第47話:「昨日の痕跡」
雨上がりの朝は、静かだった。
東京の空にはまだ薄い雲が残っている。
道路には雨の跡が残り、時折、建物の屋根から雫が落ちていた。
レンは、いつもの道を歩いて学校へ向かっていた。
ふとした瞬間に、昨日の夜のことが頭をよぎる。
なぜだろう。
別に、何か特別なことがあったわけではない。
ただの雨。
ただの、いつもと変わらない夜だった。
レンは少しだけ眉を寄せた。
そして、その考えを頭の隅へ追いやる。
今日は普通の学校生活だ。
余計なことを考える必要はない。
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一時間目は、何事もなく終わった。
レンは席に座り、黒板を見ながらノートを取っていた。
窓の向こうでは、ときどき雲の隙間から日が差している。
いつもと変わらない。
そう思っていた。
三時間目。
教師がプロジェクターの電源を入れた。
画面が二度、三度と点滅する。
そして――消えた。
ほぼ同時に、教室の照明も落ちる。
一瞬、教室が暗闇に包まれた。
だが、それもほんの数秒だった。
すぐに照明が戻り、プロジェクターも何事もなかったかのように動き始める。
レンは顔を上げた。
……何かがおかしい。
そう感じた。
けれど、何がおかしいのかは分からない。
ただの停電。
それだけだろう。
レンは再び黒板へ視線を戻し、授業に意識を戻した。
それでも、さっき感じた妙な違和感だけは消えなかった。
まるで、どこかに小さな引っ掛かりが残っているようだった。
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放課後。
レンはしばらく教室に残っていた。
頭の中には、さっきの停電のことがまだ残っている。
別に珍しいことではない。
学校の設備に不具合が起きることくらい、どこにでもある。
それなのに、なぜか気になった。
レンは荷物をまとめ、教室を出た。
そのまま帰宅するつもりだったが、少しだけ寄り道をすることにした。
しばらく歩いたところで、昨日のことを思い出した場所へと足を向ける。
目的地に着くと、レンは立ち止まった。
周囲を見回す。
特に変わったところはない。
いつもと変わらない街並み。
レンはそのまま帰ろうとした。
そのときだった。
壁際に、何かが落ちているのが目に入った。
小さな金属製のものだった。
雨で汚れた地面に半分埋もれている。
レンはしゃがみ込み、それを拾い上げた。
古びたメダル。
表面にはいくつか傷がついている。
そして裏側には、小さな紋章のようなものが刻まれていた。
レンは、その紋章を見つめた。
そして――動きを止めた。
知っている。
この印を、レンは知っていた。
忘れたはずの過去が、一瞬だけ脳裏をよぎる。
レンはメダルを裏返し、もう一度その紋章を確認した。
……偶然なのか?
そうかもしれない。
だが、それにしては出来すぎている。
レンはメダルを握りしめた。
しばらく考えたあと、それをポケットへしまう。
今の段階で、結論を出す必要はない。
まずは、これがなぜここにあるのか。
それを確かめればいい。
レンはその場を離れ、家へ向かって歩き出した。
しかし、頭の中からメダルのことが離れない。
そして最後まで残ったのは、たった一つの疑問だった。
――このメダルを、誰がここに置いた?




