33 ひと時の癒し
本日も2話投稿します!こちらは1話目です。
昇り始めた朝日に向かって一時間ほど進んだ場所で、一行は休憩することにした。
ここに来る間、モニカの太腿に頭を預けて眠っていたアイナ。濡らした布で汗を拭ってあげたり、シャツの首元を緩めたり、甲斐甲斐しくアイナのお世話をして、モニカはニコニコ顔である。遂に椅子取りゲームの勝者になったのだ。
「アイナ、がんばった」
「そうっすね」
ネネとペネドラもアイナを慈しむように見つめる。最後は魔力と集中力が切れてしまったが、あれだけの魔物を一方的に蹂躙した巨風鷹との戦闘が、一人の犠牲も、というか怪我すら負わず、むしろ楽に勝てたのはアイナの力によるものが大きい。
「『死神の鎌』を遠距離で放ってた。あんなこと出来るなんて」
「そうっすね。あれコワいから遠距離の方が助かるっす」
微妙に噛み合わないペネドラの言葉は無視し、ネネは考える。『死神の鎌』は攻撃にタイムラグがあるから近接戦闘には向いていない。でも今回のように遠距離でも使えるなら、また違った闘い方が見えてくる。
(『天翼』と『反射』を重ね掛けしたことがあるって言ってた……他のスキルも重ね掛けできれば、アイナはもっと強くなる……)
ネネは馬車から降りて眩しい光に目を細めた。振り返って、モニカに抱きかかえられたアイナを見つめる。その寝顔は天使のようだった。
休憩中ずっと眠っているアイナを見て、ミリアナは(また眠っているのね)と焦れていた。
ミリアナは『銀獅子団』とカルデ王国の関係を強固なものにするため、まずはアイナを手懐けたいと考えていた。しかし手懐けるどころか直接話をすることすらままならない。戦闘時以外のアイナはほとんど眠っているのだ。
(こんなことなら、お食事を作ってくれた時にもっとお話するべきでしたわ)
その時は「腕の立つ料理人」くらいにしか思っていなかったのだ。仕方ないではないか。
森を抜けて街に入れば、話す機会くらいいくらでも作れる。労いの言葉を掛け、なんなら褒めてあげてもいい。確かにあの子はがんばっている。その働きを王族である私が認め、少々持ち上げてあげればあの子程度ならイチコロのはずですわ。
そもそも、出会いの時点で最悪の印象を与えたことなどは記憶から綺麗さっぱり消し去り、自らに都合の良いことばかり考えるミリアナであった。
一方、ネネはヒューイとペネドラに手伝いを頼み、何やら作業を行っていた。
道沿いに立つ木々を三本だけ残し、少し拓けた場所を作る。三本の木は真上から見ると三角形に残されていた。大人の背より少し高い位置で真横にロープを張り、そこに地面に届きそうな布を掛ける。布は三方を覆っている。
見ているとアレスも手伝い始めた。馬車の荷台から大きな木桶を持って来る。それを一本の木の張り出した枝に落ちないように設置した。
木桶の底は二重になっていて、外から見える底の部分には直径二ミリほどの穴が多数開いていた。それに被せたもう一つの底板は、外から手ではずせるようになっている。
太腿でアイナが寝ているモニカは見ているだけだったが、何をやっているか分かってニヤニヤしていた。後はアイナが目を覚ましたら、ネネが仕上げをするだけだ。
しゃわわわわー。
ネネが水魔術と火魔術で作り出した適温のお湯が、木桶の底に開いた穴からたくさんの細いお湯の束になって降り注ぐ。
野営のときは、身体の汚れや汗を濡らした布で拭く程度で済ませるのが普通だ。だが、疲れた身体を癒すと同時に、頭のてっぺんから爪先まで綺麗に出来る、このネネが考案した「シャワー」は『銀獅子団』の女子メンバーに大好評なのだ。
魔力を消費するから頻繁には使えないが、がんばったアイナを労ってあげたい。そんなネネの思いで、この簡易シャワー室を作ったのだった。
目を覚ましたアイナに使い方を説明して入ってもらったら、当たり前のような顔でモニカも続けて入って行った。そして「ずるいっすー」と言いながらペネドラが続く。そうなるとネネだって当然入る。なんたって作った本人なのだから。当然の権利である。アイナから預かったキュイックをヒューイに任せ、ネネもいそいそと入る。
こうして、本来は一人でゆったりと入るシャワー室(?)が、四人でパンパンになっていた。アイナは三人の裸のお姉さんに囲まれて身動きが取れない。シャワーというよりおしくらまんじゅうである。
一方でアイナ以外の三人は、アイナと裸で密着できて大層ご満悦であった。交替でアイナの髪を洗ったり身体を洗ったり。最初の「アイナを労う」という目的は忘却の彼方へと飛び去っていた。
「アイナは何にもしなくていいからねぇ。私がぜーんぶ洗ってあげるから」
「アイナっち、ほらこっちに寄った方がお湯がたくさん当たるっすよ」
「ん……やっぱりアイナのお肌、すべすべ」
「ほらネネ、ちょっとお湯が少なくなってきたわよ」
「ん。すぐ足す」
「……もう! お姉ちゃんたち、自分で洗えるから……」
「なに言ってんすか。アイナっちは休んでていいっす」
シャワーは布一枚で仕切られているだけだ。アレスとヒューイは慣れたものだが、シャワー室内で繰り広げられるキャッキャウフフな饗宴は外に丸聞こえである。男性騎士たちとマリウスには刺激が強い。なまじ見えない分想像が膨らんでしまう。シャワー室の方を敢えて見ないようにしながらも、耳はシャワー室にロックオンしていた。
やがて饗宴が終わり、みんながいる所の反対側から女子たちが現れる。薄着に濡れた髪、上気した肌。ほかほかした湯気が身体から立ち昇っている。その上、なんだかいい匂いまでした。
ちなみにお湯は森の方に流れていくように溝まで掘っている。抜かりはない。
さっぱりして気持ち良さげな女子ーズを、ミリアナがめちゃくちゃ羨ましそうな目で見ていた。ついでに侍女二人も羨まし気である。
その視線に気付いたネネが「あ……ミリアナ様も入ります?」と気を利かせ、ミリアナと侍女二人が首を縦にブンブン振るので、再び魔術でお湯を作り、三人に入ってもらった。侍女が王女と一緒に風呂に入るなど言語道断なのだが、アイナたちが四人で入っていたのでそれが当たり前なのだとミリアナは勘違いしていた。よかったよかった。
その後、メルリアだけ入れないのは可哀想なので、彼女にも入ってもらった。一人でゆっくりシャワーを浴びたメルリアが一番リフレッシュしていた。
男子たちは濡らした布で身体を拭いた。これは差別などではない。男子たるもの、いつでも闘えるように気を抜いてはいけないのだ。シャワーなんて女子女子したものに入る訳にはいかないのである。
街に着いたらゆっくり風呂に浸かりたい。男子全員の気持ちが一つになった瞬間であった。
「女子だけシャワー、ずるいっ!」
「一緒に入りたい!」
そう思って下さった方、五月の夢を応援して頂けないでしょうか!?
日間ランキング入りしてみたいのです……
ぜひお力をお貸し下さいm(_ _)m
ランキングはptで決まります。
広告の下の☆☆☆☆☆の右端をタップ(クリック)して★★★★★に変えて頂けると泣いて喜びます!
★★★★★とブックマークが大変励みになります。
読者様に一切デメリットはございませんので、ぜひ!お願いいたしますm(_ _)m




