を確認する。

煌良(外傷は無い、眠ってる…いや眠らされる。人が騒いでいないのはおかしいと思ってたけど…命に別状は無さそうだし、ここは放置して…急いで荷物を回収しないと。)


まだ戦闘音が辺りに響く中、煌良は急いで自分が泊まっていた部屋に向かって荷物を探し始める。


しばらく部屋を探していると…

煌良「あっ!あった…傷もついて無いし良かった〜。」


荷物を回収し終え、渡されたメモに書いてある宿の元へ行こうと今いる宿から出ようした時、外から少女が笑い声と男の声が聞こえた。

煌良(まさか…。)

気付かれないよう息を殺して近くの窓から外を覗き込む。

煌良(なんでここに…。早くここから…いやあの男の人…このままだと殺され…)

警戒しながら少女とその周りを覗いていた時…

煌良(っ…!見つかった!?早く逃げないと…。)

少女と一瞬目が合い、一気に心臓の鼓動が早まる。

煌良(逃げ…ダメだ。ここで逃げたら男の人を見殺しにしてしまうのと同じ。)

両手杖と自身が作り出した魔力操作により液体と固形の切り替えや形状の変化が可能な水銀のような魔導具「星滴」に魔力を通し、杖に仕込まれた身体強化の魔術を起動それから星滴を杖に纏わせ槍のように変化させる。


窓を突き破り、男へ流星の様に降りかかろうとする少女の拳の軌道をなんとか逸らそうと煌良が突き上げた槍は少女の脇腹に当たって「カ゛ン゛ッ」と鈍い音が鳴る。


少女の拳は男の頬をかすり、地面に打ち立てられ地面に亀裂が走る。


煌良(クソッ…私が相手する魔物はどいつもこいつも…なんでこんなに固いんだっ。)

煌良は槍を突き立てた後、少女からできるだけの距離をとり、少女と目を合わせると煌良にこれまでで一番の悪寒が背中を伝った。


ニタリと笑いながら興奮気味に少女は煌良に話しかける。

少女「すごいよ…私に一撃入れるのもそうだけど、その歳で杖と魔導具の並列起動ができるなん…あっ…そういえば仮面割れちゃっ…。」


煌良「は…?なんで…同じ顔?」


「ト゛ォ゛ーン」

男が話している途中の少女へ向け砲撃を放ち、煌良の元へと走り出し煌良を担いで宿へと逃げ込む。


少女「お話してる最中に遠慮なくぶっぱなすなんて…逃げちゃった…。」

この作品を読んでくださり、ありがとうございます。

至らない点も多いと思いますが、温かく見守っていただけると嬉しいです。

感想やレビュー、評価などをいただけたらとても励みになります!

更新は不定期になりますが、これからも読んでいただけたら嬉しいです。


次の話もぜひお楽しみに!

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