第68話「僕の部屋」
僕たちは部屋へと入った。
アイノは僕の後について部屋に入ると、興味深そうに辺りを見回した。
「へえ、レンの部屋ってこんな感じなんだ」
「うん。特に変わったところはないけど、ここが一番落ち着くんだ」
アイノはゆっくりと部屋の中を見て回った。
「けっこうきれいにしてるんだね。男の子の部屋って、もっと散らかってるものだと思ってた」
「僕って、そんなふうに思われてたの?」
僕が少し笑いながら尋ねると、アイノは小さく笑った。
「違うよ。ただ、そういう部屋が多いって聞くから」
僕はバッグを机のそばに置き、課題のプリントを取り出した。
「さて、そろそろ始めようか?」
「うん!」
アイノは僕の隣に座り、自分のプリントを机の上に置いた。
僕たちはもう一度課題の内容を確認してから、どのように作業を分担するか話し合った。
「この部分は私が担当してもいい?」
アイノは課題の一つを指さしながら言った。
「いいよ。じゃあ、残りは僕がやるね」
「よし! これなら早く終わりそうだね」
「そうだといいね」
そう答えると、アイノは笑顔で再びプリントに目を向けた。
最初は二人とも作業に集中していたが、しばらくすると、アイノがふと思い出したように尋ねてきた。
「ねえ、レンって友達を家に呼ぶことは多いの?」
「いや、あまりないかな。というか、家に招いたのはアイノが初めてだよ」
「えっ、本当に?」
アイノは少し驚いた様子で僕を見た。
「うん。友達を自分の部屋に招いたのも、アイノが初めてだよ」
アイノは一瞬黙り、それから少しだけ笑みを浮かべた。
「じゃあ、私って特別なんだ?」
「そういうことになるかな」
「それなら、レンの信頼に応えられるように頑張らないとね」
アイノは冗談っぽくそう言った。
「もう十分信頼してるよ」
僕は作業を続けながら、何気なく答えた。
アイノは一瞬動きを止めた。そして、少し驚いたような表情を見せたあと、さっきよりも嬉しそうに微笑んだ。
「ほら、そろそろ作業に戻ろう。こうしてると、夕方までに終わらなくなっちゃうよ」
「そうだった! 何をしに来たのか忘れるところだったよ」
僕たちは再び作業に取りかかった。
アイノは資料を丁寧に確認しながら、ときどき自分の考えを提案してくれた。その中にはなかなか面白いアイデアもあり、僕たちはすぐに作業の方向性を固めることができた。
思っていたよりも順調に進み、課題の大部分を終えることができた。残りの作業についても、次に何をすればいいのか、だいたい決めることができた。
「今日はこのくらいで十分かな」
アイノはプリントを置いて、満足そうに言った。
「そうだね。この調子なら、期限より早く終わりそうだ」
「それはいいね!」
アイノは荷物をまとめた。
「今日は招待してくれてありがとう。すごく楽しかったよ」
「どういたしまして。またいつでも来ていいよ」
「じゃあ、遠慮なくお邪魔しようかな」
アイノは笑顔でそう答えた。
僕はアイノを玄関まで見送った。
「それじゃあ、また明日ね、レン!」
「うん。また明日、アイノ。帰り道、気をつけてね」
「はーい!」
アイノは手を振ると、そのまま帰っていった。
彼女を見送ってドアを閉めたあと、僕は部屋に戻り、机の上に残された課題の資料に目を向けた。
アイノと一緒に作業するのは、思っていた以上に楽しいものだった。




