第34話「五人」
翌日の昼休み。
俺は自分の席で弁当箱を開けていた。
そこへ、弁当を手にした武雄がやって来た。
「レン、ここいいか?」
「いちいち聞くのか?」
「もしかしたら、邪魔かなって」
「いいから、座って食べろよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
武雄は机の上に弁当を置き、俺の前の椅子に座った。
それから一分もしないうちに、愛乃がやって来た。
「私も一緒にいい?」
「ああ、もちろん」
武雄が答える。
その後ろから、美子もやって来た。
「ここ、まだ空いてる?」
「空いてるぞ」
俺が答えると、美子は椅子を引いて愛乃の隣に座った。
さらに数秒後、海斗もこちらへやって来た。
「お、みんなここにいたのか」
「お前も座れよ」
武雄が机の端にある空いたスペースを指差す。
海斗はそこに腰を下ろした。
俺はみんなの顔を見回した。
気づけば、また五人で集まっていた。
「そういえばさ」
ご飯を頬張りながら、武雄が口を開く。
「みんな、土曜日って何か予定ある?」
「俺は特にない」
「俺も暇だな」
海斗も答える。
愛乃は少し考え、予定を思い出すように首を傾げた。
「私も特に予定ないよ」
それを聞いた武雄は、すぐに笑顔になった。
「じゃあ、みんなでどっか遊びに行こうぜ!」
「どこに?」
海斗が聞く。
「それはこれから決める!」
「遊びに行こうって言い出したのに、まだ行き先も決めてないの?」
愛乃が呆れたように言う。
「いいじゃん。そんなの後で考えれば」
「だから、どこに行くか決めてから考えたほうがいいでしょ」
美子がクスクスと笑い、口元を手で隠した。
「確かに、愛乃の言う通りかも」
「ありがとう、美子! 味方がいてくれて助かった!」
武雄は少しの間、天井を見上げながら考え込んだ。
「じゃあ……ボウリングとかどうだ?」
「いいね。久しぶりにやりたい」
愛乃が賛成する。
「俺もいいぞ」
海斗も続けた。
みんなの視線が俺に集まる。
「俺も別にいい」
「よし! じゃあ決まりだな!」
武雄が嬉しそうに言う。
すると、美子がすぐに口を挟んだ。
「ちょっと待って。武雄って、自分はボウリング得意だって言ってなかった?」
「もちろん得意だよ」
「前にもそう言ってたよね」
武雄が不満そうに美子を見る。
「だって本当なんだから!」
「でも、この前は負けてたじゃん」
「たまたまだって! 一回だけだろ!」
愛乃が楽しそうに笑った。
「じゃあ、今度は負けないように頑張らないとね」
「見てろよ! 今度こそみんなに俺の実力を見せてやる!」
俺は自信満々な武雄の顔を見る。
「本当に上手いのか?」
「もちろん!」
「じゃあ、楽しみにしてる」
「おい、レンまで俺のこと疑ってるのか?」
「ただ気になっただけだ」
昼食を食べ終えながら、海斗がニヤリと笑う。
「まあ、頑張れよ、武雄。もしかしたらレンに一投目で負けるかもしれないぞ」
「お前ら、全員で俺をいじってないか?」
「別に」
美子が落ち着いた声で答える。
「ただ、武雄がどれくらい上手なのか見てみたいだけ」
武雄は一瞬黙り込み、何か言い返そうとしていた。
やがて、覚悟を決めたように頷く。
「……分かった。土曜日、みんなに俺の実力を証明してやる!」
その瞬間、授業開始のチャイムが鳴った。
「続きはまた後でな」
海斗が椅子から立ち上がる。
俺たちは急いで空になった弁当箱を片付け、それぞれの席へ戻った。
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放課後。
俺たちは再び、校門近くの昇降口に集まっていた。
「それで、何時に待ち合わせる?」
愛乃がバッグの肩紐を直しながら尋ねる。
「朝の十一時はどうだ?」
武雄が提案した。
美子が愛乃を見る。
「愛乃は大丈夫?」
「うん。私は大丈夫」
海斗も頷いた。
「俺もその時間なら大丈夫」
みんなが俺を見る。
「レンは?」
「十一時でいいよ」
「じゃあ、駅前に十一時集合な!」
武雄が言う。
「分かった」
愛乃が答える。
「そこからすぐボウリングに行く感じ?」
海斗が尋ねる。
「うん。駅の出口から少し歩いたところに、ちょうど遊べるところがあるよ」
美子が答えた。
「じゃあ、ちょうどいいな」
武雄が右手を高く上げる。
「絶対に遅れるなよ!」
「それ、武雄が一番気をつけないとね」
愛乃がすかさず突っ込む。
「俺は絶対に忘れないって!」
「どうだか」
武雄は不満そうに頬を膨らませた。
「なんで誰も俺を信用してくれないんだよ……」
美子が優しく笑う。
「だって武雄、たまに宿題まで忘れるじゃん」
「それとこれとは別だろ!」
海斗が声を上げて笑った。
俺も思わず少し笑ってしまう。
それを見た武雄が、ため息をついた。
「ほら、レンまで俺のこと笑ってるじゃん」
「自分で笑われるようなこと言っただろ」
「はいはい, もういいよ」
俺たちはそのまま学校を出た。
最初の交差点で、それぞれの帰り道が分かれ始める。
「じゃあ、また土曜日な!」
海斗が手を振る。
「また土曜日!」
愛乃が手を振る。
「またね」
美子も続けた。
「俺は十一時ちょうどに待ってるからな!」
武雄が大声で叫ぶ。
「遅刻したら許さないからね!」
愛乃が念を押す。
武雄はそう言いながら、先に足早にバス停のほうへ向かっていった。
美子と愛乃は一緒に横断歩道へ向かう。
海斗は俺の隣を歩きながら、少しだけ歩く速度を落とした。
「なんか、面白いよな」
「何が?」
「ついこの前まで、週末に何するかなんて全然決まってなかったんだぜ。家で暇してると思ってたのに」
「それが今は予定ができた」
「ああ」
海斗は素直に笑った。
「なんだかんだ、悪くないな」
「まあ、どうなるかは分からないけどな」




