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平戸

「自我というものが他者の存在によって存在しているというのならば、

我々はある意味、同じもの同士かもしれない。」

とある青年が征吾にそう言葉をかける。

「我々は所詮写し紙だ。その紙質の多少の違いが、生物種の違いであるというだけのことだ。」

青年と征吾はとある大学の講義室にいる。

青年は、大きな黒板の左右を行ったり来たりしている。

「心理はある一定の基準値まで達した、脳内の動的数値変動だ。」

征吾はただ黙って青年の話を一方的に聞く。

「お前は誰だ?」

征吾はこの場所にいる経緯を知らない。

気がつけばここにいたのだ。

「君は何を基準に認識している?今か?

確かに僕もそうした基準を持っていたことがあるよ。」

「ここは?」

「大切なことは今じゃない。

現象そのものと時間の一貫性だ。」

青年は征吾に何かを握らせ、

「それは何かだ。君からの動きで何でもなる。」

「お前にあったことが?」

「これまでも、これからも。

平戸才だ。また会おう。」

なつかしい感覚。自分の脳内実感を得る感覚。空想ばかりしていた頃の自分の精神状態のなつかしい感覚。

征吾は目を覚ました。




「なんだよ、これ。」

多田は嫌気がした。

彼の目の前には、モノがあった。

胴体がねじ切れていた、その死体。

おそらく男性。

彼の部下である小池が

「ガイシャは増幸丈一、34歳。交際相手の町田京子から事情聴取とってます。

つか多田さんよく吐きませんね。すげー。

俺は朝飯ぜんぶ出しましたよ。

異常ですよ。」

小池の言葉が耳に入らない。

多田は秋山の悲しそうな顔を不意に思い出した。




「どうも、平戸才です。」

征吾に話しかけた青年がそこにいた。

第二次世界大戦を回避した歴史を有した日本。

彼、平戸の生きる世界である。

日本は民主主義という体裁の軍事国家であった。

平戸の前には、様々なケーブルにつながれた青年がいた。

生命維持装置だろうか?

呼吸音が聞こえてくる。

「俺には会えたか?」

その青年は平戸に問いただす。

「ええ、征吾くんは健康体でしたよ。」

すると青年はホッとしたらしく、

「平戸、君には感謝している。きみのその特異点があるからこそ出来る技だ。ああ、君はどこから来たんだ?」

平戸は

ただ冷静に青年を見つめていた。

「こっちとあっちで異常数値がみられます。」平戸はそう言った。




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