エスケープ
「窓開ければ、景色はもう私たちに景色として接してくれない。
実態として現れる。
その瞬間、それはもう実態を通り越して空間として私たちの空間を侵食していく。」
世良川ヨシナ(せらかわ よしな)は、そう言葉をいう。
「彼は空間の秩序を破ってしまったの。」
この世界はいつからこんな事になってしまったのだろうか。
芹川十也は、疑問に思った。
あるいは、自分の知っている世界と今の世界は別のものだと
勝手に妄想しているのではないだろうか。認識なんてそんなものなのだから。
「わからない、僕はもういやだ。人の内側にも外側にも世界があって。それだけじゃない、
その二つが混ざり合って、また新しい何かを作っていっている。」
世良川は、十也に歩み寄る。
「私たちは確かにこの広がりにいる。その存在の仕方が一次元であろうと、二次元であろうと、そして、生きるものである、少なくとも人類は絶対の安心を置く三次元であろうとも。
私たちは意識というテキストに存在しているだけなの。そしてそれは生命といわれ、そのテキストを保護するために生命は様々な方法で命の保存を行ってきた。
私たちは日常に生きて脳がそれに順応していると、どうしても意識に一定の基準を置いてしまいがちだけれど命という動的存在はそれ自体が、意識なのよ。」
「平戸、この世界の歪みは?」
を生命維持装置なしでは生きられない比山征吾が言う。
平戸は窓を見つめながら、
「歪んでいると言えばその通りになる。言葉は封じ込めのような存在だからね。
しかし、この状況本当に終わりといえるのか?
事象的認識で、今回の件に臨んではいけない。」
「俺はただもう一人の自分の存在を利用して、新たな段階に踏み込みたかっただけだった、、」
比山は落胆する。
「正規の方法ではないやり方、数字をねじ込むんだ。むしろ崩壊しないだけ良かったほうだ。」
平戸は唇をかむ。
「僕は、『もうなす術もないのですべて可能な人にお任せします』っていうのが本当に嫌いだ。しかしこうなってしまっては、一体どうやら。もう一度再構築されるのだろうか。」
比山は、ただ腕を見つめる。
ここで、比山征吾、御白玲奈、多田正弥の時間は止まる。




