32 対飛行魔物戦
こちらは本日の2話目です!
空中の敵に対して取れる戦術は限られている。弓か魔術。とにかく地面に叩き落とすのが先決。
巨風鷹の闘いを見て、ネネが作戦を考える。あの風属性の攻撃を防ぎながら奴らを倒さなければならない。モニカの「白盾」、アイナの『天翼』と『反射』。それが防御の手段だ。
『反射』は防御と攻撃が一体になっている。魔力消費は少ないので試してみるのは悪くない。
モニカを防御に回すと、遠距離攻撃がネネだけになる。モニカの弓は強力なので、出来れば攻撃に回したい。そうすると、防御はアイナに任せることになる。アイナの『天翼』は、内側からの攻撃は通すので、やはりアイナには『天翼』に集中してもらおうか。
ネネが考えた作戦はこうだ。
まず『銀獅子団』以外の者はここに残す。巨風鷹の全体攻撃を喰らうと騎士たちや王族の二人まで守り切れない。騎士たちにはこの場所で二人を死守してもらう。
アレス、ヒューイ、モニカ、ペネドラにはもちろんメイン武器を持たせる。作戦開始時に、アイナの『祝福』で全員を強化してもらう。
アイナの『天翼』で風の刃を防ぎつつ、内側からモニカの弓とネネの攻撃魔術で一羽ずつ確実に落とす。『天翼』はアイナから離れた場所にも展開できるから、アレスたち三人を守りながら地上でとどめを刺していく。これを繰り返して殲滅する。
最後に魔物寄せを見付けて解除する。安全が確保できたら合図の火炎魔法を撃ってここに残した者たちを呼ぶ。
ネネは自分の考えた作戦を『銀獅子団』に説明した。騎士代表でガルドスも聞いている。
「我々が参加できないのは口惜しいが……足手まといになっては本末転倒。ここでお二人を命に代えてもお守りする」
「ああ、済まないが頼む。みんな、ネネの作戦に異論はないか?」
『銀獅子団』が全員頷いた。
「よし、じゃあこれで行こう。作戦開始だ」
アレスが大剣「ヒュンデベルク」を背中に背負う。ヒューイが赤い刀身の双短剣「ブラッディ・マリー」を腰の後ろに差す。モニカが十文字の大弓「ダンテ」を用意し、矢筒に風属性の弱点である火属性が付与された矢、三十本を入れる。ペネドラは、いつものナックルに加えて脚甲を装着した。ペネドラの得意技は「蹴り」なのだ。
四人が装備を整える間、ネネとアイナは(いいな……)と思いながら見ていた。ネネはパタグリュエルで絶対に杖を手に入れようと固く誓った。アイナも、何か良さげに見えるいい感じの装備を手に入れよう、と改めて決心した。
そんなアイナの頭の上で、キュイックが「キュイっ!」と鳴く。白い翼をバタバタと羽ばたかせた。キュイックも何か欲しいのかも知れない。
準備を終えた四人と、特に準備の必要がなかった二人と一匹は、改めて馬車に乗り込んで先程の魔物たちが争っていた場所に向かう。
そこでは、巨風鷹が魔物の肉を喰らったり、引き千切ったりする音が響いていた。血生臭い匂いが充満している。
離れた場所に馬車を停め、手綱を一本の木に結び付ける。そこから森の中を進み、五十メートルの距離に近付いた所でアレスが口を開いた。
「アイナ、頼む!」
「はいっ! 『祝福』!」
その場にいる六人全員が淡い光に包まれる。Lv5の『祝福』は、力、素早さ、防御力、魔力を五分間、約一・三倍に高める。
「行くぞっ!」
森から出ると、まだ地上にいる一羽の巨風鷹にペネドラが一気に迫った。慌てて飛び立とうとするがペネドラの方が早い。
「どぅりゃあぁぁぁぁぁあっすぅー!」
気合と共にペネドラの蹴りが巨風鷹の頭に炸裂した。その巨体ごと真横に吹っ飛び、木々を数本倒しながら森に消えて行く。
「あと四匹っす!」
「よくやった、ペネドラ! よし、固まれ!」
残りの四羽は既に飛び立っている。アイナを中心にほかの五人が扇状に並ぶ。
「『天翼』っ!」
淡い青の光がドーム状にアイナたちを覆った。それと同時に風の刃が雨のように降り注ぐ。結界に攻撃が当たると光るので、今は真っ白な光に包まれているような状態だ。
そして光が収まった瞬間、モニカの弓が放たれた。瞬く間に三本放たれた火属性の矢は、全て一羽の巨風鷹に突き刺さる。喉、首、腹から矢が飛び出したそいつに、間髪入れずネネが火炎魔法を繰り出す。
「理を成す者よ、我が槍となり敵を焼き貫け。炎撃槍!」
巨大な炎の槍が巨風鷹を貫く。黒煙を上げながらそいつが落下した。
ヒューイが『天翼』から飛び出す。上空に残る三羽がヒューイに向けて風の刃を放つ。それが届く前に、アイナがヒューイを光のドームで包む。
風の刃を弾いて眩しい光を放ちながら、ヒューイが落下した巨風鷹に迫り、瞬く間にその首を刎ねた。
「あと三っ!」
一度『天翼』から出ると、解除しなければ戻れない。ヒューイはそのまま待機する。
アイナの額には玉の汗が吹き出ている。『天翼』を二か所、それも一つはヒューイの動きに合わせなければならない。
ヒューイに敵の攻撃が集中していた間、上空の巨風鷹、二羽にそれぞれ矢が三本ずつ突き立っていた。直後に炎の槍がその二羽に命中する。
「アイナっ! もう大丈夫だ、解除しろっ!」
アレスが叫びながら飛び出す。ペネドラも同時に飛び出した。アイナの魔力と集中力が限界だと判断したからだ。その直後、二つの『天翼』が消滅した。
アレスが手前、ペネドラが奥に落下した敵に肉迫する。アレスは地上に落下するより前に大剣を下から上に揮い、巨風鷹を縦に両断した。ペネドラが大きく跳躍して回し蹴りを腹に放つと、背中から大量の血飛沫と肉や内臓が噴き出した。
「やり過ぎたっす!?」
残った一羽が、誰かに向けて風の刃を放とうとしていた。そこに突き立てられる三本の矢。そしてほぼ同時に炎の槍がその身を貫く。
しかし、最後の巨風鷹は死力を振り絞って翼をはためかせる。キラッキラッと風の刃が生み出されるのが見える。
「ぐ、『死神の鎌』……」
死に体の巨風鷹の前に、突如朧げな死神が現れる。
「斬撃」
大鎌が真横に振られ、広げた翼ごと巨風鷹が両断された。そのまま力なく落下し、地面に激突する。
「終わった……?」
前のめりに倒れそうになるアイナをモニカが抱き止める。アレスが頷いたのを確認し、ネネが空に火炎魔術を打ち上げた。
巨風鷹の殲滅は完了した。森の木々の梢から朝日が顔を出し始めていた。
「アイナ、がんばったね!」
「『銀獅子団』強いっ!」
「ペネドラはやり過ぎ」
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