第38話「月曜日の朝」
週末はあっという間に過ぎ、月曜日の朝がやってきた。
俺はいつも通り少し早めに学校へ着き、教室に入ると自分の席に座った。
それから数分後。
教室のドアが開き、愛乃が入ってきた。
教室に足を踏み入れた愛乃は、すぐに俺の席へ目を向ける。
そして、俺と目が合った。
「……」
一瞬だけ固まったかと思うと、愛乃は慌てて目を逸らし、自分の席へ向かった。
「おはよう、愛乃」
「えっ! あ、お、おはよう、レン!」
びくっと肩を跳ねさせる愛乃。
まるで不意打ちでも食らったみたいな反応だった。
愛乃は慌ててバッグから教科書を取り出し始める。
そのとき――
ぽろっ。
筆箱が手から落ちた。
中に入っていた鉛筆やペンが、床の上を転がっていく。
「あ……」
俺もしゃがんで、一緒に拾う。
「はい」
拾い終えた筆箱を愛乃に渡す。
「今日、なんかぼーっとしてない?」
「そ、そう? ……ありがとう。ちょっと寝不足なだけだから!」
愛乃は慌てて筆箱を受け取ると、顔を赤くしながら教科書を開いた。
そして、そのまま顔を伏せる。
俺は何気なく教科書に目を向けた。
……上下逆じゃないか?
「愛乃」
「は、はいっ!」
「その教科書」
「え?」
俺が指差すと、愛乃は自分の教科書を見下ろした。
数秒の沈黙。
「あ……」
愛乃は慌てて教科書をひっくり返した。
「……間違えただけ」
「そう」
俺は肩をすくめた。
土曜日はもっと普通に話していた気がする。
日曜日に何かあったんだろうか。
そんなことを考えていると、海斗が俺たちの席までやってきた。
「おはよう、レン。愛乃もおはよう」
「おはよう、海斗」
「お、おはよう……」
愛乃は小さな声で返事をした。
海斗は愛乃を見て、それから机の上の教科書に目を向ける。
「朝から勉強してるの?」
「え?」
「もう教科書開いてるじゃん」
「あ……うん」
愛乃は一瞬固まった。
それから小さく息を吐いて、また教科書に目を落とした。
海斗はそれ以上何も言わず、近くの椅子に腰を下ろした。
その直後――
ガラッ!
教室のドアが勢いよく開いた。
「おーっす! みんな、おはよう!」
武雄が大きな声を上げながら教室に入ってくる。
そのまま俺の机までやってくると、勢いよく手を叩いた。
「海斗! 次は絶対お前に勝つからな!」
「急にどうしたんだよ」
「この日曜日、ずっとボウリングの投げ方を研究してたんだ!」
「ネットで?」
「そうだ!」
海斗が笑う。
「まあ、次はボールがガターに入らないようにな」
「あれはたまたまだ!」
武雄はすぐに俺のほうを向いた。
「レン! お前からも言ってやってくれ!」
「武雄が負けたのは事実だろ」
「お前まで言うのかよ!」
海斗が声を上げて笑う。
「ほら、これで証人もいる」
「くそっ、完全に包囲されてる!」
そんなところへ、美子が教室に入ってきた。
騒がしい俺たちを見て、それから愛乃へ視線を移す。
「おはよう」
「おはよう、美子」
「愛乃、なんか今日静かじゃない?」
「そ、そんなことないよ」
「ふーん……」
美子が少しだけ目を細める。
すると愛乃は、机の下で必死に手を振った。
「言わないで」
そう言っているみたいだった。
美子はそんな愛乃をしばらく見つめる。
そして――
「はいはい」
そう言って、にっこり笑った。




