第12話「休日」
休日。
レンはいつもより少し遅く目を覚ました。
今日は急ぐ必要もない。ゆっくり朝食を済ませると、そのまま自分の部屋へ戻った。
しばらくすると、廊下から母さんの声が聞こえてきた。
「レン、もう起きてる?」
「うん、母さん」
「レン、準備して。今日は家族みんなで買い物に行くから」
「分かった、母さん」
レンはすぐに着替えると、階下へ降りた。
父さんはすでに車のそばに立っていて、母さんは買い物リストを確認していた。
「忘れ物はないか?」
「うん。たぶん大丈夫」
レンは車のところまで歩いていく。
「荷物、俺も持つよ」
「ありがとう。じゃあ、乗りましょうか」
三人は車に乗り込み、そのまま街へ向かった。
レンは後部座席から窓の外を眺めていた。
通りにはたくさんの人がいて、車の数も多い。店の前には、すでに買い物客が集まり始めていた。
しばらくして、大きなショッピングモールに到着した。
最初に向かったのは、食料品売り場だった。
母さんはカートを押しながら、買い物リストを取り出す。
「えっと……野菜に、お肉、牛乳、卵……」
「野菜は俺が持つよ」
「お願い。じゃあ、これも入れてくれる?」
「分かった」
レンは言われた商品をいくつか手に取り、カートへ入れていく。
その一方で、父さんは飲み物の棚の前で立ち止まっていた。
「あと、お茶も必要だな」
母さんが父さんのところへ行く。
「どのお茶?」
「普通のでいい」
「普通って言われても、ここに何種類あると思ってるの?」
父さんは棚を見渡した。
「じゃあ、母さんに任せる」
「最初からそう言ってよ」
レンは思わず小さく笑った。
母さんがこちらを見る。
「レン、何がおかしいの?」
「いや、別に」
「まあいいけど」
そう言って、母さんも少し笑った。
そのまま三人で店内を回っていく。
母さんはリストを確認し、父さんは必要なものを探し、レンは二人の手伝いをしながら商品をカートへ入れていった。
食料品を買い終えると、今度は別の店へ向かった。
その途中、母さんが服売り場の前で足を止めた。
「レン、何か欲しいものはない?」
「特にはないかな」
「一応見てみたら? 気に入るものがあるかもしれないし」
レンは並んでいる服を眺める。
そして数分後、シンプルな色のパーカーを見つけた。
「これならいいかも」
母さんがパーカーを見る。
「いいじゃない。試着してみたら?」
レンは試着してみる。
「どう?」
「うん。似合ってる」
「じゃあ、これにする」
「そうしましょう」
その後も、三人でいくつかの店を見て回った。
気がつけば、かなり時間が経っていた。
買い物を一通り終えたところで、父さんが時計を見る。
「もう昼か。何か食べていくか?」
「うん、そうしよう」
三人は近くにあった小さなカフェに入った。
レンは両親の隣に座り、メニューを開く。
「レンは何にする?」
母さんに聞かれ、レンは一つの料理を指差した。
「これにする」
「いいんじゃない?」
「うん」
注文した料理が運ばれてくると、三人でゆっくり昼食をとった。
父さんは仕事の話をし、母さんが時々それを訂正する。
レンは二人の話を聞きながら、時々会話に加わった。
「そういえば、学校はどうだ?」
父さんが尋ねてくる。
「普通だよ」
「勉強は大変じゃないか?」
「大丈夫」
「友達とはうまくやってるか?」
「うん。友達もいるよ」
「そうか。それならよかった」
その後も、話題は自然と別のことへ移っていった。
昼食を終えたあと、三人はもう少しショッピングモールを歩き、それから家へ帰ることにした。
買い物をしすぎたせいか、荷物は思っていた以上に多くなっていた。
家に着くと、父さんがトランクを開ける。
「レン、この袋を持ってくれ」
「分かった」
「一度に持ちすぎるなよ」
「これくらいなら大丈夫」
レンは袋をいくつかまとめて持ち上げる。
「じゃあ、俺は残りを持つか」
父さんも荷物を持ち、三人で家の中へ運んでいった。
数分後、すべての買い物を家の中へ運び終える。
母さんはさっそく食材をそれぞれの場所へ片付け始めた。
「レン、牛乳を冷蔵庫に入れてくれる?」
「うん」
レンは牛乳を冷蔵庫へ入れ、そのまま他の食材も片付けるのを手伝った。
買ったものをすべて片付け終えると、母さんは夕食の準備を始めた。
レンはしばらくその様子を眺めていた。
すると、母さんがこちらを振り返る。
「レン、手伝ってくれる?」
「うん」
「じゃあ、野菜を洗ってくれる?」
「分かった」
レンは母さんの隣に立ち、野菜を洗い始める。
「次はこれを切ってくれる?」
「これでいい?」
「もう少し細かくね」
「分かった」
レンは言われた通りに野菜を切っていく。
母さんも隣で別の料理を作っていた。
しばらくすると、父さんがキッチンへ顔を出した。
「もうすぐできそうか?」
「うん。もう少しよ」
母さんはそう答えると、父さんを見る。
「手伝ってくれるなら、テーブルをお願い」
「分かった」
父さんは食器を取り出し、テーブルへ並べ始めた。
レンも野菜を切り終えると、父さんの手伝いをする。
やがて、夕食が完成した。
三人で食卓を囲む。
父さんが最初に料理を口にすると、満足そうに頷いた。
「うまいな」
「当然でしょ」
母さんが少し得意そうに答える。
「はいはい。疑ってないって」
レンは思わず笑った。
「何がおかしいんだ?」
「別に」
母さんも笑っている。
そのまま三人で食事を続けた。
今日買ったものの話をしたり、学校の話をしたり。
特別なことは何もない。
それでも、穏やかな時間がゆっくりと流れていった。
夕食を終えると、レンは食器を片付けるのを手伝った。
「レン、もういいわ。あとは私がやるから」
「大丈夫。俺が洗うよ」
「そう? じゃあお願い」
二人で片付けを終える。
その後、レンは自分の部屋へ戻った。
ベッドに横になり、壁に掛かった時計を見る。
今日は静かな一日だった。
家族と出かけて、買い物をして、昼食を食べて、夕食まで一緒に作った。
特別なことなんて何もない。
それでも――。
レンは満足していた。
目を閉じる。
今日という休日が、静かに終わっていった。




