↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
71/74

第70話「ある出来事」

放課後、僕は家で使うものを買うため、学校の近くにある店へ立ち寄った。


買い物を済ませると、そのまま家に向かって歩き始めた。


帰り道、横断歩道の前まで来ると、信号が青に変わるのを待つ人たちが立っていた。


その近くには、六、七歳くらいの男の子と、十六歳くらいに見える姉がいた。


男の子は小さなボールで遊んでいたが、不意に手からボールが滑り落ち、道路へ向かって転がっていった。


「あっ! 僕のボール!」


男の子は声を上げると、ボールを追いかけて走り出した。


「待って! 走っちゃダメ!」


姉が慌てて叫んだ。


しかし、男の子はすでに道路へ飛び出してしまっていた。


そのとき、こちらに向かってくる車が目に入った。運転手も男の子に気づいたようだったが、車との距離はあまりにも近かった。


僕はすぐに駆け出し、男の子のところまで走ると、その体をつかんで歩道へ引き戻した。


次の瞬間、車がすぐそばを通り過ぎていった。


その場に、しばらく静けさが広がった。


姉はすぐに弟のもとへ駆け寄り、ぎゅっと抱きしめた。


「大丈夫!? もう、こんなことしちゃダメだよ! 本当に心配したんだから!」


男の子は姉に抱きしめられたまま、怯えた様子で小さくうなずいた。


やがて、姉は僕のほうを向いた。


「本当にありがとうございます! あなたが助けてくれなかったら……」


「大丈夫だよ。二人とも、気をつけてね」


「ありがとうございます……本当に、ありがとうございました!」


僕は軽く微笑むと、道路に転がっていたボールを拾い、男の子に手渡した。


「はい。次からは気をつけるんだよ。ボールを追いかけて道路に飛び出しちゃダメだからね」


「うん……ありがとう、おじさん!」


その呼び方に少し驚いたが、僕は特に何も言わなかった。


姉はもう一度僕にお礼を言い、弟と一緒に帰っていった。


僕は二人の後ろ姿を見送ってから、再び家路についた。


歩道を歩きながら、僕はふと考えた。


人の一生は短く、予測できない出来事に満ちている。それでも、人は限られた時間の中で、数え切れないほどの感情を経験し、幸せを見つけ、大切なものを手にしていく。


もしかすると、そんな短い人生だからこそ、そこにはかけがえのない価値があるのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。