第52話:「君と過ごす、いつもの一日」
朝から雨が降っていた。
レンが家を出ると、向かいの家の前にアイノが立っていた。
「おはよう」
「おはよう。今日は早いね」
「レンこそ、いつも時間ぴったりだね」
二人は傘を差し、一緒に学校へ向かった。雨粒が傘を叩く音を聞きながら、自然と今日の授業の話になった。
「今日は何事もなく終わるといいな」とアイノが言った。
「どうして?」
「たまには、何も気にせず普通に過ごしたいから」
レンは少し考えてから、うなずいた。
「それもそうだね」
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一時間目が始まる前、ミコは鞄の中を何度も探していた。やがて、困ったように顔を上げた。
「どうしよう……ノート、家に忘れてきちゃった」
「まあ、そういうこともあるよ」とタケオが言った。「紙に書けば何とかなるって」
「よかったら、俺のノートを見てもいいよ」とカイトも自分のノートを差し出した。「ただし、ちゃんと返してくれよ。俺まで忘れたら困るから」
ミコはほっとしたように笑った。
「ありがとう。授業中、どうしようかと思ったよ」
「気にしなくていいよ。ノートを一冊忘れたくらいで、一日が台無しになるわけじゃないから」とレンが言った。
「そうだよね。みんながいてくれてよかった!」
「明日からは、出かける前に一緒に確認しようか」とタケオが提案した。
「もう、そんな大げさなことしなくていいって!」
ミコが笑い、みんなもつられて笑った。
やがて先生が教室に入ってきて、授業が始まった。
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放課後、五人は校門の前に集まった。
「ごめんね。今日は家の手伝いがあるから、先に帰るね」とミコが言った。
「じゃあ、また明日」とタケオが答えた。
「家の手伝い、頑張って」とカイトも声をかけた。
「うん、ありがとう! また明日!」
ミコは手を振って帰っていった。
その後、タケオとカイトもそれぞれ帰り、最後にはレンとアイノだけが残った。
「今日は穏やかな一日だったね」とアイノが言った。
「そうだね」
「こういう日も、悪くないかも」
二人は並んで歩きながら、雨音に耳を傾けた。
アイノが学校であったことを話し、レンは相づちを打ちながら聞いていた。特別な話題はなかったけれど、沈黙が気まずくなることもなかった。
しばらくして、レンが口を開いた。
「そういえば、みんなと過ごす時間って、本当に楽しいよね」
アイノは彼の方を向いた。
「何も特別なことがなくても?」
「うん。わざわざどこかへ出かけたり、何かをしたりしなくてもいいんだ。大切な人たちと一緒にいるだけで、いつもの一日が少し楽しくなるから」
レンは少し間を置いてから、付け加えた。
「アイノといるときも、そう思うよ」
アイノの足がぴたりと止まりかけた。
「レン……そういうこと、そんなに普通の顔で言わないでよ」
「どうして? 思ったことを言っただけだけど」
「だから、そういうところだよ……」
アイノは赤くなった顔を隠すように、傘を少し傾けた。
レンは不思議そうに首をかしげたものの、それ以上は何も聞かなかった。
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二人が家に着く頃には、雨もほとんど止んでいた。
「じゃあ、また明日ね、レン」
アイノは自分の家の前で立ち止まった。
「うん。また明日」
アイノが家の中へ入るのを見届けてから、レンも向かいの自宅へと戻っていった。




