第24話「買い物」
次の日。
俺は家を出て、アイノの家へ向かった。
家の前まで来ると、アイノは角のところで待っていた。
アイノは、白いブラウスに淡い色のスカートを合わせた、可愛らしい服装をしていた。
俺は白いパンツに青いシャツを着ている。
俺はアイノに近づいた。
「よっ」
「おはよう、レン」
「よく似合ってるな」
「ありがとう。レンも……」
アイノは少しだけ言葉に詰まった。
「行こっか?」
「ああ」
俺たちは駅へ向かって歩き始めた。
途中で、俺はふと気になって聞いた。
「そういえば、ショッピングモールで何するんだ?」
「服を買いたいの」
「なるほど」
少し考えてから、俺はもう一つ聞いた。
「でも、なんで俺と?」
アイノはすぐには答えなかった。
数秒間、黙ったまま歩いている。
「その……レンと一緒のほうが楽しそうだから」
「そうか」
俺はそれ以上、何も言わなかった。
ちょうどそのとき、駅が見えてきた。
「あ、電車来てる!」
アイノが少し急ぎ足になる。
「早く行こう!」
「分かった」
俺たちは駅に入り、電車に乗り込んだ。
車内にはかなりの人がいた。
立っている場所さえ、ほとんど残っていない。
俺たちは仕方なく、隣同士で立つことになった。
アイノは少し恥ずかしそうにしている。
俺も、なんとなく落ち着かなかった。
そのとき、電車が急に揺れた。
「わっ……」
アイノがバランスを崩し、俺のほうへ一歩よろける。
「ごめん……」
「気にするな」
俺も少し離れようとしたが、周りには人が多すぎて動けなかった。
しばらくして、アイノがドアの上にある表示を見た。
「次、私たちの駅だよ」
「もうか?」
「うん。降りよう」
電車が駅に到着し、俺たちは車内から出た。
駅を出ると、ショッピングモールまでは少し歩かなければならなかった。
俺はアイノの隣を歩きながら、何となく考え事をしていた。
何を考えていたのか、自分でもよく分からない。
「レン」
「ん?」
「着いたよ。早く行こう」
「ああ」
俺たちはショッピングモールの中へ入った。
しばらく歩いて、服屋を見つける。
アイノはすぐに店内の服を見始めた。
俺はその隣を歩きながら、アイノが何を選んでいるのか眺めていた。
正直、俺は服のことが全然分からない。
それが一番の問題だった。
アイノは何分か店内を見て回っていた。
そして、ある服の前で足を止めた。
淡い水色のワンピースだった。
膝くらいまでの丈で、袖には白い小さな飾りがついている。
腰には細いベルトがついていて、シンプルだけど綺麗なデザインだった。
「これ、どうかな?」
「綺麗だな」
「じゃあ、ちょっと着てみる」
アイノはそのまま試着室へ向かった。
俺は近くの椅子に座って待つことにした。
しばらくすると、試着室のカーテンが少し開いた。
アイノがそこから顔を出す。
「えっと……どう?」
俺はアイノを見る。
その服は、本当によく似合っていた。
「綺麗だ。すごく似合ってる」
アイノは少し嬉しそうに笑った。
「じゃあ、これにする」
「ああ」
しばらくして、俺たちは店を出た。
アイノの手には、新しく買った服の入った袋がある。
「やっと買えた」
「ずっと欲しかったのか?」
「うん。こういうの、ずっと欲しかったんだ」
「じゃあ、来てよかったな」
「うん」
俺たちはそのままショッピングモールの中を歩いた。
しばらくすると、アイノがカフェの前で足を止めた。
「ねえ、ここ入らない?」
俺は店を見る。
「腹減ったのか?」
「ちょっとだけ」
「じゃあ、入るか」
俺たちは店の中に入り、空いている席を見つけた。
アイノは甘いものを注文し、俺は飲み物を頼んだ。
注文したものを待っている間、アイノが俺を見る。
「レンってさ、友達とショッピングモールに来たことある?」
俺は少し考えた。
「……あんまりないな」
「本当?」
「ああ」
アイノが笑う。
「じゃあ、今日はレンにとって新しいことばっかりだね」
「そうかもな」
しばらくして、注文したものが運ばれてきた。
俺たちはそれを食べながら、また色々な話をした。
それから店を出る。
外に出ると、少し涼しくなっていた。
アイノが手に持った袋を見る。
「今日は付き合ってくれてありがとう」
「気にするな」
アイノが笑う。
「じゃあ、駅に戻ろっか?」
「ああ」
俺たちは駅へ向かった。
駅に着くと、電車に乗り込む。
帰りの電車の中でも、俺たちは今日のことを話しながら過ごした。
「今日は本当に楽しかったな」
俺がそう言うと、アイノが頷いた。
「うん」
俺は少し考える。
……アイノって、こんなに優しくて明るいやつだったんだな。
そんなことを考えていると、アイノの声が聞こえた。
「あ、次だよ」
「ん?」
「私たちの駅。レン、行こう」
「ああ」
俺たちは電車を降り、そこから家へ向かって歩いた。
帰り道も、俺たちは今日のことを話していた。
そんなふうに話しながら歩いているうちに、アイノの家に着いた。
俺は足を止める。
「やっぱり、今日は本当に楽しかったな」
「うん。私も」
アイノが頷いた。
「じゃあ、またな」
「うん。またね」
俺が帰ろうとすると、アイノが後ろから声をかけてきた。
「それと……」
俺は振り返る。
「ん?」
アイノは少しだけ黙ってから、口を開いた。
「ありがとう」
「気にするな。俺も一緒にいて楽しかったし」
アイノが微笑む。
「おやすみ」
「ああ。おやすみ」




