第二十七話
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「いぎゃあああああああああああああああああ!」
金属同士を打ち合わせたような耳に劈く悲鳴。
靄に覆われた腕剣が宙を舞い、生々しい音を立てて落ちた。
腕があった箇所からは血の代わりに泥のようなものがボトボトと垂れて、地面に落ちると蛆がのたうち回るように靄が蠢いている。
「下がってろ」
目の前に影が降り立つ。見上げると薙刀を構えたサナがいた。
「……サ、サナ。きてくれたのか」
「ごめん、話はあと」
サナは人型に向き合うと薙刀を下段に構えてずい、と前に一歩踏み出す。
兼定に纏わせた匂い立つような気迫が、空気と地面を震わせた。
「随分好き勝手やってくれたみたいだけど、そこまで。アンタはここで私が殺す」
「ぎいぃぃぃぃぃぃ!」
口の端から黒い泡を吐き出しながら後ずさる人型は、腕を刎ねたサナへの恐れに腰が引けている。
威嚇するように呻るが、それもどこか怯えが強く見える。
「まってろ! かならず、おまえ、ころすぅぅぅぅ」
人型はそれだけ吐き捨てると、背中の靄が大きく膨らみ二つに裂けて、腐臭の漂う黒い翼を生やした。そして、強く羽ばたくとあっと声を上げる間もなく空へと飛び去っていった。
「ちっ。逃げやがったか」
憎々しく人型の去っていった空を睨みつけながらサナが呟く。
助かった。その安堵から仰向けに倒れて情けない声が出た。
「大丈夫か。怪我は」
「いや、殴られはしたが問題ない」
実際は右の脇腹がじくじくと痛むが、他の人たちに比べれば大したことはない。
怪我は後で診てもらえばいい。それよりも──。
ヴィクターとアメリの元へ向かう。
血だまりに沈んだ二人の顔に生気はない。
アメリに覆いかぶさるヴィクターをゆっくりと起こして横たえ呼びかけるも、反応はない。
二人とも出血がひどく、体を袈裟切りにされたアメリの傷の奥には切断された骨まで見えた。
「ヴィクターさん……アメリさん……」
血にまみれた二人の顔をそっと袖で拭った。だが、すでに乾き始めているのか血は拭き取れなかった。
次第に周囲が騒々しくなってきた。医者や担架と言った言葉が飛び交い、バタバタと走り回る人の気配が大きくなっていく。
「ヴィクターさん……アメリさん……」
流れてきた雨雲がしとしとと降らせ始める。雨に溶けた血が赤い川を作って流れていく。
次第に強くなる雨の勢いがリウムの慟哭を消し去った。




