第63話:「京都旅行の二日目」
朝、俺たちは旅館で朝食を済ませ、次の見学先へ向かった。
バスに乗るまで、武雄はずっと眠そうだった。席に着くと、すぐに背もたれに寄りかかった。
「まだ寝たい……」
「帰ってから寝ろよ」と海斗が言った。
俺は二人の会話を聞きながら、窓の外を眺めていた。
朝の京都の街並みが、少しずつ後ろへ流れていく。道沿いには小さな店や住宅、古い建物が並んでいた。東京とは違う街の雰囲気が、なんとなく気に入っていた。こうして移動中に景色を眺めているだけでも、なかなか楽しいものだ。
やがて、バスは次の見学先に到着した。
クラスのみんなと一緒に降り、先生のそばに集まる。先生がこの場所について簡単に説明したあと、決められた範囲内で自由に見て回っていいと言った。
俺は顔を上げ、歴史を感じさせる建物を見上げた。
(きれいだな)
武雄は気になるものを見つけるたびに立ち止まり、写真を撮っていた。そのたびに、美子が先へ進むように声をかけている。愛乃も美子の隣を歩きながら、気になったものを撮影していた。海斗は俺と同じように、建物を眺めながら歩いていた。
「武雄、もう先に行くよ!」
「ちょっと待ってくれ!」
「さっきから何枚も撮ってるじゃない」
「でも、今のは思ったように撮れなかったんだよ!」
「何が違うの?」と美子が尋ねた。
「全然違う!」
少し離れたところにいた海斗は、呆れたように首を振った。
俺もスマホを取り出し、何枚か写真を撮ることにした。せっかく京都まで来たのだから、旅行の思い出くらい残しておくのも悪くない。
見学を終えると、俺たちは小さな店が並ぶ通りへ向かった。
店先にはお土産やお菓子、さまざまな小物が並んでいた。何人かのクラスメイトは、さっそく家族へのお土産を選び始めていた。
「レンは何か買うの?」と愛乃が尋ねた。
「まだ決めてないな」
「私もまだ決めてないんだ」
俺たちは、いくつかの店先をのんびりと見て回った。
しばらくすると、武雄がお土産屋の前で立ち止まり、キーホルダーを真剣に見比べ始めた。
「どっちがいいと思う?」
武雄は、ほとんど同じような二つのキーホルダーを俺たちに見せた。
美子はそれを見て言った。
「どっちも普通にいいと思うけど」
「そういうことを聞いてるんじゃない! どっちがいいかって聞いてるんだよ!」
「じゃあ、自分が気に入ったほうにすれば?」
「それが分からないから聞いてるんだろ!」
「もう、なんで私がこんなことで悩まされなきゃいけないの……」
美子はそう言って、武雄を放って店先の商品を見始めた。
俺はキーホルダーを見比べ、肩をすくめた。
「どっちでもいいんじゃないか? どっちも悪くないし」
「うーん……よし、こっちにする!」
ようやく決心した武雄は、レジへ向かった。
武雄が会計をしている間、俺は隣の棚に目を向けた。そこには、伝統的な建物をかたどった小さなキーホルダーが置かれていた。京都旅行の記念にちょうどよさそうだったので、俺もそれを買うことにした。
「もう決めたの?」と愛乃が尋ねた。
「ああ。特別なものじゃないけど、なんとなく気に入ったんだ」
「そっか。よかったね」
愛乃は微笑み、再び店先の商品に目を向けた。
買い物を終えた俺たちは、集合場所へ向かった。そこには、すでにお土産を買い終えたクラスメイトが何人か集まっていた。
武雄は買ったばかりのキーホルダーを手に持ち、ときどき眺めていた。
「一日中それを眺めてるつもりか?」と海斗が尋ねた。
「まさか。ただ、壊れてないか確認してるだけだよ」
「買ってからまだ五分も経ってないぞ」
「だから何だよ? 早めに確認しておいたほうがいいだろ!」
「好きにしろよ」
俺は思わず笑った。武雄は、本当に何でもないことから話題を見つけるのが得意らしい。
全員が集まると、先生は次の見学先へ向けて歩き始めた。
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昼頃、次の見学を終えた俺たちは昼食を取ることになった。
先生があらかじめ、クラス全員で食事をして、少し休憩できる場所を決めてくれていた。
俺たちは空いている席に座り、メニューを開いた。
「うわ、いろいろあるな……」
武雄はメニューをめくりながら、感心したように呟いた。
「朝ご飯を食べたばかりだろ」と海斗が言った。
「だから何だよ? もう昼だぞ」
「お前、いつも腹を空かせてるよな」
「成長期だからな!」
「便利な言い訳ね」と美子が言った。
俺は適当に昼食を選び、メニューを閉じた。近くに座っていた愛乃も、何を頼むか考えているようだった。
料理が運ばれてくると、次第に会話が少なくなった。何時間も歩き回ったあとだったこともあり、みんな食事に集中していた。
「やっと座って休める……」
武雄がほっとしたように息を吐いた。
「さっきから何度も立ち止まってたじゃない」と美子が言った。
「それとこれとは別だ!」
「何が違うの?」
「もういいから、ゆっくり食べさせてくれよ」
海斗は小さく笑い、俺はそのまま食事を続けた。
昼食を終えると、次の集合時間まで少し自由な時間があった。近くの店を見に行くクラスメイトもいれば、その場で休んでいる者もいた。
俺たちも集合場所から遠く離れないように、少しだけ周辺を歩くことにした。
通りは観光客で賑わっていた。小さな店の前には人が集まり、店内からは店員の声が聞こえてくる。
武雄と美子は途中で店先のショーウィンドウに足を止めた。海斗も二人のそばに残り、俺と愛乃は少しだけ遅れて歩いていた。
通り沿いの看板や建物を眺めながら歩く。東京の賑やかな繁華街とは違い、京都にはゆっくりと散策できる場所も多かった。
「レン、見て。あのお店、いろんなお菓子が売ってるよ」
愛乃が小さな店を指さした。
「ちょっと見ていくか?」
「うん、行こう」
俺たちは店先へ近づいた。そこには、さまざまな和菓子が並んでいた。初めて見るものもいくつかある。
少し迷ったあと、俺は小さな菓子の詰め合わせを選んだ。
「食べてみるの?」と愛乃が尋ねた。
「せっかく来たんだし、いいんじゃないか?」
「じゃあ、私も買おうかな」
俺たちはそれぞれお菓子を買い、みんなのところへ戻った。
「どこに行ってたんだ?」と武雄が尋ねた。
「ちょっと買い物をな」と俺は答えた。
「お菓子? それなら俺にも教えてくれればよかったのに!」
「さっきまで店の前にいたじゃない」と美子が言った。
「お前たちが買いに行くなんて知らなかったんだよ!」
「今戻ってきたところなんだから、自分で行けばいいでしょ」
武雄は店のほうを振り返り、少し迷ったあと、結局そちらへ向かっていった。
「本当に行っちゃったね」と愛乃が言った。
「食べたくなったなら、いいんじゃないか?」
俺たちは顔を見合わせて笑った。
やがて武雄もお菓子を買って戻ってきて、俺たちは集合場所へ向かった。
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次の見学の時間になると、先生がクラス全員を集め、人数を確認した。
俺たちは再び京都の街を見て回ることになった。まだ訪れる予定の場所がいくつか残っている。
友人たちの会話を聞きながら歩く。武雄は買ったお菓子について話し、美子がときどき口を挟む。海斗はいつもどおり、落ち着いた様子で二人のやり取りに付き合っていた。
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